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【私のストーリー】安全基地を探して

ずっと求めていた。

どんな時にも愛してくれて、受け止めてくれる場所を。失敗しても戻って来れる安全な避難場所を。もう一歩踏み出すエネルギーがチャージされるまで優しく癒してくれる場所を。そして、次の挑戦への後押しをしてくれる場所を。

そんな場所を、「安全基地」というらしい。

多くの人にとって、いちばんの安全基地は家族だ。そして、人生を通して、友人、先生、恋人など新たな安全基地を作っていくという。

今の私は、キラキラしているように見えるかもしれない。だけど、何かがずっと足りない。心にぽっかりと、大きな穴が空いている。

私には安全基地がなかった。ずっと、ずっと——。 

欠けたパズルのピースを探しては、失敗してきた。

ー ー ー 

私の家庭は裕福じゃない。故郷にいた頃、道端の焼き芋の屋台、マクドナルドが私にとっての贅沢だった。期末試験で満点が取れたら、たった一つだけハンバーガーをご褒美にもらった。小学校2年生の誕生日には、誕生日プレゼントに大好きな本を2冊買ってもらった。何もなかったけど、幸せだった。

8歳で両親の元を離れてから、私は小さなプリンセスから、みすぼらしい「何か」になった。着る服も、食べるものもなかったのは、程度は違えど以前と同じだった。

違ったのは、どこにも「愛」がなかったこと。私は常に目の上のタンコブだった。いらいらの吐口だった。

家と呼べる場所がなかった。「家」と呼んでいたものは、私にとって苦痛の場所でしかなかった。そこに帰れば、いつも怒鳴られる、私の存在を否定される。音を立てちゃいけない場所、息ができない場所だった。学校でどんなに苦しい思いをしても、この「家」にいるよりはマシだった。

そんなわけで、私は全ての辛さ、悲しみ、痛みを心の中に抱えるしかなかった。話を聞いてくれる人も、相談に乗ってくれる人もいない世界で、たった1人で生きなくてはならなかった。

「この世に、私を愛してくれる人はいるんだろうか。生きてほしいと思う人なんているんだろうか」とまで思うようになった。

逃げ込んだ先の図書館で、浴びるほど本を読んだ。物語に集中している時だけ、辛い現実を忘れられた。日本語がわかるようになり、自分を偽れるようになり、頭のいい「恵子ちゃん」になった。

必死に這いつくばって、必死に上へよじ登っていった。

ー ー ー 

 私には安全基地がなかった。ずっと、ずっとー。

そう思っていた。

「ユウチェンの安全基地って何?」そう問いかけられるまでは。

どんなに辛くても、私は歯を食いしばって耐えてきた。時間はかかったけど、どんな困難も乗り越えてきた。その経験が、どんなに苦しいことも私には乗り越えられる、という自信につながった。その自信が、私の挑戦を後押ししてくれる。

ずっとなかったと思っていた安全基地、それは私自身だった。私自身の経験が、強さが、私の挑戦の基盤だった。

人は、新たな安全基地を作りながら生きてゆくらしい。

いつか、私の心にぽっかり空いた穴は埋まるだろうか。

何も頼れないこの世界で、今日も、不完全なままで生きている。

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