in the end and end and the end
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in the end and end and the end

おれはタバコを取り出すと、精一杯皮肉げに微笑んで見せた。

終わりだ。何もかもが。
果たして何度目かになるそんな泣き言を聞きながら、おれはこぼれ落ちた左眼を再び眼窩に収める。
ひしゃげた人攫いトラックの乗り合い客はおれと、おれの頭の中にだけいるムカつく友人─哀れなトレヴァー、愛すべき二枚舌のクソったれ─を除き全滅してしまったようだ。

おれは真横で顔から折れた手摺りを生やして眠る哀れな男の腰に提げられた立派な拳銃を拝借すると、繋がれた手首から先を吹き飛ばして、なんとか車の外に這い出る。

世界の終わりが訪れたのは、どう言う理屈だったか。
狂ったコンピューターが人類を滅ぼすことにした、というやつもいれば、宇宙の中心で眠っていた狂える神が目を覚ましたというやつもいるし、どこかの企業かどこかの政府が知らんが、馬鹿な奴らが作った殺人ウイルスが流出したせいでこうなった、という奴もいる。

確かなことは、とうの昔にテレビもラジオも押し黙り、隣近所の連中は軒並み狂い、まともなやつから死んでいったと言うことだけ。
おれは死なず、すぐ隣では2ヶ月前に死んだはずのトレヴァーがウンザリするような泣き言を繰り返している、と言うことだけだ。

ペンキをひっくり返したような赤レンガ通りが見える。
ここから見えるものが全部、人間の身体から流れ出たものだなんて。信じられるか?
おれは車内にあった使えそうなものを詰め込んだバックパック─いずれも車の中の連中はもう二度と必要とはしないだろう─を片手に、口笛を友に赤錆びた死の荒野を進む。

暫く歩いていると、またもお決まりの奴らがやってくる。
おれ以外の生存者。おれ以外のまともでない奴らが。
今度の奴らと来たら見境なしで、挨拶がわりにいきなりぶっ放してくるものだから、おれは赤レンガ通りに新鮮な塗料を提供する羽目になった。
身体が平衡感覚を失い、コンクリートが肉を打ち付ける。
ついでに、またも左眼が少し先までふっ飛んで行くのが、残った視界からよく見えた。畜生め。

頭に来たおれは、まんまとおれが死んだと思った間抜けの喉を引き裂いて、再び起き上がる。
信じられないものを見た、という顔で息絶える男を盾に、男の同行者の頭にも数度、銃弾を撃ち込む。
これで、おれ以外のまともでない奴は皆、ここからいなくなった。
おれは穴だらけになった鞄に、新しい荷物を追加すると、再び赤レンガ通りを歩き始める。

「無駄だ。お前のやることは何もかも。」

果たして何度目かになるトレヴァーの泣き言を聞きながら、おれはこぼれ落ちた左眼を再び眼窩に収める。
終わりだ。何もかもが。だが、おれはまだ行かねばならぬ。
おれはタバコを取り出すと、精一杯皮肉げに微笑んで見せた。
(終わり。次の終わりへ続く。)

#小説 #逆噴射小説大賞2019

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