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CHI2018で気になった研究まとめ vol.1

突然ですが、CHIで個人的に気になったものをまとめてみました。

1.経緯
メーカーさんや研究所との仕事をする中で、意外とHCIジャンルの研究話になることが多く、サーベイする機会もあるのでシェアしようと思ったのがきっかけです。アイデアのタネとしても最高の素材なので、公開してみます。

2.そもそもCHIって?
CHIはThe ACM CHI Conference on Human Factors in Computing Systemsが正式名称で、人間とコンピュータのインタラクション(HCI)に関する分野のトップカンファレンスのひとつです。SIGGRAPH、UIST、CHIの3つの会議はHCI、CS周りなどの研究者がこぞって目指す学会です。SIGGRAPHはコンピュータグラフィクス、UISTはユーザインタフェース、CHIはわりとなんでもありだけど、ケーススタディをしっかりする、社会実験的な側面があるみたいな緩やかな住み分けがあって、コンピュータは基本的にヒトに使われるものなのでHCIジャンルがダブっているみたいなイメージです。

3.気になった研究紹介
初回なので今回はビデオがあって見てて楽しいものを中心に。CHIの特色は伝わりにくいかもと思いつつ、クオリティ高いものが多く見てて楽しいと思います。CHI2018の試みをフックに自分の頭のなかにあって思い出したものもちょこちょこ挟んで紹介していきます。

Showcasing Printed Paper Actuator:A Low-cost Reversible Actuation and Sensing Method for Shape Changing Interfaces

導電性と熱可塑性を持つPLAを紙へ出力して、紙をアクチュエーター化する試み。「4Dプリンティング」の流れも汲んだものだと想像できます。シミュレーター、モデルの雛形がセットになった統合開発環境みたいになっていて完成度が素晴らしい。Rhinocerosのプラグイン実装になっているとのこと。導電性なので、タッチセンシングやスライダーなどセンサとしても使える。雛形を組み合わせたアプリケーションの紹介が後半に多くされています。かわいい。

こちらはさきほど4Dプリンティングの代表的な事例。他にもCHIで下記のようなものが報告されていました。

ペーパーアクチュエーション研究で、今回のCHI以外にも僕が覚えているものだと下記のようなものがあって非常に面白い分野だと思います。

紙とのインタラクションという意味だと、類似の試みとして、下記の試みも美しかったなと記憶しています。

iTurk: Turning Passive Haptics into Active Haptics by Making Users Reconfigure Props in Virtual Reality

ヒューマンアクチュエーションで面白いなと思ったものです。ユーザーを使ってユーザーのVR体験をリッチにしようという試み。実空間/VR空間でのユーザーの能動的なアクションが、実空間での受動的なオブジェクトに動きを与えて、VR空間での体験がリッチになるよというもの。

ヒューマンアクチュエーションの研究は、ある体験をつくるときにマシンを使って解決するよりヒトの筋肉のほうがまだコスト低い、という考え方が根幹にあるような気がしています。

この研究チームの試みは毎回面白くて、目にするたびに楽しい気持ちになる。たとえば下記のようなもの。VRはVR空間の中の人だけが楽しい、という問題をVR空間の中の人と実空間の人が協調することでお互いが楽しい体験をつくれるという報告です。

VR空間の中の人と外の人の協調話でコンテンツに落ちてるものとしては、アニュビスの仮面があります。売り切れてしまったVRボードゲームで僕も手に入れられなかったので、機会があったらやってみたいものです。

LumiWatch: On-Arm Projected Graphics and Touch Input

SF等で見られる皮膚にプロジェクションするタイプの入出力デバイスを、必要な計算、電力、投影、タッチセンシング等の機能を備えつつ、完全に独立して動作する形で実装したものとのこと。もし売るなら$600くらいとのことなので、価格面では現実的な気がします。一方で、排熱や指での操作時に影になってしまう、投射角についてなどなど今回の実装におけるリミテーションが議論されています。

この研究の一部でも扱われている皮膚表面を入力装置にしようとする試みもいくつか紹介します。フォトリフレクタを用いたローコストだけどスマートな実装で感動したことを覚えています。

フォトリフレクタといえば、ついでにかわいい研究も。

Identifying Everyday Objects with a Smartphone Knock

ノックをしたときの音、ジャイロ、加速度を機械学習してアプリケーションの入力にしちゃおうという研究。何らかのアクションをするフックをノック一発で済ませられるのはすごく便利。IFTTT的にユースケースで紹介されている勉強するときに音楽を消す、みたいなアクションはリアリティがあるように思います。

上記と同様に音声入力をトリガーに個体管理したり、アクションのフックにしようという試みはとして下記のものがあります。Chris Harrisonさんの研究は僕の専門とは違うのですが、好きでよく拝見していました。

最後は日本でも話題になっていた2つのものをご紹介。

Programmable Droplets for Interaction

こちらは今年のBest Video Showcaseとなった試み。この研究のベースは、electrowetting-on-dielectric(液滴駆動)という技術。電子インクを使った電子ペーパーの基本原理のひとつとしても有名です。水はヒトにとって不可欠で、情報媒体として汎用性を持ちうるので、アートや情報提示装置などたくさんのシナリオにのせつつ、水を制御可能なものにしたという試みとのことです。Best Video Showcaseらしく映像かっこいい。

エレクトロウェッティング関連のお話だとこちらの映像もかっこよかったことを思い出しました。

Project Zanzibar: A Portable and Flexible Tangible Interaction Platform

今年のベストペーパーのひとつ。NFCと静電容量センサの組み合わせでID識別、位置判定等の機能を携帯性を考慮して、丸めたりできるフレキシブルな構造になっている。Bluetooth経由での他のデバイスとの連携、SDKが用意されている、I/Oタグのハードウェア的な拡張が可能などもはやできないことないんじゃないかくらい完成度が高い。I/Oタグは、パワーハーベスティング機能も持っていてDC10mA程度は提供できるとのことで、バッテリーレスでちょっとしたものは駆動できそう。

マイクロソフトリサーチの研究なので、こちらのウェブサイトで詳細な解説が見られます。論文にはNFCと静電容量センサの併存のための努力が細かく書かれていて勉強になりました。

4.まとめ
つらつらとCHI2018を一部研究をフックに思い出したことを書いてきましたが、長くなってしまったので今回は一旦ここまで。映像もキレイでわかりやすく、論文も議論やプロセスが丁寧に書かれていて勉強になります。CHIには社会実験的な側面をもつ研究も多くあるので、次回またまとめます。次回リアクションもらえたらきっと早めに記事になるはずです(笑)

改めて見ると関連して紹介した事例が結構古くて勉強不足も感じました。定期的に自分のために記録してゆきますのでよろしくお願いします。

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