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アムネスティー・インターナショナルは、なぜウクライナ調査に関する私の警告を無視したのか?

Byline Times 8/8/22の記事の翻訳です。

トム・マッチは、アムネスティーの職員と共に最前線に立ち、最近批判を浴びた報告書の目立った見落としと誤りを明らかにした。

ロシア政府関係者は既に、ウクライナ軍の都市防衛を批判した最近のアムネスティー・インターナショナルを利用して、自分達の残虐行為を正当化しようとしている。アムネスティー・インターナショナルのスタッフは、このような事態が起こりうることを警告されていなかったとは言えない。私はちょうど3カ月前、これが危険なことだと伝えようとした。

今年5月、私はアムネスティー・インターナショナルのシニア危機管理研究員ドナテラ・ロヴェラとテーブルを囲み、彼らの次の報告書が大失敗に終わると予言した。私達はウクライナの支配下にあるドネツクの行政首都、クラマツルクにあるホテルのキッチンにいて、窓の外では1時間ごとに砲撃音が聞こえてきた。

アムネスティーのスタッフは、ロシアの執拗な砲撃にショックを受けるよりも、ウクライナ軍の部隊が大学の建物の地下に避難していることの方がよほど気になるようだった。

「政府は全て嘘をつく。記者や研究者の仕事は、厳しく公平に、事実だけを報道することよ。」        

ドナテラ・ロヴェラ

前線の町バクムートにある廃校になった語学学校が、ウクライナ人部隊の仮の兵舎になっていたのだ。これは戦争犯罪ではない。もちろん、その建物はもはや民間人の保護を主張することはできないし、道の向こうには主に放棄された民間人の集合住宅があり、そこは完全には避難していなかったが、軍隊には避難した教育施設に設置する権利が完全にある。

しかし、ロヴェラは、人口密集地での軍の存在は「国際人道法違反」であると主張した。私が「ウクライナ軍は人口密集地をどう守るのか」と詰め寄ると、彼女は「関係ない」と言い放った。

その理屈だと、ウクライナはハリキウ市などの主要な場所を放棄しなければならないことになる、と私は続けた。「そうね、人口密集地に陣取ることは可能な限り避けなければならないわ。」「国際人道法は、これに関して非常に明確なのよ。」と彼女は答えた。

私は、今度のアムネスティー・インターナショナルの報告書が、都市部での防御的作戦と攻撃的作戦を区別していなければ、悪い評価を受けるだろうと提案した。しかし、報告書作成者の心はこの様に決まっていたようだ:ウクライナは、都市を守ろうとする行為だけで、自国の市民を危険にさらしているのだ。

“無意味で軽薄でつまらないもの“

私が個人的に目撃した報告書のもう一つの見落としがある。民間人の避難に関して、アムネスティー・インターナショナルは「住宅地の民間建造物に身を置いたウクライナ軍が、民間人に近くの建物から避難するよう求めたり、支援したりしたことは知らない」と主張している。

実際、ウクライナ当局と軍は頻繁に民間人に戦闘地域から離れるよう主張し、希望者には避難支援を提供していた。

私はアムネスティーの報告書で言及された場所のひとつ、戦火の絶えない都市リシチャンスクの学校区で、ウクライナ兵と共に、避難を希望する民間人住民に避難車を提供した。3人が希望し、私達は彼ら共もに安全な場所に戻った。このことは、当時、全て報告していた。

ウクライナ軍と共にリシチャンスクから避難したヴァレリヤと祖母のカチャ。 写真:トム・マッチ(著者)

英国王立サービス研究所の陸戦担当上級研究員、ジャック・ワトリングも、この報告書は「武力紛争法に対する理解の甘さを示している」と指摘した。

「軍事的必要性と比例性のバランスをとる必要がある。民間人を保護するために合理的な措置をとる必要があるが、それは地域を防衛するという命令とのバランスをとる必要がある」と彼はByline Timesに語っている。「敵がある都市部を攻撃しているのであれば、そこを占領する必要がある。歴史上、民間人が戦闘地域から完全に排除された戦争はない。」

ワトリングはまた、ウクライナ軍は近くの野原や森に移転すべきだという報告書の提案について、「軍事作戦に対する理解の欠如を示し、研究の信頼性を損ねる 」と指摘した。これらの提言は、"無意味で、軽薄で、つまらないものだ "と彼は言っている。

モブとトロール

アムネスティー・インターナショナルの報告書に対する多くの批判に対して、同組織の事務局長であるアグネス・キャラマールは次のようにツイートしている。「ウクライナとロシアのソーシャルメディアのモブ(暴徒)とトロール(プロパガンダ専門のSNS荒らし)は:彼らは今日も@amnestyの調査を攻撃している。」

この「暴徒と荒らし」には、アムネスティーのウクライナ支部長も含まれているようで、報告書の発行後に抗議して辞任し、報告書について現地スタッフはほとんど意見を述べておらず、重要な事実や背景が省略されていると述べている。

ドナテラ・ロヴェラは、CBSのドキュメンタリー番組にも専門家証人として出演し、その広報では当初、西側から供給された武器のうち前線に届いたのは30%に過ぎないと主張した。:この数字は全く検証不可能で、ドキュメンタリー番組自体、非殺傷兵器援助に関するブルー・イエローという組織からのものだったが、その組織はそれ以来、誤って伝えられたものだとしてきた。

ロヴェラはCBSに「これらの兵器がどこに行ったか知る由もない」と語った。ロシアのミサイルによる阻止のリスクを考えると、ウクライナに供給された武器の所在は、世界で最も厳しく守られている軍事機密の一つであり、アムネスティーの研究者と共有されることはまずないだろう。

CBSはその後、問題のセグメントを撤回し、後日より最新の情報を加えてドキュメンタリーを再公開すると述べた。

トム・マッチの記事へのリンク『自分の悲しみの繭に閉じこもる - プーチンの「解放」の約束はドンバスに恐怖をもたらす』

ロヴェラは5月、私が席を立った時、こう言った。「20年以上この仕事をしてきて、紛争を取材する上で最も大切なことを学んだわ。」「全ての政府は嘘をつく。記者や研究者の仕事は、公平な立場で、事実だけを報道することよ。」

しかし、アムネスティー・インターナショナルが客観的であろうとするあまり、侵略者と侵略された者、侵略者と被害者を同列に扱うような誤った等価性を生み出してしまったと私は考えている。今後、ロシア兵がウクライナの市民を無差別に攻撃する時は、アムネスティー・インターナショナルのお墨付きをもらって、自分達の行動を擁護することになるだろう。

トム・マッチは、この問題についてドナテラ・ロヴェラとアグネス・キャラマールに問い合わせたが、回答は得られなかった。Byline Timesはアムネスティー・インターナショナルにコメントを求めており、回答があればこの記事を更新する予定である。

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