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『0時08分』

 「各駅停車、高尾山口行き最終電車です。ドアが閉まります、お荷物とお身体を強くお引きください」
 「なんだかんだ、タカハシさんは結局いい人ではあるんですよ、でも、なんて言うんですかね、言葉を選ばないんだとしたら、」
 「ユウタってさぁ、二日後とかに返事してくんだよ?なんなのってなるよねぇ」
 「いや、あいつは公務員目指すって言ってたよ」
 「その件のコンセンサスと具体的なコントラクトは任せるから」
 嫉妬と優越、倦怠と旺盛、正と負。
 様々な言葉と感情は眼が眩むほどの色彩に溢れ、モザイクとなって鉄の箱を支配する。そして、人間の排泄を繰り返すことで次第に透明を取り戻してゆく。
 大抵の車内は朝方は灰色、昼下がりは橙色、夕方以降は藍色に染まっているのだが、なぜだか終電だけは決まって雑色を譲らないのだ。