マッチングアプリと保険

「おはよう。よい天気だね。
来週は、雨続きらしいね。
土曜は晴れそう」
「おはようございます。
土曜、アウトレットは晴れのようでよかったです」

朝6時半すぎ、黄色いクルマのアオイさんからの、定例メッセージが届いた。
よし、ちゃんとあさってのお顔合わせの予定、覚えているわね。

何せ、やんちゃな瞳のトモヒロさんの、予約未遂からの本名事件のあとである。

そして、さらにこの人こそ、「いきなりホテルに誘ったりしません」の人だ。

いくらさくらまりかといえども、不安にならないわけはないわよね。
と言いながら、いそいそとお洋服を悩んだり、明日は仕事で遅くなるから今日のうちにネイルを塗っておこうかな、などと考えているのだけれども。
ちなみに、お洋服は、赤いリネンのワンピースにするか、紺のワンピースにアオイさんのクルマのようなイエローのシャツジャケットを羽織るか、の2択。
どっちがよいと思う?

今回は、恒例の「スカートとジーンズ、どちらがお好きですか?」は聞かない。
だって、間違いなくスカートが好きだと思うもの。
生足にフットカバーで、季節先取りのミュールにするんだ。
素足のつま先から露わになる膝下、ワンピースの下の少々お肉がつきすぎの太ももからお尻、さらに上がってそれなりに豊かな胸元まで、視線がまとわりつくのが楽しみだ。
服の下の、白くて手入れのゆき届いたお肌も、妄想してくれるだろうか。
あ、スキニージーンズでも、後ろ姿に舐めるような視線、感じることができるかも。
お世辞にもきれいなスタイルではないけれども、どうぞ値踏みしてちょうだい。
気に食わなければ、今回きりでよくってよ。


とはいえ、いまやりとりしているのは、このアオイさんただひとりである。
一昨日、私から足あとをつけて、お相手からいいねをもらってマッチした人は、その日限りだったようだ。
自分の心を守るために、私からは追いかけないと決めた。

そうは言っても、もし土曜にアオイさんとうまくいかなかったら?
ゼロからふりだしに戻ってしまったら?
きっとリセットもよいのだろうけれども、そこはかとなく不安だ。
心のよりどころ、保険がほしいのである。
きっとこれ、アプリあるある。

そこでまた、大量足あと作戦に出てみた。
しかし、反応はまったくない。
そして、こういうときに限って、ずっと前にいいねをもらった人たちから、足あとがペタペタとつく。
見ていると、なぜマッチさせなかったか、思い出してきた。
高卒の人、タバコを吸う人、お酒をまったく飲めない人。
顔写真がない人、プロフィールが定型文の人。
それから、何となくピンと来なかった人。

そんな中、ひとりだけ気になっていた人を思い出した。
顔写真がなく、他人も写った引きの写真をアップしている人だ。
プロフィール文の感じもよいし、大卒で、収入は800万円ということは、特別にハイスペックではないけれども、それなりに仕事をしている人だろう。
隣の県で、少し遠いところが難点かな。
それでは顔写真をリクエストしよう、と思ったら、あるはずの「写真をリクエスト」ボタンが表示されない。
なぜ?
ということで、運営に問い合わせ中だ。
顔写真がない人とやりとりするのは、気が進まない。
これもご縁がないということ?


夕方、アオイさんとのLINEがおつかれさまで止まっていたことを思い出した。

「10年くらい前に買ったカメラ、バッテリーを交換したら復活しました。
おやすみなさい」
「俺の30年ものの一眼レフも、復活するかな?
おやすみ」

おっ、やりとりが始まって15日目、一人称が「私」から「俺」になったぞ。
そういえば、今朝から敬語も取れている。
よし、距離を詰める気持ちはあるのだな。


*2023年5月24、25日の活動状況
・もらった足あと:9人
・もらったいいね:4人
・やりとりした人:1人
そういえば、今日でこのアプリに参加しはじめてちょうど4か月。
当初は前の2回と同じように3か月で卒業と思っていたけれども、期限はあえて切らないことに決めている。
ゆっくりと私の人生に必要な人、見つけたいから。


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