妊娠も仕事も趣味も「なぜ今」と言われる筋合いなんてないんだ

千葉県の新生児死亡のニュースを見て。
Twitterのアカウントは消していたものの、noteでまとめて書きたくなったので一時的に戻ってきました。

まず、件の新生児のご冥福を祈ります。
そしてコロナに罹患している新生児の母に対しても、少しでも早い心身の回復を願います。
言葉だけではこの記事を題材にさせてもらう罪滅ぼしには到底なりませんが、
Twitter復帰第一弾、今日はこの重い題材でnoteを書いていきます。

さて、このニュースには、
「なぜ(コロナ感染拡大ゆえに医療崩壊している)今の時期に妊娠したのか?」
という内容の意見が投げかけられているようです。
直接の引用は控えますが、下記のツイートの引用RTで確認ができます。

無論全体としては少数でしょうし、私自身もnoteの固定記事にもあるように決して子どもを持つ親に優しい人間ではなく、元々他人様を諭せるような立場にはいません。
しかし投げかけられる意見を見て、さすがの私も妊婦に同情しました。

記事タイトルのとおり、なぜ今妊娠するのかなんて他人に言われる筋合いはないと思います。
他人どころか身内にも言う権利なんてない。
そしてそれは、別に妊娠だけじゃなくて、仕事でも趣味でも全てにおいて言えることなんですよね。
ということを、改めて確認する必要があると思います。

近年のコロナウイルスの感染拡大を受け、恐怖や正義感に煽られた結果。
他人の行動を軽率に不要不急な、今やらなくてもいいものだと決めつける人は非常に増えました。
気に入らない行動を取る人たちへの嫌悪感を元々抱いていた人たちのお気持ちに、
歯止めが掛からなくなってしまったとも言えます。
その結果が、妊娠している最中の女性という、デリケートであるがゆえに医療リソースを確実に消費する存在にも、
自分が理解できない仕事や趣味に興じる人へ向けるのと同じ「なぜ今やるのか」「手前の勝手で医療リソースを消費するな」という詰めを向けてしまうバグなのだと考えました。

尤も、妊娠出産だけを今やる必要がある不要不急でないものだと擁護するのも、
無観客開催の五輪を医療崩壊の原因として命を奪うなとアスリートを巻き込んで罵倒しながら、
手前の好むフジロックやオペラは平然と有観客でやるGotchや宮本亜門と同じダブル・スタンダードなのではとも感じます。

妊娠はコントロールできないとよく言われますが、それは限定的な真実です。
「狙った時期に産む」「経過を順調にする」コントロールは確かにできません。
子どもがほしいと思ってもなかなか妊娠しないのはよくあることですし、
健康体で身体に気をつけて過ごしていた妊婦が危険な状況に陥ることも当然あります。

しかし、「妊娠しない」「産まない」というコントロールは容易です。

コンドームは安価で使いやすく、ピルもそこまで高額なわけではありません。
避妊は男女ともに望めば簡単に行うことができ、万が一の望まない妊娠でも中絶は可能です。
勿論女性にとっては心身ともに大変辛く、できればない方がよいことですが、
医療レベルや政治、宗教の関係で中絶が許されない国と比べれば選択肢があるのは恵まれていると言えます。
まあ、そもそもセックスさえしなければマリア様でもない限り孕む可能性は0です。

妊娠しない、産まないことは簡単ですが、しかしそんなことは誰にも命じられないわけです。

妊娠出産は究極の私的領域における行為です。
政府のエライ人がやれ少子化だ産めよ殖やせよと言っても、子どもが欲しくない人に産ませることはできません。
政府のエライ人がやれ自粛しろ医療リソースを使うなと言っても、子どもが欲しい人を止めることはできません。
人権、自由の尊重の観点からも当然にそうあるべきです。

しかし、コロナ対策至上主義、医療至上主義の社会は、
「不要不急の、今やらなくてもいい行為」に多くの仕事も趣味も、公的な行為も私的な行為も手当たり次第に突っ込み、
「医療崩壊を招く行為は間接的殺人であるため許されない」とまで時に言い、
他人の人権、自由を正義面して奪ってきました。
他人の行動を一々攻める暴力が正当化されすぎて麻痺した社会で発現したバグが、
「コロナの感染拡大か明らかな時期に」
「医療リソースをほぼ確実に消費する」
「コントロール可能な妊娠をする」
ことも不要不急BOXに突っ込み、一緒くたに社会のために自粛すべきこととして断じられてしまうこの事象なのではと思いました。

そして当然、子どものほしいカップルにとっての妊娠出産が「今やらなくていいこと」などではないのと同じように、
優れた運動能力を有する全盛期のアスリートにとっての五輪も「今やらなくていいこと」なんかじゃないし、
若く美しく体力のある男女にとっての芸能活動や水商売も「今やらなくていいこと」ではありません。
義務教育を放棄した私が言うのも何ですが、
多くの人の学生生活も「今やらなくていいこと」ではないと思います。
学生生活は一度駆け抜けてしまえば、後から取り戻すことは難しいものの一つです。

何ならば、子どもほしさに相手を求め、学校やオフィスやマッチングアプリや夜の店で出会ったり会食したりする行為と、
望んでした妊娠によって医療リソースを使う行為の間に善悪の壁はあるのでしょうか。
このニュースの妊婦も一人暮らしであることが明らかにされており、相手は同居人ではありません。
「同居でない人と(週数的に)年末年始前後に濃厚接触する」を悪とするなら、
「その結果である妊娠」も悪とされてしまわないでしょうか。

「今やらなくていい」ことなんてないんです。少なくとも他人に口を出す権利のあることではありません。
このニュースから、妊娠に限らず全ての人にとってのあらゆる行為は、
今やらなくていいことなどではないかもしれないと、皆が理解してくれることを願って筆を取りました。

以上。



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