マガジンのカバー画像

今井雄紀のnote

171
運営しているクリエイター

2018年7月の記事一覧

角度のフェス、フジロック

7年ぶりにフジロックに行ってきた。あいかわず行くまでがめんどくさかった。 遠いし疲れるし暑いしと思うと、どんどん気持ちが萎えていく。変わりやすい苗場の天気予報を見て、テンションはさらに下がる。今年はYouTube中継があると直前に発表されて、そっちにしたらよかったと後悔もした。 でもその鬱々とした気持ちは、現地に向かう途中で簡単に霧散する。 金曜日、新幹線に乗り込んで発車と同時に忌野清志郎の『田舎へ行こう!』を再生したその瞬間に感情のグラフの縦軸が反転。「NAEBA」と

フジロックは別格

7年ぶりにフジロックに来ました。 何してもそんなにテンションのあがる人間ではないのですが、どうやらフジロックは別なんだと気づきました。 駐車場を抜けて、だんだん音が大きくなるのを聴くと、もう駆け出したくなるくらいにたのしくなってしまいます。 また何度でも来れるように、お金の意味でもスケジュールの意味でも、仕事を頑張ろうと思えました。 会場真ん前のマンションが、10万円で買える(分譲)と聴いて、ちょっと心がゆらいでいます。

noteを1ヶ月、(平日)毎日書いたら何が起こるか

古賀さんにこう書いてもらってnoteを書き始めてから、1ヶ月が経った。 今日みたいに明け方更新になったり、寝落ちしてしまって翌朝更新になった日もあるけど、とりあえず1ヶ月継続できてよかった、とは思う。 書くのもだいぶ楽になった。毎日noteチャレンジに挫折した過去に比べると、「役に立つものを」「読んで得するものを」「一人でも多くの人に読まれるものを」という気持ちがあんまりないので、気楽だ。 これは、あるとき古賀さんに言ってもらった、「主語を自分の会社にしたくなる気持ちも

訪問販売のおっさんと、カメラ売り場のお兄さん

滋賀県の田舎に住んでいた小学生のころ、訪問販売のおじさんが、何度かうちを訪ねてきた。島田紳助がCMをしていたとある教材の営業マンだったそのおじさん。年齢は、40代半ばぐらいだったろうか。オールバックでメガネをかけ、張り付いた笑顔が売りで言葉巧み。 ぼくはこのおじさんがとにかく嫌いだった。軽蔑していたと言ってもいい。 母親に教材の有効性を説明したあときまって「では、息子さんに聞いてみましょう」と言って母親にぼくを呼ばせ、どんなにぼくが「いらない」と言っても帰らず、「

ものづくりの螺旋

『カメラを止めるな!』のことが、連日各所で話題にあがっている。かくいうぼくも、noteでこの映画にふれるのは3度目だ。 本作で長編デビューした監督の上田慎一郎さんのTwitter。自身の監督作がRHYMESTER宇多丸さんの映画評論ラジオ「ムービーウォッチメン」に取り上げられた日、世に投げられたこの投稿が本当にかっこよかった。 そんな上田さんが一昨日、ついに宇多丸さんの番組に生出演。その様子がまた、前後含めて本当にかっこよかったので紹介したい。 ラジオでは、これまでのキ

mixi日記を読むと、死にたくなったあとホッとする。

大学生の頃からだから、もう12年以上も主語が「ぼく」の文章を書いてきた。無論、ときどきによって頻度は異なる。今みたいに毎日書いている時期もあったし、1年に数回しか書かなかったこともある。 目的もさまざまだ。 近況報告や何かのレビューめいたものはもちろん、ちょっといやらしい自慢のような気持ちで自分に起こった「かなりいいこと」について書いたこともあった。世界中に向けて書いているふりをしつつも、はっきりと「あなた」を思い浮かべて書いたこともある。 頻度も内容もとても誇れたもん

『カメラを止めるな!』と『羅生門』の木曜日

恥ずかしい話からはじまる自伝は信用できる。 戦前の軍事病院での、映画雑誌を前にしたとある若者同士の会話。 「これがシナリオ……映画のシナリオというものですか」「そうです」「あまりにも簡単なので、ちょっと吃驚(びっくり)したけど……実に簡単なものですね」 小柄な男が妙な顔をした。「この程度なら自分でも書けるような気がする」 ベッドの上で胡座を組んでいる小柄な男の顔に微笑が浮かんだ。「いやいや、そんな簡単には書けませんよ」「いや、この程度なら、自分のほうがうまく書ける。こ

ワーク・ライフ・バランスより、ホーム・オフィス・バランス。

老後。夢とまでは言わないが、仕事をしなくなって、たっぷり時間ができたらたらやりたいと思っていることがひとつある。明治神宮球場のシーズンシートを毎年買いたい。そして、「いつもあの席にいるおじいさん」になりたい。 たぶん50年後とかになるので、いま活躍している選手は指導者としても残っていないだろう。現在大活躍中の山田哲人選手が「レジェンド」として始球式なんかしちゃってるかもしれない。それを微笑ましく見ながら、馴染みの売り子からいつもより一杯多めにビールを買ったりする……。 健

絶対に予告を見ちゃいけない映画

『カメラを止めるな!』という映画の評判がめちゃくちゃいい。超低予算で撮影された映画であること、有名な俳優が出ているわけではないこと、キャッチコピーを見るに何かしらのサプライズが用意されているらしいこと、ぐらいしか情報がないが、見た人誰もが「とにかく何も情報を入れてないうちに観にいけ」と言う。こういうとき、先輩(もう見た人)の言うことを聞いておいて損はないので、できるだけ早く見にいこうと思う。 下調べをしない方が面白い映画というのは確かに存在する。 『セブン』なんかがその代

連休明けバタバタする人は歯医者通いも疎か

仕事ができる人というのはどんな人か。いろんな尺度・特徴があるとは思うが、その必要条件のひとつに「緊急度が低くて大事なこと」をちゃんとやれる人というのがあると思う。だから、ちゃんと歯医者に行く人は仕事ができるし、夏休みの宿題を計画的にやって8/31にのんびりしてる小学生はその素養がある。 ここに、新たなパターンを加えたい。 「連休明けの火曜日を、普段通り過ごせる人は仕事ができる」 連休前の金曜の夜はのんびりしたものだ。色んな人がやさしい。「金夜と言いましたが、火曜日の朝ま

万引きして茶をしばき三途の川をわたり、ソロでとんかつ

起きる。晴れ。洗濯ふたまわし。ゴミ出し。食器洗い。 昼過ぎの回。TOHO渋谷で『万引き家族』を観る。冒頭1分ぐらい遅刻してしまう。映画もライブも芝居も導入が大事だと思ってるので痛恨。こういうとき、映画が自由席の時代は次の回の冒頭だけ観たりしたもんだけど、いまはそれもかなわない。映画は評判通り面白かった。特に縁側で花火を見るシーン、よかった。 今朝、吉田豪さんの本を読んで、「樹木希林にインタビューに行ったら、『あなた、本人より本人に詳しいプロインタビューアーなんでしょ? 早

暑さがつらい。

じりじりなのかむんむんと言うべきか。 とにかく、オフィスが暑い。キーボードを打っているだけで汗が出る。たまらず窓を開けたら蚊が入ってきた。2分の間室内で格闘するも、見失う。げんなりして机に戻る。 うちの事務所はシェアオフィスの中にある。バスケットのハーフコートぐらいのサイズのスペースに小さな「小屋」が5つあり、それぞれを各入居者が占有スペースとして使用している。 小屋には鍵もかかるし、打ち合わせの際は共有スペースにある、がんばれば15人でも囲めそうなおおきなテーブルを思

「生きてるうちに来い!」

世の中には、カバーをのぞいて、もう演奏されようのない曲というのがある。演者が亡くなっていたり、バンドが解散していたり、なんらかの理由でその曲が封印されていたりするからだ。 うれしいことにぼくは32年の人生のなかで、「もう聴けない曲」をいくつか生で聴き、目撃してきた。 ・忌野清志郎『雨あがりの夜空に』、『JUMP』 ・OASIS『Don't Look Back in Anger』 ・THE HIGH-LOWS『千年メダル』 ・SAKEROCK『SAYONARA』 そもそも

のれんに引かれた黒い線

神保町に「丸香」という讃岐うどん屋がある。このあたりに住んでいる人、このあたりで働いている人で知らない人はいない、超人気店だ。 毎日11時にオープンする丸香だが、うどん玉がなくなるとその時点で閉店となる。なので、夕方行くときなんかは不安でいっぱい。もう頭は完全にうどんで、歯はあの適度なコシを、舌はあのさっぱりしたダシを感じる気満々であるにもかかわらず、ありつけない可能性を残しているからだ。 道中、遠目に白い布が風にゆれるのを見ると、安堵する。開店中は「う・ど・ん」と大きく