【授業の裏側】不条理劇の巨匠、イヨネスコの不思議な世界
みなさまこんにちは!
劇団ゆらじしゃく演出の高野菜々子です。
昨日の東京は凄まじい雨でした。
朝から雨が降ったり止んだり……降りながら晴れたり曇ったり……
『授業』の冒頭で出てくる、教授の台詞です。
一見普通の台詞ですが、何度も聞いているとなんとも不思議に思えてきます。
結局、天気はいいのかしら?
それとも、どんよりとした曇り空なのかしら?
平和な夏の昼下がりの「先生と生徒」という日常的な光景が、徐々に徐々に不条理に侵されていく様を激烈に描いた『授業』という作品の冒頭にぴったりの台詞です。
そんな『授業』を書いたイヨネスコは、第二次世界大戦後に流行した「不条理劇」という演劇ジャンルを築いた巨匠です。
さて、授業の他にも様々な劇作品を発表したイヨネスコは、一体どんな人物だったのでしょうか。
この【授業の裏側】シリーズでは、7/14(日)15(月祝)に阿佐ヶ谷で上演する『授業』をより楽しむための情報をみなさんにお伝えしていきます📚
不条理劇って何?
不条理劇とは、第二次世界大戦後に登場した演劇のジャンルで、世界や人間の「無意味さ」や「不条理さ」をテーマにした演劇です。
「なんだか難しそう…」と思ったそこのあなた、実はこれがすごく面白いんです。
普通の劇とは一味違う、予測不能な展開とユニークなキャラクターが特徴的な不条理劇では、登場人物が突然、意味不明な会話を始めたり、ありえない状況に遭遇したりするのが当たり前。そんな怒涛な展開を楽しみつつも、その不条理性の裏側にあるのは人間の普遍的な心理だったり、はたまた考えてみても本当によくわからなかったり。
その中でも今回の『授業』は、意味不明さと、意味のわかる度合いが、ちょうどいい。
一見よくわからない会話がふとした瞬間に深く腑に落ちる瞬間が、きっと観ているみなさんの中にと訪れるはずです。
笑いと混乱と人間と絶望。
そもそも人間も世界も、矛盾だらけじゃないですか。そんな相反する要素を全部一つの作品に詰め込めるのが不条理劇のすごいところです。
ウジェーヌ・イヨネスコとは?
授業の作者「ウジェーヌ・イヨネスコ」は、1909年、ルーマニアで生まれました。
父はルーマニア人、母はフランス人で、フランスとルーマニアを行ったり来たりしながら育った彼は、祖国ルーマニアの全体主義の盛り上がり、ナチス・ドイツのフランスの占領、戦後のルーマニアの共産主義政権を目の当たりにしました。
彼が若くから感じ続けた全体主義の恐怖は、彼の劇作に大きく反映されています。
彼の代表作である『犀』は、ある町の住民たちが次々と動物のサイ🦏に変身していく、奇妙で勢いのある戯曲です。なんせサイになった人々は、怒涛の勢いでまっすぐに走りつづけますから。
この劇は、人々が全体主義に染まり、個人のアイデンティティや考えを失っていく様子描いています。わかりやすい全体主義批判です。
めちゃくちゃ面白いのでおすすめです。
『授業』は犀ほどわかりやすくはないものの、やはり全体主義に対するイヨネスコの姿勢が現れています。
犀はわかりやすくナチスの影響が見えますが、授業は、もっと広い意味での全体主義「ひとつの正解しか許さず、それを全体に押し付けようとする恐ろしさ」を描いた作品です。その分、さらに広がりがあるとも言えます。
現代はよく「正解がない時代」と言われます。この多様性の時代、成長の仕方も、物事の捉え方も、人によって全く異なります。
それを理解しているつもりで生きてはいても、自分の中の「支配欲」は、隙を見つけては表に出ようと機会を伺っています。
自分の信じている正義とは異なるものに出会った時、
自分が生きている軸の中で「下」の人間を見つけた時、
踏みつけることで自分が「上」に上がれる獲物を見つけた時。
人の脳はアドレナリンを噴出し、その支配欲で誰かを踏みつけようとします。
この誰の中に巣食うどうしようもない残酷さこそが、私にとっては人間の不条理性です。
イヨネスコのすごいところは、この人間の不条理性を「わけわからない超喜劇」として描いているところです。
暗く無くて、超笑えて、でもいつのまにか頭が混乱する不思議世界へと誘ってくれるイヨネスコの劇世界。
劇団ゆらじしゃくの『授業」で、
是非味わってみませんか?
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7/14(日)〜15(月・祝)
阿佐ヶ谷シアターシャインで
お待ちしております!
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