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棒アイドル【毎週ショートショートnote応募作品です】

 木枯らしが枯葉を巻き上げた。薄曇りの公園で走り回り、うっすら汗をかく娘のそばで冷えてきた腕をさすった。買い物帰りに少しだけという約束で寄ったが、すでに四十分は遊んでいた。
「そろそろ帰ろう」
「やだ。これ全部拾う」
「どんぐり?」
 背後から少年が長い木の枝を持って娘の手のひらを覗き込んだ。急に話しかけられた娘はぎょっとして固まり、手からどんぐりがぽとりと落ちる。
「あっ」
 当の少年は公園の中央に人の輪が出来ているのを見つけ一目散に駆けていく。
「何だろうね」
 慌てて娘がどんぐりを買い物袋に押し込んで歩き出したが、少年達の様子をちらりと見てとぼとぼと戻って来た。
「何だったの?」
「棒アイドル自慢だった」
「え? 何?」
 興味を失った娘はブランコに向かって走り出した。
「もう、何なのよ」
 少年達がわっと感嘆の声を上げた。
 真ん中の少年がうやうやしく木の枝をかかげた。さながらアイドルのように。


おわり


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