『スイカ』
うちには男の子の座敷わらしがいた。
私が子どもの時からずっといた。
スイカが好きでよく盗み食べてた。
3年前にその子はいなくなった。
どこにいるかわかる。
我が子がスイカを志村食べしてる。
30年前に亡くなった私の弟もスイカが好きだった。
弟が交通事故で亡くなったとき、スイカを持っていた。
近所のおばさんからもらった小玉スイカだった。重くて私から随分と遅れて歩いていた。大きな音に振り返ったら、ひかれてた。
血なのかスイカの汁だからわからないものが、飛び散っていた。
座敷わらしの男の子は夏になると夜な夜な冷蔵庫の中にあるスイカを食べた。
朝になると床はベタベタで、スイカの皮が台所の流しに置いてあった。皮は白いところまで食べてあった。母は、夏の間毎日のように冷蔵庫に切ったスイカを入れていた。
我が子がスイカを食べ終わる。
床はベタベタ。
皮の白いところまで食べてる。
教えてないのに、食べ終わった皮を流しに持っていった。
その小さな後ろ姿。
どこかで見た後ろ姿。
これは全て偶然で、だからこの涙に意味などない。
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