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にしかなこがあらわれた

ここ数日『まにまに』というエッセイ集を読んでいる。書いたのは、西加奈子さん。すすめてくれたのは、うちでアルバイトをしてくれているチャン・ワタシ(普段は本名にさん付けで呼んでいるが、この名はなんだか呼び捨てがしっくりくる)。

このエッセイがまあ、めちゃくちゃおもしろい。日常を観察するちょっとだけ意地の悪い視点と、それをユーモラスかつリズミカルに文章に落とす確かな筆力。そして、くさしても包む博愛。「女子トイレで顔を、かっ、くわっ! としながら化粧を直す女性への共感」、「雑誌の『1ヶ月コーデ』への皮肉」とかとかとか。そりゃみんな好きになるわけだ。

思えば西さんのことをすすめられたのは一度や二度ではない。最初は7年ほど前だろうか。行きつけだった三軒茶屋の徳島料理屋で、当時よく相手をしてもらっていた小学館の先輩編集さんに「今年のおれのベストは『漁港の肉子ちゃん』! 西加奈子さんはとんでもない作家だ!」と激推しされ、そのままTSUTAYAに行って買った。一度も開かなかった。

次は、同い年の友人だった。彼は偶然の巡り合わせで西加奈子さんと酒の席で一緒になった。誰とは言わないが、そこには西さんと同じ世代の、西さんより有名な作家があとお二人いらしたそうだ。みんな抜群に話がおもしろかったが、その中でも頭一つ抜けていたのが西さんということだった。他人の「おもしろさ」に厳しい彼が珍しく手放しで激賞していたので今度は『サラバ!』を買ってみた。部厚い。一度も開かなかった。

そして今回である。なぜ『まにまに』だけ読む気になったのか。理由はあんまりはっきりしない。アルバイトの猛プッシュ、「エッセイ」というかたちのとっつきやすさ、「クイックジャパン」の西加奈子特集立ち読み。どれも理由。複合的なものだ。

これを書いている今も、横においている『まにまに』に早く戻りたくて仕方のない自分がいる。こうなってくると小説にも興味が湧くが、2018年は小説を一切読まないと決めているので、読むとしたら来年になってしまう。この勢いで、誓いを破ってしまわないか不安だ。

まずはこの手元の『まにまに』、土日に大事に読もうと思います。

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