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Amplitudeによる行動分析、そしてプロダクトアナリティクスとは?

こんにちは。お久しぶりです。

これまで何度かお伝えしてきましたが、Amplitudeをおすすめする理由と、Amplitudeが提供する機能について、もう少し詳しくお話ししたいと思います。

私がAmplitudeを強くおすすめしている理由は、プロダクトの改善において費用対効果が高く、必要不可欠なツールだからです。

私自身がAmplitudeを活用して2年間、イベントの設計から計測まで行ってきた経験があります。
この2年間でAmplitudeを活用することでどのようなメリットがあったのか、その価値はあったのかについてお話ししたいと思います。


1.まず結論

結論から言います。
スタートアップから大企業に至るまで、データドリブンでの事業推進を行って行く場合、ためらわずに導入することが適切だと考えています。

社内にデータアナリストのように自由に活動できるエンジニアがいる場合を除き、四の五の言わずに導入することが望ましいでしょう。

データエンジニアを採用しエンジニア組織をビルドしていくことは、とてつもなく困難だからです。

2.Amplitudeとは?

Amplitudeはユーザーの行動データを分析し、どのようなユーザーが、どのような行動をしたか、をデータに基づいて迅速かつ視覚的に分析することができるものです。

呼び方は自体によって様々ですが、今風に呼ぶと「プロダクトアナリティクス」でしょうか。

2-1.Amplitudeの何が優れているのか?

現在、デジタルマーケティングの領域では、Google Analyticsを含むさまざまな分析ツールが存在しています。
これらの分析ツールの中で特に有名なのは、間違いなくGoogle Analyticsです。
よく聞かれるのは、「Google Analyticsを導入しているのに、なぜAmplitudeが必要なのか?」という声です。

なぜGoogle Analyticsだけでなく、Amplitudeが必要なのかの答えは簡単です。
理解しやすいよう、以下の会話を例にしましょう。

あなた:
Google AnalyticsとAmplitudeは、それぞれ何に重きを置いているの?

友人:
そうだね。これを現実のお店の例で考えてみよう。
Google Analyticsはまるでお店の入口にカメラを置いて、どこからお客さんが来ているのか、どの時間帯に多くの人が来ているのか、みたいなことを追跡しているイメージだね。
例えば、多くのお客さんが隣町から来ているなら、そのエリアに広告を出すとか、そこのバス会社とコラボして乗車券とクーポンをセットにするとか、そういうアプローチができるよね。

それに対して、Amplitudeは店内にカメラがいくつもあって、お客さんが店内で何を見ているのか、どの商品に手を伸ばしているのか、何を買っているのか、といった具体的な行動を追跡している感じだ。
これで、特定の商品が人気なら、それを前に出して売り上げを伸ばしたり、あるいはあまり人気がない商品の配置を変えてみるとか、プロモーションを考えるとか、そういう施策が考えられる。

あなた:
ああ、だからGoogle Analyticsは集客とか、お店に人を呼ぶ戦略に使われるけど、Amplitudeはお店での具体的な売り上げを上げるための戦略に役立つんだね。

友人:
まさにその通り!
Google Analyticsは外からの流入を最適化するのに使われ、Amplitudeは店内でのユーザー体験や購買行動を理解し、最適化するのに役立つんだ。
両方を組み合わせれば、お店全体としてのパフォーマンスを高めることができるよ。

あなた:
すごくわかりやすい例えだった!ありがとう。じゃあ、両方を使ってみることにするよ!

Google AnalyticsとAmplitudeの違いについて、ご理解頂けましたでしょうか?
ただしGoogle Analyticsにできることのほとんどは、Amplitudeでも実現可能なので、Google Analyticsの優位性は無料なこと以外何もないでしょう。

2-2.データの民主化

● 複雑なデータの整備をしなくてよい
● 専門家でなくとも1週間かかる分析を5分でできる

行動分析を実施する場合、専門的なデータ分析の実行が必要です。
エンジニアを雇い、組織を構築することも考えられますが、年収ベースでどれだけ低く見積もっても800万円〜になるでしょう。
能力次第ですが、それ以上に高く見積もることも可能です。

しかし、これらの課題を解決するために、Amplitudeでは分析からBIツールを使用したダッシュボードの構築を瞬時に行うことができます。
データの民主化を掲げているだけあり、驚くほど簡単に誰でも分析できるようになります。

CS担当者、マーケティング担当者、プロダクトマネージャー、エンジニア、デザイナー、経営陣など、職種に関係なく全員がAmplitudeを活用し、施策を進めることができるようになります。

3.こんな課題ありませんか?

漫画アプリ事業や旅行サービス事業など、どのプロダクトでも構いませんが、ここでは私が得意とするECを例に挙げます。

あなたは自社のECサイトの責任者です。
売上を増やすことが貴方の使命です。

● なぜ広告からLPへの遷移がうまくいかないのでしょうか?
● なぜLPから販売ページに移動して購買が行われないのでしょうか?
● なぜ購入まで進まないのでしょうか?
● なぜ特集ページから購買が行われないのでしょうか?
● なぜ特定の商品のカゴ落ちが多いのでしょうか?

年間の売上が数億円から数十億円に達するようなEC企業では、日常的に改善のための試行錯誤が行われていることが当然と言えます。
何かを計測する多くの場合、Google Analyticsが活用されると思います。

しかし、実際にGoogle Analyticsで何がわかるのでしょうか?
実際には、Google Analyticsでは結果しか把握できません。

● 訪問者数が増加した
● 広告からの流入が増えた
● 購入が多く行われた
● 離脱が多く発生した

これらの情報はセッションベースでの事実を示していますが、私たちが把握できない情報も存在します。

● どのようなユーザーの訪問が増えたのか?
● どのようなユーザーが広告を多く見てくれたのか?
● どのようなユーザーが多く購入してくれたのか?
● どのようなユーザーが多く離脱したのか?

これらの情報は、ユーザーの行動を分析しなければ把握することができません。
Google Analyticsではセッションベースのデータしか読み取ることができないため、限界があります。

4.具体的になにができるのか?

では、実際に画面をご覧いただきましょう。
この画面は、Amplitudeのデモとして用意された仮想の音楽アプリ「AmpliTunes」です。
早速、Amplitudeで「AmpliTunes」を分析していきましょう。

4-1.ファネル分析

まず、ファネル分析に移りましょう。
これは、どんな分析ツールにも備わっている基本的な機能ですね。
「+ イベント」を使って、ファネルのフローにステップを簡単に追加できます。

ファネルフローについて

さらに、セグメントも簡単に追加できます。
ここでは、以下の2つのセグメントを作成してみました。

● Favorite Songs or Videoイベントを30日以内に0回実行したユーザー
● Favorite Songs or Videoイベントを30日以内に1回以上実行したユーザー

セグメントについて

このファネルの目的は非常にシンプルです。

● ファネル
1. Any Active Eventで何かひとつでもイベントを発火した
2. User SignUpイベントで会員登録をした
3. Purchase Song or Videoイベントで曲かビデオを購入した

ユーザーセグメント
1. Favorite Songs or Videoイベントを30日以内に0回実行したユーザー
2. Favorite Songs or Videoイベントを30日以内に1回以上実行したユーザー

上記のファネル分析は、「ファネルのステップを達成した2つのユーザーセグメント」を見ることで、たった2分で完成しました。

その結果、2つのユーザーセグメントのファネル分析のコンバージョンが瞬時に表示されました。

緑のバーは「Favorite Song or Video >=1」であり、したがって「曲またはビデオを1回以上お気に入りしたユーザー」の方がCVRが高いことが分析されました。

コンバージョン分析について

90日間のスパンで変更すると、コンバージョンに大きな影響を与えるのは「少なくとも1回曲またはビデオをお気に入りしたユーザー」であり、それらのユーザーは曲やビデオを購入する可能性が高いことを示しています。

90日に変更した場合のコンバージョン分析について

この時点で、お気に入り機能をどのように利用してもらえるかということが、曲の購入と相関関係がありそうな仮説が立ちます。

2分でここまで分析することが可能です。

Amplitudeでは、このような分析を数分でダッシュボードとして表示することができます。

4-2.コホート抽出

では、なぜ曲やビデオを少なくとも1回お気に入りしたユーザーが購入につながったのでしょうか?その要因は何でしょうか?
Amplitudeでは、さらにユーザーをコホート抽出することが可能です。

このファネルのステップを最後まで達成したユーザーのバーをクリックすると、コホートの作成オプションが表示されます。
つまり、ファネルのステップを最後まで達成したユーザーだけを抽出してコホートにすることができます。

そして、このコホートを再度ファネル分析やコンパス分析などにかけることで、迅速かつ容易にユーザーのペルソナを深堀りして分析することができます。

ファネル達成ユーザーをコホート抽出する方法について

Google Analyticsでは、このようにコホートを再抽出して分析にかけることは容易ではありません。
また、BigQueryを使用する場合は、ファネルのステップが増えた場合や日数が変わった場合、視覚的な結果を素早く確認したい場合などに、SQLを再度書き直す必要があります。
これにより、ダッシュボードへの反映作業も必要になります。
これらの点を考慮すると、Amplitudeの分析スピードと利便性の高さが理解していただけると思います。

4-3.コンパス分析

では、先程再抽出したコホートを使って、今度はコンパス分析に取り組みましょう。
コンパス分析は、目標コホートとの相関関係がある統計的に有意な指標を導き出してくれます。

この分析により、新規ユーザーが曲やビデオを購入するまでの相関関係が明らかになりました。
購入時やダウンロードイベントとの相関関係は当然高いため、除外します。ここでは、以下の3つのイベントに注目したいと考えています。

● Play from Recommendation
● Edit Profile
● Share Song or Video

レコメンドされた曲やビデオを5〜7日目に再生したかどうかが、購入と最も高い相関関係を持つイベントとして特定されました。
先程のファネル分析を含めても、ここまでの分析には3分しかかっていません。

再抽出したコホートをコンパス分析する方法について

レコメンドされた曲やビデオを5〜7日目にどのように再生してもらえるかが、購入につながる近道であるという仮説が導き出されました。

では、どのように再生を促すかを実行し、その後に分析を繰り返します。このような仮説の導出スピードと、ダッシュボードの作成を必要としない利便性があります。
また、SQLのスキルや専門的な統計知識が必要なく、仮説の検証まで行えるようになりました。

Amplitudeを活用したデータドリブンなアプローチの進め方によって、そのインパクトをよく理解していただけたかと思います。

Amplitudeから出ている以下のドキュメントは、分析においてどのような観点で分析していくべきかが記載されていますので、是非参考にしてください。

リテンション向上の虎の巻

5.マーケターやCSやPdMが使う意義

無料で利用できるGoogle Analyticsを、多くの方々が活用していることでしょう。
Amplitudeにはデータの民主化という利点が大きくあります。

Google Analyticsでは、データウェアハウスとしてBigQueryを使用し、Google Analyticsのイベントデータや購買データなど、様々なデータを集約する必要があります。
これらのデータを分析する際には、SQLをスキルとして要求されます。

SQLのスキルがない場合はどうでしょうか?

データアナリストに要件を伝え、データを抽出して分析結果を得るには、少なくとも1週間はかかることが一般的です。
日々の施策の結果がユーザーにどのように影響を与えているのか、また、影響を与えていない場合は何が原因なのか、これらを誰もが瞬時に導き出せる能力がなければ、日次や週次での改善施策は見込めません。

データアナリストに分析を依頼するためにかかる時間や人件費を考慮すると、Amplitudeは非常にコストパフォーマンスが高いと言えます。

もし私がこの2年間でデータアナリストに分析を依頼し、ダッシュボードを作成してもらっていた場合、数千万円以上の費用がかかったでしょう。

5-1.マーケターが活用する意味

マーケターの立場では、広告によるCPAの最適化が求められます。
広告がユーザーの行動にどのような影響を与え、CPAにどのように反映されるかを最適化する必要があります。

5-2.CSが活用する意味

CSの立場では、CRM施策やお問い合わせによるユーザーの行動がどのように影響するのかを分析することが求められます。
コミュニケーションの頻度や施策の内容が、LTVやチャーンにどのように影響するのかを分析することができます。

5-3.PdMが活用する意味

PdMの立場では、LTVやチャーンに対してどのような行動が影響を与えるのかを分析する必要があります。
LTVやチャーンの改善を目指すためには、ロイヤルユーザーを増やすためのコホート分析により相関関係を特定する必要があります。
さらに、それに基づいて事業の優先度を決定し、どのユーザーを重視すれば事業が成長していくのかを把握する必要があります。

Amplitudeは、確かに事業に追随できるツールとなっています。

6.使いこなせるのか?

そうは言っても、投資を検討する際には、結局はAmplitudeを十分に活用できるかどうかを判断する必要があります。

6-1.データであなたの企業のどんな課題を解決したいのか?

あなたの会社の課題はどのようなものでしょうか?

● データをうまく活用できない
● データを活用するのに膨大な時間がかかる
● データはあるのに誰もデータを見ていない

こういった課題が頻繁に指摘されます。
間違いなく、Amplitudeはこれらの問題を解決してくれるツールです。

6-2.データと売上

また、重要な点として、Amplitudeのようなツールを導入したからと言って、売上が必ずしも上がるわけではないということにも注意が必要です。

あなたが現在見ているスプレッドシートやRedashで作成されたダッシュボードやGoogle Analyticsを眺めているだけでは、単に売上が上がらないことと同じです。

スプレッドシートやダッシュボードを全員が閲覧しているでしょうか?
全員がデータドリブンな方法で仕事に取り組んでいるでしょうか?

何よりも重要なのは、組織全体がデータドリブンのアプローチを採用し、共通のデータを共有し、データに基づいて課題を特定し、仮説を立て、意思決定して進んでいくことです。

そのためのツールであり、データ分析です。

ギャンブルや株投資とは違い、ツールを導入しただけでは自動的に利益が生まれるわけではないことは自明でしょう。

6-3.データと事業優先度

売上だけでなく、適切なリソースの投下を行うことが重要です。
適切なリソースを投入することにより、試行錯誤の回数が増え、成功率が向上し、結果として売上が増加するという構図があります。

データに基づいた意思決定を行うことは、人の勘だけでは成功が保証されないことを示しています。
一部の試みはうまくいくかもしれませんが、全てにおいて100%の成功は望めません。
そのため、データ分析が重要です。
それによって、リソースを投入する価値があるのかどうか、また、企業の成長に寄与する可能性があるのかを判断するのです。

7.まとめ

SQLやPython、ビッグデータ、データ分析など、これらを組織内で専門的に扱うデータエンジニアを雇用し、組織を構築していくことは困難な道のりです。

大企業であれば、それに対処することは比較的容易かもしれません。
また、中小企業の場合、データの活用レベルは非常に低いと言えます。
しかし、そうした企業がAmplitudeというツールを導入し、データ分析を取り入れることで、成長の可能性を高めることができます。
迷わずに、Amplitudeを導入しましょう。

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