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「みんな、ヒトゴト」〜続・障がい者雇用について〜

先週の記事の続編です⬇


「みんなな、結局ヒトゴトやねん。人にも余裕がないし、心にも余裕がないねん。」
「みんな、敵やと思って動いたほうがええで。」

木曜日、課長に言われた言葉。

今年度から配属された、車いす利用の新人さん。
バスでしか行けない施設で行われる、受講必須の「人権研修」に、どうやって行ってもらおうか。
これが、先月初めごろから、私たちの懸念事項だった。

研修は本社の人事課が主催。
障がい者雇用枠で、半年前に採用を決めたのも本社人事課。
でも、本社人事課は、この「人権研修」受講について、動画研修などの代替措置や、交通機関利用についての配慮など、ほとんど検討していなかった。
当の彼女には、採用前に、すべて動画研修になるとか言っていたらしいけれど。

これを受けて、支社の人事担当に相談、私たち原課と人事担当で調整に入った。
「福祉タクシーを手配して、研修に参加してもらう」という方向性が固まった。
GW明けすぐに、支社長からの承認も、人事担当からとってもらった。
ただ、その後の手続きについて、私たち原課も人事担当も想定外、一筋縄では行かなかったのだ。

まず、支社で契約しているタクシー協会のタクシーチケットを利用するという手段をとると、とても高額。
次に、別のタクシー会社を手配したのだけれど、契約には間に合わないため立て替え払いにしようとすると、「立て替え払いは規定違反」と会計担当からストップがかかる。
では、支社内で前払金を受け取る手続きを開始するも、今度は経理からストップがかかった。

福祉タクシーを利用して行かなければならない研修は、今年度、あと3回ある。
この3回については、安く手配できるタクシー会社と契約行為を行う期間がたくさんあるため、今回のみ、やむを得ず、前払金、そして、あとの3回は正規の手続きを踏んで福祉タクシーを手配しようとしていた。
経理の言い分としては、4回のうち1回だけ別の手続きをすると目立つので、監査から質問が入る。
だから、今回の前払金は不可。
では、高額にはなるけれど、当初想定していたタクシーチケットであれば、正規の手続きで問題ないので、それで動こうとすると、こちらも、あとの3回と別の動きだということで、監査から質問が入るから不可。

立て替え払いはともかく、前払金やタクシーチケットは規定違反をしているわけではない。
こんなの、ほとんど研修に行くなと言っているも同然。

私と係長は、この件を課長に報告した。
課長も「研修に行くなと言ってるもんやん」と。
「気にせず、今回はタクシーチケットで進めていい」と。
「この案件は、原課や担当だけの話ではなくなってきている」と。
「もっと上の方で話をすべき案件」だと。
この時点で、私は、色々ストップをかけてくる経理には課長からかけあってもらえるものだと理解し、「では人事担当とタクシーチケットを持っている総務担当に報告をしておきます」と伝えた。
これが今週月曜日のこと。

ただ、実は……。
この月曜日の時点で、あともう少しでカタがつくというところで、ふと気づいてしまったことがある。

私自身が、想定以上に、摩耗している…。
心が苦しい。ツラい。しんどい。

本社人事課、支社の人事担当、総務担当、会計担当、経理担当に対し、ほとんど私が表にたって、手探りで調整を重ねてきた。
本来は、本社人事課が検討しておくべきこと。
それが叶わないのであれば、原課だけで右往左往するのではなく、各担当で知恵を出しあって、支社の担当みんなで一刻も早く最善の策がとれるよう動くこと。
でも、人事担当は別として、私が矢面にたって、色んなところから、コレはダメ、アレはダメ、ソレもダメ…、と、ダメ出しばかりされる。
そして、「ダメ」と言われるだけで、代替策は自分で考えろと言われる。
初めての事例で、本当に手探り状態なのは、みんな分かっているはずなのに。
何のために、特化した課や係が設けられているんだ。

それでも、とりあえずあと少し…と思って、手続きを進めていたところ…。
水曜日になって、経理から「報告がない!」と叱られた。
私は課長が課長同士か部長同士かで話をつけた上で、最終の手続きに入るよう指示されたと思っていたものだから、びっくりした。
課長は、部長と課長が集まる会議で、障がい者雇用の本人が働きやすいよう、配慮がほしいと課題提起しただけで、経理には報告していなかったのだ。
……もう、疲れた。
…………どっと、疲れた。

障がい者雇用にあたって、本来整備されているべきものが整備されていなくて、手探りで、いっぱい汗をかいた。
当の彼女(障がい者雇用の新人さん)の前で、電話で調整することなんてできないので、色んなところに足を運んで、色んな人に報告や相談、調整を数え切れないくらいやった。
こんな状況、ルールの整備がなされていない状況はおかしいと思いながらも。
みんなのヒトゴト感に違和感を覚えつつも。
だって、障がい者雇用の職員が、あろうことか「人権研修」と名のついた研修に、安心して行けないなんておかしい。
みんなヒトゴトなんだったら、同じ課の、私たちが汗をかくしかないじゃないか。

行き違いひとつで、報告がなかったことについて、なぜ、私が責められなきゃいけない?
そりゃ、私は「責任感はありすぎるほどあるけど、実力が見合ってない」(夫談)。
自分の能力が高くないことは分かっている。
でも、そういうヒトゴトのスタンスで、上から目線の人たちは、この件が自分事になったときに、もっとスマートに上手く立ち回れたとでも言うの?
私は、限られた時間で、考えうる可能性を探って探って、でも色んなことがボツになって、やむなく最善の策から数えて2番目の策をとることになった。
でも、結果としては、最善の策であろうと、2番目の策であろうと、当の彼女にとっては、福祉タクシーに乗って「人権研修」に参加できることに変わりはないようには手配したのだ。
過程としては、最善を尽くしたつもりだ。
過程を自分で評価することは、甘いかもしれないけれど。

もう、耐えられなかった。
「やるせない」。
温室育ちの私は、はじめてこの言葉を体感した。

そして、経理に叱られた翌日、課長と係長で協議を行った際、課長からかけられた言葉が、冒頭の言葉。
「みんなな、結局ヒトゴトやねん。人にも余裕がないし、心にも余裕がないねん。」
「みんな、敵やと思って動いたほうがええで。」
「次からは規定とか読みまくって、理論武装してのぞまなあかんわ。」(今回そんな時間はなかったけれど…。)
「(本来は私が言うように、みんなで知恵を出し合って協力せなあかんことやけど、)まわりに期待したらアカン。」

もう、救いも何もなかった。
何が「人権擁護宣言」だよ。
何が「人権研修」だよ。
茶番。偽善。
正直、私は大いに期待していたよ、これを一番目の事例として汗をかく事で、組織に障がい者雇用枠の人が働きやすい職場を作る意識が湧いて、より良い組織に変わることを。
私が甘かった。
温室育ちの、激甘のペーペーだった。
というか、もう、こんなことを言われてしまえば、「(期待した)私が悪かった」と言わざるを得ないよ。
はじめは「育児と仕事の両立に挫折したこと」で、来年春の退職を決めたけれど、こんなのだったら、本当に退職を決めて、こんな組織から足を洗えてよかったと、心の底から思うよ。

「色んな可能性を模索して、けして怠惰に動いていたわけでもないのに、色々なところからチクチク言われて、もう私は限界を感じています。」
いい歳をした私は、課長と係長の前で、涙を流してしまった。

さらに後になって、係長から聞いたのだけれど、経理課長とうちの課長の相性が良くない…、ということも、私が水曜日に叱られた原因だったらしいことを知る。
経理課長とうちの課長も、この件で行き違いがあったようで。
正直、申し訳ないけれど、課長も、少しヒトゴト感があるように、私は感じてしまう。

ただ、やはり時間が限られていたにせよ、思いつく限りの動きをしたにせよ、反省すべき点、今後改善すべき点は、あったわけで。

まず、課長の言うように、規定などを読みまくって、理論武装をしたうえで調整を行うこと。
これは、課長に言われる前の日に、夫にも言われた。
夫には「そのうえで、相手の痛いところを探してつつくんや!」と言われた。
私は、障がい者雇用の彼女が働きやすいように!という感情だけで、丸腰で突っ走っていた。

次に、これは寂しいことだけれど、期待しないこと。
所詮、みんなヒトゴト。
もちろん、そうでない人も組織内にはいるのだけれど。(前の所属の係長がそうだった。)
期待して、上手くいかなくて、ひとり勝手に傷ついて、障がい者雇用の彼女への配慮を目的としているのに、当の彼女の前で摩耗した姿を見せて、気を遣わせてしまうのであれば、本末転倒。

さらに、もういっそ、みんな敵だという前提で動くこと。
「人事担当も信用していいの?その人がどうとかではないけど、そういうケースで梯子はずされてる人いっぱい見てきたで。」とは、課長の言葉。
悲しいことだけれど、自分の心を守りつつ、目的を成し遂げるためには必要なことなのかもしれない。
今の所属に異動する前までは、上司から、「情けは人のためならず」「お互い様」の精神で働くよう教えられていたんだけどな。
職場の仲間ってなんだよ。
ちゃんちゃらおかしいわ。

一連の上司への吐き出しと、事務手続きを終えて、私は一応、経理担当者に謝りに行った。
先程も書いたように、もう、経理とうちの課の問題は、yuraの範疇を超えた問題だったのだ、と係長には教えてもらっていたけれど。
謝りに行ったところで、おそらく「お互い様」にはならず、上から目線でチクッと言われることが想像できたけれど。
自ら進んで傷つきにいくようなモンだと思ったけれど。
でも、一度自分が矢面に立った以上、直接担当者に謝りに行かない…というのは、自分の中で筋が通らないような気がしたのだ。
もう、意地である。いや、意固地?
まぁ、結果は想定したとおりだったけれど。

あと、もはや意味があるのかどうかは分からないけれど、今回のことで、私にできることが、あとひとつ(私のわかる範囲では)、あった。
労働組合に、障がい者雇用の職員が働きやすい環境を整えてもらうようかけあってほしい…、これを訴えること。
厳密にいえば当事者ではない一個人がひとり訴えたところで、組合は、その意見を取り上げないかもしれない。
でも、だからといって、ここまできて、ダンマリするのは違う。
私にできること、意味を成すかは分からないけれど、声をあげること。
組合に入って組合費も払っているので、話を聞いてもらうぐらい良いだろう。
これで、何か動きだしたら、ラッキー。
どうせ無理、と声をあげなければ、組合が動き出す可能性はゼロ。
組合に話を聞いてもらうのははじめてのことだったので、相手は知ってる人なのにとても緊張したし、すごく口下手になってしまったけれど。

この、経理担当者への謝罪と、組合への訴えで、今回のことについて、自分の中でカタをつけたことにした。
一番の目的、福祉タクシーの手配もできたことだし。
完全に自己満足だけれど。

前回は、当の彼女が働きやすいように!と、自分にしては強気(?)な記事を書いたけれど、今回は自分の愚痴が大半となってしまった。
前回の記事のコメント欄で応援してくださった方、そして、この記事を読んでくださる当の彼女の状況に似た状況の方、失望させてしまったかもしれない。
私は、弱々だった。
弱々なクセに、正義を振りかざすみたいに大きな口を叩いて、しっぺ返し(?)がきて、グダグダになった。

今もまだ、悔しいやらやるせないやらで、ときどき涙の波がやってくる。(家で。)
でも、これはもう、時間薬として、自分でおさめていくしかしようのないこと。
土日、ゆっくり気分転換をして、心を休めようと思う。


※画像はメイプル楓さまのものをお借りしました。
  ありがとうございます。




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