『 こちとら夢なもんで』
眠い。
とても眠い。
とてつもなく眠い。
昨夜珍しく息子たちが夜中に何度も起きてきたから、ほとんど眠れなかった。
今日一日を忙しく過ごし、そして今、夜の9時。
猛烈に眠い。
眠気に引っ張られる。
ベッドに、引っ張られる。
ベッドに落ちてゆく。
ベッドの下の床に落ちてゆく。
床がパカと開いて、その中の暗闇の中に落ちてゆく。
暗闇の中は、あたたかい。
轟々と川の流れる音がする。
小さな鈴の音が聞こえた。
チリチリ。
チリチリ。
見ると黒づくめの男が座っている。
知ってる、あの人。
人殺しだ。
近寄っていく。
「殺したね?」
と私が言っても、俯いたまま顔をあげない。
やぁだ。しんきくさい。
こちとら夢なもんで。
こちとら夢のなかなもんで、倫理もなんもありゃしませんの。
俯いた男のとなりにゴロンと寝転ぶ。
川の流れの音のように聞こえるのは、多分胎内にいるからだ。
男よ、
男。
人生の答えを他人に求めることなかれ。
それは常に雲の上。
あなたを見下ろし、見守っているのだ。
なんててきとうなことを言って目を瞑る。
眠い。
とてつもなく眠い。
男を抱いて眠ろう。
こっちにおいで。
よしよし。
おやすみ。
ここでは悲しみもまた愛し。
星は心に瞬く。
ほ し
は
こ
こ
ろ
に
ま
た
た
く
☆
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