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野球拳おどりと松山まつりの商標登録

野球拳おどり」が松山市と商工会議所によって商標出願され、めでたく登録と相成ったようです。

野球拳おどり

踊りの商標は意外と珍しく、踊り を含む商標は全部で79、ほとんどは区分30の食品類、他には酒類、おもちゃの名前です。そのうち、阿波おどりビクス、喜久香会∞四つ竹健康おどり、新潟総踊り、東西おどり、おの恋おどり、備前阿波おどり、深川おどり、関の鯛つり唄・おどり保存会、京おどり、金沢おどり、野球拳おどりの12種類の商標のみ、祭りや踊りそのものの名称として登録されています。

野球拳おどり

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2020-119011/2B7FF61EE521CFB35F6623655451E06DCEAD1C4E3534026CCAD04FA45679B440/40/ja

ちなみに、これにより何が規制され、何が規制されないかというと、

野球拳おどりを表記したイベント類は軒並み規制されます。特に破廉恥なやつはできませんよ。松山市から訴えられます。
一方、野球拳おどりを表記したお菓子とかお土産品は問題ありません。区分が違うからです。

さて、他に関連していくつか面白い話題をば。

却下された「松山まつり」

実は同時に出願されていた「松山まつり」は商標が却下されています。
第3条第1項第3号及び第4条第1項第16号による却下(拒絶)です。
第3条第1項第3号は、簡単に言うと普通名称のみの場合、あるいはごく一般的な形状は商標として認めない、というものです。また、誰でも思いつく一般名詞すぎる単語を説明的にくっつけただけの商標は「記述的商標」といい、一般に登録は認められません。例えば、「大型テレビ」は一般名詞を説明的にくっつけただけであり、日常会話でも普通に使われます。こんなものを商標にされたらたまったもんじゃないので、特許庁に必ず拒絶されます。第4条第1項第16号は、第3条第1項第3号で自動的にくっついてくる問題です。

松山まつり

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2020-119010/AF772652AB606BBCFD80ECD6706D83EB5C4A71ACDD1FCECB521336033E36A93E/40/ja


要は、松山まつりは、「松山で行われる祭り」以上の意味がなく、識別性もない。そして、松山まつりは、松山「産地」とまつり「提供の方法」「品質」のみの複合名称であり、そうでないという反論ができなければ難しいですね。

そもそも、第3条第1項第3号の拒絶理由は回避困難で有名なので、相当ひねらないと審査官の心象を変えることは困難です。例えば「まつり」を祀りにするなど特殊な意味を持たせ、かつ、それが普通名称でないと主張できればワンチャンはあります。また、文字列としての商標は諦め、デザインや装飾文字としての商標(いわゆるロゴ商標)登録を狙う方法はありますが、恐らくは松山市の意図とは違うのでしょう。また、ロゴは一部改変や色変えなどで回避されやすく、裁判も面倒で長期化しやすい傾向にあります。よほど価値の高い商品のロゴとして登録するのでなければお金の無駄です。


実は「野球拳」は登録済み

ニュースを見たときから気になっていたんですが、「野球拳おどり」じゃなくて「野球拳」では?
調べてみたら、野球拳は2011年に既に登録済みです。

野球拳と野球拳おどり

野球拳。区分30(菓子及びパン,アイスクリーム,氷菓)

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2011-017632/416188E4ACFBE6963992AA36D7B6C7CA2CF8F48CB1D575B7E84081B30486CCC2/40/ja

何のために・・・?と思って調べたら、野球拳アイスなるものがあり、どうも確率1/3で当たりが出るため、野球拳の要領で勝ち続ければ食べ続けられるアイス、というコンセプト?のようです。なかなか面白いですね。

野球拳の権利者の方は気をつけて!!

なお、山下大介氏が権利者になっていますが、彼のお知り合いの方、余計なお世話かもしれませんが、一応聞いてみて差し上げて欲しいことが一点ございます。それは、この商標は令和3(2021)年 11月 11日をもって消失する予定であることをご存知かということです。もしただ単に忘れているだけなら期限が近いです。一応、失効後も半年間は倍額支払えば回復できますが、半年すぎると再出願です。

商業的に使用されている実績もあるし、ネットで検索すれば出るくらいの知名度もあるので、類似品が出ても、商標なしでも不正競争防止法で争えば勝てそうではありますが。

ちなみに、商標は10年単位で何度でも延長できるので、更新を忘れなければ永年維持可能です。また、絶対に持っていないといけないわけでもありません。類似品は不正競争防止法で争えます。ただし、商標権を持っている場合より手間がかかり、大変です。

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