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≪わたしごと18≫素材を理解する事

私は工芸をやってきたのだけれども、手を使って素材と対話する事は、最高に面白い。

素材と"対話"と書いたけれど、共感と言っても良い。例えば陶芸の土には土の特性があって、乾燥の速度があって、収縮や可能な形に制約がある。木には木の木目があって、彫る方向や硬さ、石には石の引っ張り強さがあって、おのおのにその素材が行きたい方向と、こっちに作為を許してくれる限界と、予想もしてない反応があったりする。

手を使いものを創る。その創作過程は有機的に展開する。

試行錯誤して、どうにか思いのかたちや色を工夫したり、偶然の化学反応や色の配合に、驚かされたりする。物理的な現象、垂れるだとか曲がるだとかはじくだとか、意識はしなくとも化学や物理の法則が自然の現象として表れている。

伝統的な手法や技法は、長年の間にその素材と折り合いをつけて、一番自然でバランスのとれたものなのだと思う。それを新しいものと結合して、新しい力点を探るのも面白い。

そのアートと科学が融合した工芸というものに、日本人はこころを掛けて、丁寧に生活するという事をやってきたのだと思う。その丁寧さ、精密さや誠実さは日本のつくる製品のレベルの高さにも表れているだろうし、道具にたいする想いや、工夫にも世界からしたら驚くものがある。

ものにこころを観る日本人が、素材に共感しながらものを丁寧につくって、その中間にあるような道具を常に工夫しながら、理想の形や色を追い求める。その理想というのは、いつも自然と折り合いをつけた所を力点としているのが、日本らしいのかなと思ったりする。

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