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直感に従ってみたら ネパール旅行記 vol.7

ネパール滞在中に毎日書いていたこの日記も、今回が最後です。vol.6と7は、帰国してから写真を選んだり文章を直したりして、ちょっと時間が経ってしまったけれど、やっぱりリアルタイムで書き残しておいて良かったと思いました。

それでは、最終話です。どうぞ!

2023年8月8日

帰国の日。

22:30のフライト予定だから、丸1日時間がある。
本当にあっという間だった。さすがに疲れが出て、ベッドからなかなか起き上がれない。

窓の外は、今日も真っ白な霧だった。気持ちがいいからまずはテラスで瞑想をすることにする。昨日お迎えした、ターコイズで飾られた小さなブッダをテラスの手すりの上に置いて、瞑想のモードに集中していく。

瞑想は去年から時々やっていた。毎日集中してやる時もあれば、全然気が向かない時期もあった。でも今回の滞在で、瞑想は毎日の習慣にしようと改めて思った。サンタさんが教えてくれたブッダの教えや、今回訪れた場所の記憶がしっかり身体に染み込んで、瞑想に入りやすくなった気がする。

まずは呼吸に集中して「今、ここ」に、フォーカスしていく。何度も何度も浮かんでは消えてくる、様々な記憶や思いを追わないようにして、「今」にすぐ戻ってくる。そして集中して感覚を研ぎ澄ませていく。朝の瞑想は10分くらいしかやらないけれど、それだけでも漠然とした不安感や焦りから遠ざかってゆく感覚がある。

瞑想を終え、身支度を整えて部屋を出る。水色の廊下を歩いてロビーに向かう時、またここに戻って来れるといいな、と思った。ホテルの人にタクシーをお願いして、ロビーで少し待つ。スタッフさんがとても親切で、素敵なホテルだった。

Hotel Country Villa

とりあえず、もう1度バクタプールまで行くことに。タクシーに乗ると、運転手さんに「ナガルコットはどうだった?」と聞かれる。「とても素敵でした、残念ながらヒマラヤは見えませんでしたけれど」と言うと「もしかして展望台とか、滝も観に行ってないの?」と言う。ここまで来たのに?なぜ??というのが伝わってくる。

「昨日はバクタプールを1日観光していたし、大雨でとてもこの山道を歩くことは出来なくて…」というと、「OK!時間があるなら、展望台にちょっと寄っていこう!せっかくここまで来たのに勿体無いよ!」と言ってくれた。わ〜ありがたい!喜んでお願いする。この辺りを散策したいとは思いつつも、車じゃないと、とてもじゃないけど周れない険しい道だった。車に乗っていると、何頭も水牛やヤギとすれ違う。看板を見ると、どうやらこの辺りは牧場が多いらしい。

そして展望台は、もちろん霧で何も見えなかった(笑)。でも、展望台の手前にある、ローカルの商店に寄ってもらうことが出来た。街でときどき見かけた、バーベキュースタイルの串焼きが売っている。水牛とトマトを焼いているという。店先にはサモサや丸い輪っかのパン、卵なんかが置いてある。「ちょっと休憩しましょう」と言って、とりあえずチャイとサモサ、そして焼いたトマトを注文してみる。

タクシーの運転手さんはスラジさんといって、なんと左腕に「すらじ」とひらがなでタトゥーが入っていた。友達にやって貰ったそう。

「ここのチャイは、近くの牧場のフレッシュなミルクだから美味しいよ。水牛のミルクはプロテインが多いから健康にいいし」

チャイを待つ間、スラジさんが娘さんの写真を見せてくれた。マリーゴールドの花輪をつけてにっこりと笑っている。めちゃくちゃかわいい。ヒンドゥー教徒は5、6ヶ月で右耳にピアスをするんだそう。どうか幸せな人生を、と心から思う。

チャイが運ばれてきた。これが水牛のチャイ!と感動。濃厚で味わい深い。こういうローカルの暮らしを感じられる時が、1番楽しい!

次にナガルコットの人が集まるというお寺へ連れて行ってもらう。遠くに街が見渡せる、景色の良い場所。近くに住んでいる人は毎朝ここでヨガをしているらしい。「スラジさんはヒンドゥー教徒ですよね?」と聞くと「ネパールではヒンドゥー教と仏教はjoinしている。なぜならブッダはヒンドゥー教から生まれたから、みんな一緒なんだよ」と。

そういうことだったのか。境目が無い感じがしていたけど、完全に共存しているんだ。ピースフルな考え方でいいなと思う。

そして次は立派な吊り橋のある場所へ。「空気もいいし、天国でしょ?」という。確かに本当に空気が違う。スラジさんの話を聞いていると、自分の住んでいるこの場所、そして国が本当に好きなんだなと伝わってきて、こちらも嬉しくなる。

ピンク色の見たことの無い花が咲いている。ネパール語で「ウラル」というらしい。ヒマラヤのほうでは、今はブルーポピーが見える季節。高山植物好きとしては、やっぱりいつかヒマラヤの麓まで行ってみたいな。

バクタプールへ向かう車内で「Changunarayan Temple(チャングナラヤン寺院)は行った?バクタプールは昨日行ったんでしょ?行ってないなら、今日はそっちにしたら?」と、ありがたい提案をしてくれる。ぜひ!とお願いする。

Changunarayan Temple(チャングナラヤン寺院)
は、見晴らしの良い山の上にあるお寺だった。田んぼで農作業をする人たちを横目に眺めながら、車はどんどん上に登っていく。スラジさんはすごく気が効く人で、景色の良いところでは「ここで写真を撮ったらいいよ」と言って、わざわざ車を停めてくれたりする。優しい。

チャングナラヤンは極彩色の寺院で、参拝する人たちもとっても華やかだった。そしてここも世界遺産!勉強不足でした。来れて良かった〜。入り口ですれ違った、杖をついた3人のお年寄りがものすごくカッコよくて、しばし見惚れる。

犬たちも一緒に記念撮影!
とことんカラフル。色にそれぞれ意味がある

そろそろランチにしよう!とお店にはいる。ルーフトップまで登って、スラジさんに適当に注文してもらう。

食事をしながら、何だか不思議な気分だった。数時間前まで、まったく想像もしていなかった展開。初めて会った人と一緒に観光地を周ることになるとは。目の前に広がる長閑な景色を見ながら、もうすぐ帰国だなんて信じられないな、と思った。

「バクタプールまで行って、そのまま空港に行ってたら、今日の経験は全部無かったんだよ。こっちに来て良かったでしょ?」と、スラジさんがニコニコしながら言う。本当にそう。すごくすごく感謝しています!ありがとう!

ネパール最後のごはん

チャングナラヤン寺院を後にして、そのまま空港まで送ってもらう。車窓から空港が見えてきた。着いた時はなんにも知らなかったこの世界。本当に来て良かった。

軽く抱擁をして、「バイバイ、ナマステ」と言って別れる。スラジさん、今日という一日を本当にありがとう!

昨日まで会ったことも無かった人と、一緒に観光をしてご飯を食べて、相手の幸せを願って別れる。今まで何度も体験してきた一期一会。こういう時、世界は優しいと心から思える。

トリブバン国際空港は、とっても小さな空港だった。額にティカを付けた人が大勢いる。米粒がしっかりとついた真っ赤なティカは、生々しくて少し驚く。旅立ちの前に付けてもらったのだろう。

ほとんど何の知識もなくネパール行きを決めたから、ヒンドゥー教やチベット仏教を始め、人々の習慣に驚いたり感心したり、本当に楽しかった。私はティカを付けている人もほとんど見たことが無かったし、ネパールでは「Yes」の時に首をかしげることとか、知らなかったことを知るという、単純な喜びがたくさんあった。

世界には私が知らない文化が、生活が、気が遠くなるほど広がっているということを思い出させてくれた。私はこの感覚を味わうために外国を旅するのかもしれない。

帰りの飛行機の窓からは、たくさんの流れ星が見えた。そういえば満月の日に旅立って、一度も月も星も見ることは無かったけれど、たくさんの光を見たと思う。首筋を撫でられた野良犬の嬉しそうな顔や、道に迷った私を助けてくれた女の子の、シャイな笑顔。信じられないくらい鮮やかなマリーゴールドの束。バイクに乗せてくれた男性の、真っ黒な瞳。

突然あらわれた直感に従ってここまで来たけれど、本当に良かった。

人も動物も植物も、みんな一緒に生きているという感覚。私はこの感覚を持って、この先も生きていきたいと思った。

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