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硫黄は20kg以上所持したら違法(になる可能性が高い)という話


硫黄は、農業において「うどんこ病などの殺菌」「土壌pH調整(酸性化)」「肥料」として使われます。
肥料用途はあまり知られていないかもしれませんが、ブルーベリー栽培などでは、土壌のpHを下げる(酸性化させる)目的で、少量を根元に散布するという需要があります。

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実は、ある事件で犯人が硫黄44kgを所有していたことが逮捕理由になっていたのでびっくりしたんですよ。「硫黄って所持が違法なの?」って。慌てて調べてみたところ、意外と身近な法律違反になりうることがわかったので、注意喚起も兼ねてまとめときます。

結果から書くと、自治体によって異なりますが、たいていの場合は硫黄を20kg以上所持・保管する場合、防火等の処置がなされていないと条例違反となります。

他に農業資材として引っ掛かりそうなのは硝酸アンモニウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム、生石灰ですが、それぞれ自治体によっても取締りが違う可能性があるので、もしも心配なら地元消防署に電話して聞きましょう。

消防法上は100kg以上が違法

まず、一番まずい違反から。消防法では、危険物として6種類を指定しています。

第1類:酸化性固体、第2類:可燃性固体、第3類:自然発火性物質及び禁水性物質、第4類:引火性液体、第5類:自己反応性物質、第6類:酸化性液体があります。

硫黄は第二類の可燃性個体に該当します。

硫黄の属性はこんな感じです。
危険物の第2類:可燃性固体
発火・引火しやすく、燃焼速度が速い
指定数量・・硫黄 100kg

指定数量とは、消防法で危険とみなす量の最低量と考えてください。つまり、100kgを超えると消防署は警戒対象と考えます。消防法第10条第1項では、指定数量以上の危険物の貯蔵、取扱いについて、基準を満たした貯蔵所以外の場所での貯蔵、製造所、貯蔵所、取扱所以外の場所での取扱いは禁止されています。よって、100kg以上の硫黄を納屋などに放置すればその時点でアウトです。

さて、ここから落とし穴ですが、99kgならいいのかというとそうはいきません。この上にさらに、自治体ごとの条例でもう少し細かい規定があります。一般的には、指定数量の5分の1、硫黄の場合は100kgの5分の1で20kgがもうひとつの基準です。

ここでは東京都の条例を引用しますが、自治体ごとに異なりますので、もしも大量に保持する場合は所轄の消防署に問い合わせるのが無難です。なお、隣同士であっても管轄が違うと条例が異なるので、必ず保管場所の属する消防署に問い合わせましょう。

東京都の条例

条例の例 東京都火災予防条例
指定数量未満の危険物の貯蔵及び取扱いの基準は、市町村条例でこれを定める。(法第9条の4)
少量危険物(指定数量の5分の1以上、指定数量未満の危険物)の貯蔵及び取扱いの基準(都条例第31条)

第30条法第9条の3の規定に基づき危険物の規制に関する政令で定める数量(以下「指定数量」という。)未満の危険物を貯蔵し、又は取り扱う場合は、次に掲げる事項を遵守しなければならない。
一 危険物を貯蔵し、又は取り扱う場合は、防火上安全な場所で行うこと。
二 危険物を貯蔵し、又は取り扱う場所においては、火気を使用しないこと。ただし、やむを得ず火気を使用する場合は、通風若しくは換気を行い、又は区画を設ける等火災予防上安全な措置を講ずること。
三 危険物の容器は、当該危険物の性質に応じた安全な材質のものとし、かつ、容易に破損し、又は栓等が離脱しないものであること。
四 危険物を収納した容器を貯蔵する場合は、地震動等による災害の発生を防止するため、次に掲げる方法により行うこと。
イ戸棚、棚等は、容易に傾斜し、転倒し、又は落下しないよう固定すること。
ロ容器の転倒、転落又は破損を防止するため、有効な柵、滑り止め等を設けること。
ハ他の物品が容易に落下するおそれのない場所に貯蔵する
ニ接触又は混合により発火するおそれのある危険物又は物品は、相互に接近して置かないこと。
五 危険物を収納した容器を貯蔵し、又は取り扱う場合は、みだりに転倒させ、落下させ、衝撃を加え、又は引きずる等粗暴な行為をしないこと。
六 危険物を貯蔵し、又は取り扱う場合は、当該危険物が漏れ、あふれ、又は飛散しないよう必要な措置を講ずること。
七 危険物を貯蔵し、又は取り扱う場合は、その性質に応じて、発火の原因となる他の危険物若しくは物品との接近、接触若しくは混合又は過熱、衝撃若しくは摩擦等を避けること。
七の二 前号の規定は、危険物を貯蔵し、又は取り扱うに当たって、同号の規定によらないことが通常である場合においては、適用しない。この場合において、当該貯蔵又は取扱については、災害の発生を防止するため十分な措置を講ずること。
八 危険物又は危険物のくず、かす等を廃棄する場合は、下水、河川等に投棄することなく、その性質に応じ、焼却、中和又は希釈する等他に危害又は損害を及ぼすおそれのない安全な方法により処理すること。
九 危険物を貯蔵し、又は取り扱う場所においては、常に、整理及び清掃に努めること。
十 危険物を販売のため、貯蔵し、又は取り扱う場合は、自動販売機を用いないこと。ただし、第4類の危険物のうち引火点が130度以上の危険物を100度未満の温度で貯蔵し、又は取り扱う場合は、この限りでない。


まとめ

自治体ごとに違いますが、多分、20kg以上の硫黄を無防備に保持することは条例違反になる可能性が高いです。これ以外に、硝酸アンモニウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム、生石灰も大量だと危ないので気をつけましょう。

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