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脱炭素化に効くのは送電インフラ整備_米国でも

凄まじい分断を経験して、米国ではバイデン政権が発足することが確定しました。前政権との違いの一つが、再生可能エネルギー投資へのインセンティブ拡充に見られるエネルギー分野への注力です。今回は、米国のエネルギー関連記事を読み解いて、日米それぞれで加速するエネルギー領域での投融資の拡大について確認します。


脱炭素に向けて効率的なのは分散型電源より送電インフラ整備?

米国 GreentechMediaの記事「電力グリッドの脱炭素、低コストでの実現のカギは送電にあり」(MIT Study: Transmission Is Key to a Low-Cost, Decarbonized US Grid)によれば、「米国においては送電網を拡充させることが脱炭素化のために効果的」とのMITの調査結果が示しています。

地域間送電網拡充のメリットは、

1.天候に左右されて需要を支えきれないことがあるという再生可能エネルギー電源の弱点を克服可能。
2.風力発電や太陽光発電に適した地域での電源開発に注力することで、より効率的に電力を生み出す。 

モデルを用いた下記の試算から、各州において独自に分散型の再生可能エネルギー電源を増やすことよりも、送電網の拡充のほうが経済的な効果があることが示されました。

火力発電などに頼る現行システムから100%脱炭素を目指す場合、現在の地域間送電網のままではは3倍近い1MWhあたり90ドルのコストがかかると試算される。連携が適切にされていない州単位の送電のままであれば、さらに高い1MWhあたり135ドルの費用が見込まれる。地域間送電網がさらに整備されれば、1MWhコストは80ドルにまで抑えられる。

これにより、100%脱炭素化のために必須と言われてきた、長期間の蓄電技術、原子力発電、グリーン水素などの脱炭素のための代替燃料などの検討の必要性が低くなると指摘しています。


地域間送電網の複線化の議論

国内でも、菅総理が所信表明演説で2050年までに温室効果ガス排出量ゼロを表明するなど、政府としてもエネルギー領域に注力していく姿勢を国内外に見せています。その実現の一つとして、資源エネルギー庁では送配電網複線化の計画を検討しています。

一方、送電網の整備には綿密な計画と莫大な費用がかかります。再生可能エネルギーを増やしても系統接続させなければ供給につながらないので、空容量問題を克服するためにノンファーム型接続など系統接続の検討も必要です。再生可能エネルギーを系統接続できても、変動要素の多いを系統に載せて安定して電力を供給するためには擬似慣性力についても議論がなされる必要があります。


参考

電力ネットワークの次世代化 2020年8月31日 資源エネルギー庁
米国に於ける「ISO/RTO」について 2014年3月22日 クリーンエネルギー研究所
慣性機能をどう確保するか。これが再エネ導入拡大のポイントだ 2020年3月13日 電気新聞

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