「ふくよかな肉体にひっつきたいです」

強い北風が吹き荒れた1日、私のマッチングアプリにはさやさや空気が流れていた。
大きなうねりはなく、でも、何かが始まるような流れだった。


昨日、お尻の好きなえくぼさんとは、昼休みからゆるやかに続いていた会話が、夜、途中で終わっていた。
眠剤が効いてきて、彼の返事を待ちきれなかったからだ。

「まりかさんの恋愛観は?
すごく冷めているように感じますが…。
あんまり男は好きじゃないんですか?
それなら、ここにはいませんよね(笑)」

あえてそっけなく、短めに返信していたから、気になっているのかな。
これは、「ルールズ」という本に従ったものだ。
自分を大切にしてくれる人をどう引き寄せるか、という本で、2000年代にはやった本だ。
自分からは誘わず、メッセージは極力短く、最低限に。
すぐ返信するとものほしげに思われるから、ときに焦らしたり、ときに即答したり、予測不能な雰囲気を心がけて。
情報を出しすぎず、ミステリアスな雰囲気を醸し出しましょう。云々。
詳細は改めて書こうと思うが、私はこの本を実践して、二度目の結婚を果たした。
ただし、彼が私を大切にしてくれたかどうかは、別の問題だ。

はて、と、考えた。
いえ、男性は好きです。好きだから、ここでこうして探しているんです。と、心の声が叫ぶ。
そうですか? とそっけなくするか、実は甘えたいんです、とぶっちゃけるか。
彼は本命にはならない気がするので、思い切って冒険してみよう、と決めて、すぐに返信をした。
賭けだ。

「私、実はすっごく甘ったれで、さみしがりやです。
甘ったれでいさせてくれる人と一緒にいたいんです。
ココロもカラダもアタマも満たし合える人が理想です。
えくぼさんは?」

どう? 少しは甘くなってきた?
ここはかわいいまりかを、装ってみよう。
いや、私は本当に甘えたい。親に甘えられなかった分を、取り戻したいのだ。

「僕も実は、すごく甘えたいんです。
仕事ではそんなそぶりは見せませんが、プライベートではデレデレです。
甘えさせてくれて、甘えてくれる女性が理想です。
だから、ぽっちゃりした方が好みなんです」

おっ。食いついてきたぞ。
あっ、もうワンセンテンス、吹き出しの中にある。

「ココロとカラダはわかりますが、アタマもありましたね。気づきませんでした」

そうかそうか。求めているのは甘々、ベタベタな関係で、知的な会話は求めていないのか。
ビリー・ジョエルの、”Just The Way You Are” という曲の歌詞に、クレバーな会話は求めていない、とあったのを思い出した。
私、小賢しい部分もあるけど、男の人が胸に頭をうずめたところを撫でるのが好きだし、ゆったりとしたソファに並んで肩に体を預けて抱き寄せてもらうのが何より幸せだ。
肌を重ねるときめきは、何ものにも代えがたい。それだけでは困るけれど。
ふむふむ。
この路線も、それなりによいわね。よし、これで行ってみよう。

「えくぼさん、目上の男性に失礼かもしれませんが、かわいくていらっしゃるんですね。
頭をなでなでしたくなっちゃいます。
私、知的好奇心を満たし合うことも、同じくらい大切だな、って思っています」
「僕のこと、よしよししてくださいね。
僕もよしよししてあげる。
知的好奇心? 難しいなあ。
でもおたがいを知りたいというのも好奇心には変わりないから、会ってみて惹かれあったら、あとはなりゆきでいいんじゃないですか?
まりかさんに会いたくなってきました。寒いと人肌恋しくなりますよね。
まりかさんのふくよかな肉体にひっつきたいです」

ほらほら、本音が出てきたぞ。正直でよろしい。
意外とかわいいじゃん。
おだやかな時間を、とかとってつけたように言うより、ストレートに肌を重ねたいと言ってくれる方が、好感が持てる。
だって、知的な会話も大切だけど、触れていて安らぐことも同じくらい大切だもの。
彼の脳内ではいま、私がプロフィールに載せた花柄のワンピースがするりと脱がされ、大きなお尻があらわになっているに違いない。

夜になっても、さやさや空気は流れている。
いったい彼は、どんな人なのだろう。
男と女の関係になるかどうかはともかく、興味がある。
どうにか会うところまで、たどり着きたくなってきたぞ。
ひとまず、考えるよりも、この流れに乗ってみよう。

並行して、あっさり晩な人とも会うことになりそうな話は、また明日。


*2023年2月21日の活動状況
・もらった足あと:4人
・もらったいいね:2人
・やりとりした人:2人
この話をだれか男の人に聞いてもらいたくなって、中学の同級生に飲もうよ、とLINEしてみた。
来月半ばなら、というので、3週間後にアポ。
さあ、それまでにどんなふうに進展しているか。

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