追われる恋は息苦しい

「おはようございます。お仕事どうですか?」

始業からほどなくして届いたギターさんからのLINEを見て、私はため息をついた。
夕べも、あっさりトシさんと飲んだ生ビール3杯が残る頭で、6件の着信にあった3つの質問に答えたところだった。
私の留学経験について、大学の専攻について、それから明日(つまり今日)の予定について。
スキップしてもいいのかもしれないが、それもまた落ち着かない。
馬鹿正直に答えてしまう。

私は追われる恋が苦手だ。
気になって仕方ない人が私に興味を持ったとたん、あれこれ詮索してくると、息苦しくなってしまう。
振り向かせたのに、うっとうしくなってしまう。勝手なものだ。

根底にあるのは私の自己肯定感の低さだ。
私には興味を持ってもらう資格なんてない、私なんかに魅かれている人なんてつまらない人に違いない、と、スパイラルに陥ってしまう。
考えてみれば、お相手にも失礼な話だ。
もしかしたら、そこが相性というもので、苦しくならないお相手もいるのかもしれないけど。
だから、つき合っていても、結婚していても、確信が持てないことがあった。
これも、2回離婚して、2回婚約破棄をした理由のひとつなのかもしれない。

昔から私はモテないモテないと思っていたし、いまもそう思っているけど、中高大それぞれの親しい友人たちに聞くと、どうも追っかけてくる男性を無意識に振り切っていたらしい。
気になっていても息苦しくなってしまうのだから、眼中にない人だったらなおさらだ。
そう言われてみれば、思い当たる節がないわけでもない。
好意を寄せてくれてありがとう、と言えるくらい素直だったら、私の人生、変わっていただろうに。

かといって、追いかけるのも得意なわけではない。
この人しかいない、と思い詰めて、ぐいぐい押して、ある日、突然冷める。
追いかけている間の精神状態もよろしくないし、はっと冷静になったときの、何とつまらない男を追いかけてしまったんだろう、という口惜しさ。

だから私は、片思いは振られるばかりで実ったことはないし、実った恋はすべて自分から壊してきた。
それなのにまた、恋を探している。なぜだろう。

ギターさんにはお昼休みに午後は出張が入っているとだけ伝え、放置しておいた。
夕食後にこんばんはとLINEを送ると、間髪入れずに既読がつく。

ああ、この人、私のペースにはまっているな、と思う。
追いかけてくれているんだな、と思う。

私への好奇心が、LINEの小さな吹き出しを突き破って飛んでくるようだ。
追われる恋の息苦しさ、いつかは寄り添う愛おしさに変容するのだろうか。

くたびれた。
昨日、帰りが遅かったのが祟っている。
躁うつ病持ち、睡眠不足は大敵。今日はもう寝てしまおう。
私からおやすみなさいスタンプを送るかどうか、50歳にして考えあぐねている。


*2023年3月5日の活動状況
・もらった足あと:1人
・もらったいいね:2人
・やりとりした人:1人
昨日お顔合わせしたあっさり晩な人ことトシさんからは、連絡がなかった。
それなりに楽しく3時間をすごせたと思ったけれども、彼には気に入られなかったのだな。
選ぶのはいつだってお相手。私は選ばれる方でありたい。

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