見出し画像

新聞やテレビ報道が、決して嘘をついてはいけない理由2

前記事


で、嘘をつく個人記者に主に焦点を当て、虚偽報道は会社の信用失墜行為であり厳正に対処すべきであるという話をしました。そこでは書かなかったより重大な問題があります。それは、虚偽報道に大きなペナルティがなければ、メディア全体が腐ってしまうという問題です。これは、悪貨が良貨を駆逐するのに似ています。

虚偽報道を放置すれば、真面目な報道をしようとするほど損をし、正直者は必ず馬鹿を見ることになっていきます。

虚偽報道は金になる

虚偽報道は確実にお金を儲けることができ、しかも歯止めが利きません。

場合によりますが、特に経済活動において嘘は真実に勝てます。この勝利は短期的なものですが、会社や社会に被害を与えるには十分に長い間利益を得られます。

具体的な話をしましょう。東京の全国放送をもつ大型テレビ局A社とB社を想定します。一般的に主要局は、15秒CMで40~80万円を得られるとされています。そしてドラマ、ニュース等でCMの頻度は変わりますし、視聴率が上がれば相場も上がります。単純計算で視聴率が倍になればCM効果も倍ですから、安定した高い視聴率を持つニュース番組に挟まれたCM枠は、160万円、320万円もありうるということです(交渉や契約次第でしょうが)。

少なく見積もっても、30分のニュース番組には3回ほどCMが入りますし、CMに入れば5つくらいのCMはあります。となるとA社B社ともに80万円×3×5=1200万円をCM放映料として得られるでしょう。

さて、ここでA社のニュース番組がなりふり構わずに虚偽の「不倫報道」「政治家の発言」「ワクチン情報(デマ)」あるいは「被疑者時点での実名報道(実は冤罪)」などを行い、B社の視聴率を半減しつつ自身は視聴率を1.5倍に増やしたとしましょう。

そうなると、その時間帯のニュース番組の収入は
A社:1200万円→1800万円
B社:1200万円→600万円
となります。A社は、嘘をつくことで他者に被害を与えつつ、対等であったB社に2倍もの収入の差をつけることができます。この600万円の儲けは、単純な収入ではなく競合他社に対するダメージなので、A社にしてみれば一石二鳥です。

もちろん、一回の嘘で数百万円の損害が即出るとは言いません。しかし、ニュースで虚偽報道があったとき、番組は何をするでしょうか?虚偽の記事を作成した記者は名前も出ず、まったく責任がないはずのアナウンサーが、後日同じ番組で謝罪して終了です。痛いのはアナウンサーだけで、責任を問われるべき組織も人間も誰も責任を取りませんし、お金も使わなくてすみます。つまり、虚偽報道は実質タダでお金を儲ける手段です。

真面目にやってきたB社には、現状は二つしか選択肢がありません。真面目に報道を続けて損を増やし、産業的に負ける。あるいは、自身も虚偽報道で対抗し、信念を捨てる。B社を果たして責められるでしょうか。嘘つきが勝つ世の中なんですから、法規制がないうちはどうしようもないわけです。

管理職ほど虚偽報道を止める動機はない

メディア各社が虚偽報道で失うのは将来的な信用ですが、これも厄介な問題です。現行の報道方針を決める管理職たちは、定年まで儲かっていれば良いでしょう。将来的な信用負債は今の若者たちが管理職になったときや将来入社してくる人間たちに支払わせれば良いのです。彼らには実質的にはペナルティがありません。

つまり、メディア上層部は虚偽報道などどうでもよく、儲かればいいわけです。責任を負うのは現場ですが、彼らに報道の方向性に関する決定権はありません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?