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東京五輪、1964と2021の違い

2つの東京五輪を結びつける象徴のひとつとして復活を期待されていたのが、1964年の東京五輪で話題となったブルーインパルスによる五色スモークによる五輪マークでした。

Screenshot 2021-08-04 at 15-43-42 ブルーインパルス 五輪 1964 - Google 検索

しかし悲しいことに演出は失敗。検索しても直線に飛ぶブルーインパルスの写真ばかり。

Screenshot 2021-08-04 at 15-44-43 TOKYO2020 ブルーインパルス カラースモーク 五輪 - Google 検索

どこが失敗したかといえば、単純にスモークが消えたからです。航空自衛隊はすごく良い飛行をしていたそうなので、原因は気象などの外的要因と考えられます。本記事では、原因として考えられる部分を主に気象面から考えていきます。

基本データ

考察の前に、わかっていることをまとめます。

・カラースモークは、飛行機雲ではない(水滴ではなく油滴)
・カラースモークは、オイルをスプレー状にして、エンジンで加熱したもの(要はてんぷら油の過熱時に出る白煙と同じ) 
・1964年のカラースモークは、染料が後で市街地に降ってきたので廃止になった
・2021年のカラースモークは、染料が降ってこないようになんらかの改良があった
・スモークは、上空3000メートルに直径1800メートルで描いた(1964)

具体的にはどういう失敗か

ブルーインパルスは、直径1800mの円を描くため、約5654mを10秒以上かけて飛行しました。その間スモークは出ていたのですがスモークは数秒もたずに消えていったのです。目撃者の証言によれば、円飛行はできていたらしいので本当にもったいない話です。

原因となりそうな違い

開会式はそれぞれ、1964年10月10日と2021年7月23日です。10月といえばもう秋。1964年のオリンピックは大変過ごしやすい気温の中で開催されました。一方で、テレビスポンサーが多大な影響力を発揮するようになった2021年のオリンピックは、スポーツ中継の閑散期である7月~8月に開催されました。

1964年と2021年の東京における最高気温を、開会式の日付に合わせてグラフ化しました。

ツイッター用ネタ画像_横_五輪開会式気象

折れ線の青色が1964年、オレンジが2021年です。棒グラフは降水量を表しています。

これを見ると、開会式の約2週間前から気温に大きな乖離が起きています。2021年のオリンピックでは開会式に向けて急激に気温が上昇しており、1964年に比べて15℃近くも高温です。

加えて、1964年10月9日には降水があった一方で、2021年には2週間以上雨が降っておらず、大気は乾燥していたと思われます。

もうひとつ推測できるデータがあります。高度3000mの湿度は推測が難しいですが、気温は高度が100m上がるごとに約0.6℃下がることは良く知られており、ほぼ例外はありません。開会式当日の最高気温を記録した時間の気温はそれぞれ

1964年 → 地上20.9℃、上空2.9℃
2021年 → 地上34℃、   上空16℃

です。2021年は高度3000mであってもかなり暖かかったとわかります。冬に息が白くなるのは、息の中の水蒸気が水滴に変わるからです(よく勘違いされますが、水蒸気は目に見えません。沸騰したヤカンから噴出した白い湯気は細かい水滴です)。気温が低いと空気中に存在できる水蒸気量が減り、人間の体内にでは水蒸気でいられた水分が、寒い外気に触れて水滴(湯気)になってしまったものが白い息です。

これは基本的に油でも一緒です。油滴の種類によっても違いますので、代わりに水を目安として計算します。水蒸気がどれだけ存在しやすいかという指標には飽和水蒸気量

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A3%BD%E5%92%8C%E6%B0%B4%E8%92%B8%E6%B0%97%E9%87%8F

というものがあり、これは単純に温度によってきまります。

2.9℃の場合、 5.92 [g/m^3]・・・1㎥あたり5.9gの水が存在できる
16℃の場合、13.65[g/m^3]・・・1㎥あたり13.6gの水が存在できる

です。つまり、2021年の五輪開会式では、約2倍の水蒸気が存在できる条件でした。言い換えると、湯気は約2倍、水蒸気になって消えやすい条件ということです。

加えて、上空に湿度が少なければより水蒸気として消えやすくなります。同じことが、ブルーインパルスのスモークにも言えると思います。

対策は2つ考えられる

もしも対策をとるなら、2つ考えられます。一つ目は、揮発しにくいオイルを使うこと。あるいは、添加物で揮発温度を上げること。二つ目は、気温の低い時間帯を狙うか、気温の低い日にやること。いずれにしても、上空温度は重要なので事前にデータを取っておいたほうがいいと思います。

ちなみに、近年は大気中のCO2の増加により、大気中の赤外線再放射能力が高まってります。太陽光線が強い時期は一気に気温が上昇してしかも高温が維持される一方、太陽光線が弱くなるとまったく温まらない気象の極端化が起こっています。今後はよりこの極端傾向が高まると考えられるので、しっかり熱中症予防しましょう。比較すると1964年五輪は天国ですね。

ツイッター用ネタ画像_五輪最高気温の違い

個人的には、オリンピックは春か秋にすべきだと思いますが、資本って強いですね。

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