「穀雨」
二十四節気とガラスをかさねて文章を紡いでゆくという試みを始めて、あっという間に今回が3回目になりました。
今日、4月19日は「穀雨」
この時期の雨は「百穀春雨(ひゃくこくはるさめ)」と呼ばれていて、百種の穀物を育てる恵みの雨が、優しく降り注いでいるとき。
「穀雨」という言葉はそこからきていて、農耕に関わる人々の種まきの目安として考えられて来たそうです。
家の中で過ごす日々の中、今年はいつもとは違った季節の感じかたをしている人が多いのだろうなぁ、と思います。来年の穀雨には、今をどんな風に思い出すんだろう。
そんなことを考えていたら、2017年の「雨」をテーマにした個展のことを思い出したので、その時のことをちょっと書いてみようと思います。
* * *
「雨」にまつわる言葉が、日本語にはたくさんある。
白雨、催花雨、春霖、甘雨、瑞雨・・・・・
書ききれないほどたくさんの美しい言葉たちを知っていくうちに、いつか雨をテーマに個展をしたいなぁと思っていた。
そんなときに岡山県のギャラリーから、6月の個展のお話を頂いた。6月なら季節がぴったりだな、とワクワクしながら雨をテーマに作品を作り始めた。
個展の時には、いつもタイトルを考えるのが楽しみの一つで、その時も雨にまつわる何か素敵なタイトルがないかな、と考えていた。
小雨の降るあかるい午後の日、家のリビングで個展のタイトルや構成を考えていた。
庭のツツジが満開で、雨に濡れる様子をぼんやり眺めながら、ふと和歌から何か良いヒントがあるのではないか、と思った。
たくさんある和歌の中から目に止まったのが、この一句だった。
「我が宿に 雨つつみせよ さみだれの
ふりにしことも 語りつくさむ」
これは江戸時代後期の歌人、橘 千蔭(たちばなのちかげ)の句で「家で雨宿りしていかれませんか。五月の雨が降る中、昔のことを語りつくしましょう」という意味。
この中の「雨つつみ」という言葉が、好きだなと思った。
優しい雨音に包まれているような、静かで仄かに明るい言葉。この空気を作品で表現したい。
こうして個展のタイトルが「あめつつみ」に決まった。
その時の個展のDM。
ギャラリーには雨の波紋のような、透明なうつわをたくさん並べて展示をした。
2017年の個展だから、もう3年前になる。今だったらまた全然違う展示の仕方をするだろうし、作風もかなり変わった。
季節と一緒で、個展も一度きりの生ものだと思う。
だからこそ毎回後悔のないように全部を出しきりたいし、大切にしたいし、楽しみたい。もうすぐ次の個展の構成を、本格的に考え始める時期。植物のように自分のアイデアを大切に育てていきたいな、と振り返ってみて思いました。
記事を読んでいただいてありがとうございます。いただいたサポートは、次のだれかの元へ、気持ちよく循環させていけたらと思っています。