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展示があると聞いて目指したが、それはもう終わってしまい、搬出の後だった。かなよさんという、ベレー帽に着物を着た女性が教えてくれた。彼女は若い男性を一人連れていて、その場所を案内していた。「よかったらその絵も見てください」と仰ってくれて、それでその建物の奥の方まで見ることができた。かわいいですね、というかどうか迷って振り返ると、かなよさんが先にかわいいでしょうと言った。そこはベッドメイキング講習のポスターなどが張られた場所で、男性がソファで待っている。いなくなった人の名前が書かれていて、たまに見つかるという。その側にはお爺さんが座っていた気がする。

この場所のスケッチもあって、まるばつさんかくの抽象画だった。かなよさんはその場所を何年も知っている人の絵だと言った。何にでも反対する人がいて、こうしたんだって言っていたような気がする。ここにも、新聞紙を読んで座っているおじいさんがいた。独特な匂いもあったような。

ココルームへと案内してもらえることになり、二人は自転車を押して歩いてくれた。男性の自転車は、人工芝が張られていて素敵で、それも私の知らないおっちゃんがしたくれたらしい。かなよさんはよく人に挨拶して、“頑張ってね”と声をかけられていた。

古い料理屋さんを少し説明されたり、二人の後を着いていくと、非現実に風景が見えてきていた。50円の自販機も発見した。何も買わないけれど、それで満足した。

井戸のある庭を“散歩”した。ビー玉やガラスが埋められていて、それを触った。引いたおみくじの中には蜘蛛のミイラが入っていたけれど、もう一度畳む時に地面に帰って行ってしまった。井戸の水を汲んでもよいと言われて、それを少し舐めた。地面や木の匂いのする水で、こんな水には初めて出会う。舐めると匂いがなくなる。香りだけだ。

ラジオからハイドンを聴いているお爺さんがいる。初めは渡された資料を読んだりしていたが、その人に話しかけてみた。お爺さんはここで700円のラジオを買った。彼は人工衛星のパーツを開発したから、彼の作ったものは宇宙を飛んでいると言った。関野吉晴さんの話だったりをした。今は若い人は旅をしないね…とスマホのジェスチャーを彼はした。それもあるかもしれないけれど、みんなにはお金も無ければ、そこに行って見たい景色というものは世界の中から刻々と消えていたり、自分の体が汚れることが嫌だったり、一緒にその風景を見る友達がいなかったり、本当はどんな理由で旅ができないのだろうと思った。

16時になり、合唱の練習をする。参加しない?してみようかと、という返事で。手伝って、と言われたので楽譜のホッチキスどめを手伝った。手伝っての言葉が嫌な感じじゃないのはどうしてだろう?と考えて、いま思ったんだけれど、仲間に対してだけその言葉をあの場所では言うからかもしれないと思った。友達の人にだけ言う言葉。だからあの場所にいたら友達になれるのかもしれない。伸ばしている青い爪が女の人の指に当たってしまって、なんかずっともうしわけない気分だった。

自己紹介は、“好きな海の生き物”で名前を言う必要がなかった。これも後からどうしてかわかる。歌うのは、全て世界や歴史や政治の中で死んでいく人のための言葉だからだ。隣のお爺さんは私のことをよく気にかけていた。悲しくて悲しくてとてもやりきれない…のところで声が聞こえなくなったことだろう。この曲ってどんな曲だっけ。たしか戦争の…と思ったらあまりに悲しくなって泣きそうになっていた。他には聖者の行進。(黒人奴隷の人が仲間の死を見送る)島唄には転調があり、それは本土及びアメリカが“チヨ”を殺したからだろう。転調のところで泣いてしまって歌えなくなった。爪が当たった女の人が、私のことを見ていた。意味を考えたら、悲しくなって歌えなくなってしまいました、というと、彼女はそう感じてうたえるのは良いことだというような言葉をかけてくれた。

夕ご飯をみんなで一つの大きなテーブルで囲んで食べる。早めの夕ご飯なのがまたよかった。お皿にご飯を盛り付けるが、かなり無秩序になってしまった。でも、みんなの箸の絵柄も全員違うから、それで良いのだと思えた。

お盆の時期に関西に夏に来ることはこれまでなかった。けれど、今日はこうして死者を弔っている、歌は皆誰かを弔うための曲だった、初めてお盆を過ごしているのだと思う、というとそうなのよね、とかなよさんが言った。

小さな男の子、歌の上手い女性、三重から来た男性…男の子はカレーをおかわりした。読み終わらなかった絵本をかなよさんは、ここは本をあげたりするんです、と言った。手伝い、してもいいんですよという言葉で片付けをした。

三角公園にみんなが行ってしまった。それを見送ってくれるという女性がいて、ありがたく感じた。インターンと思われる彼が、あなたのですよね?と忘れた折り畳み傘を差し出した。よくわかりましたね。!

女性は、町田で染め物に関する場所で働いていたと話してくれた。そのあと1ヶ月ココルームに滞在したりして、今は働いている。彼女も道のおじさんに挨拶した。そして、公園はムンムンとした雰囲気が漂っていた。


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