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決済の業界・ドメイン理解ために「決済サービスとキャッシュレス社会の本質」を読んでみた。

今回は決済の業界・ドメイン理解をしたく、「決済サービスとキャッシュレス社会の本質」を読んでみた。

期待すること
・クレジットカードのスキーム
・日本のキャッシュレスと他国の比較
・日本の電子マネー
・新たな決済サービスの動向(中国)※出版が2020年なので注意

いきなり全部を読んで理解するのは難しいため、まずは上記を中心に知るために読んで、本noteにまとめました。

1. クレジットカードの基礎知識

クレジットカードの基礎知識:5者のステークホルダー

  • 「ユーザー」

    • カードを利用する人

  • 「カード発行会社(イシュアー)」

    • ユーザーにカードを発行

  • 「加盟店」

    • ユーザーが買い物して決済するお店

  • 「加盟店契約会社(アクワイアラー)」

    • 加盟店と契約して決済手段を提供する

  • 「ブランド会社」

    • イシュアーとアクワイアラーを結びつける決済スキームの管理者

ブランド会社の例

国際規格のエコシステム

国際規格をベースにブランド間で仕様を標準化し、世界共用を図っている。
ブランド会社は、イシュアーとアクワイアラーの間でデータを取得しているネットワーク会社で、データに基づいた概算を行う。またデータの仕様やカードの仕様を国際規格に則って決め、世界中の金融機関がその仕様に合わせてカードを発行することで、世界中で使えるようになっている。


2. 日本のキャッシュレスと他国の比較

わかりやすい指標からいくと、日本のキャッシュレス決済比率は20%(2016年時点)で、他国でいうと韓国が96.4%、イギリスが68.6%、中国が65.8%で、大きく比率が小さいことがわかります。その上で、日本は2027年までに4割程度を目指すとのこと。

ではなぜこのような数値になっているのか。提供者視点と使い手視点で書籍で紹介されている。

提供者視点では、日本において、クレジットカードはカード会社、デビットカードは銀行、プリペイドカードは各種事業者がそれぞれ独自のシステムやインフラを構築し、非効率なサービスを提供してしまっているとのこと。

使い手視点では、結論からいうとキャッシュレス対応の効果が見えず、あまり検討したことがないことが多いと書かれている。

経済産業省の発表では、加盟店のキャッシュレスの導入の阻害要因として、「加盟店手数料の高さ」「端末導入費用の高さ」2点が挙げられていたが、実は「端末代が高い」「手数料が高い」と答えた回答者の6割以上「実はあまり検討したことがない」と答えている。またアンケートの記述欄では、「面倒さ」「煩雑さ」の声が多く、手数料代は主因ではなく、面倒さが主因だと書籍では考察している。


3. 日本の電子マネー

電子マネーの普及の事例

日本では、1997年から電子マネーの実証実験が開始。その後EdyとSuicaが国内で非接触IC化を促進した。

例えばEdyは「おさいふカード」と名付けて、小銭を数える必要がなくて便利ですと訴求したり、割引額を増やしたりして、特にスーパーマーケット業界に電子マネーを普及させた。

一方の加盟店側も「電子マネーを導入すれば売上単価が上がる」とうたい、コンビニエンスストアや高速道路のサービスエリアでも使えるように加盟店獲得を広げた。

日本の電子マネーにおける課題について

標準化を揃えていった国際ブランドと違って、各社が独自の決済サービスを展開したことで課題が発生。

国際ブランド決済は、ブランドや支払い方法の垣根を超えてISO/IEC7816に準拠したのに対し、Felicaを海外の金融機関に展開するのが難しい。ゆえに国内だけでの展開にとどまってしまう。

4. 新たな決済サービスの動向

すみません。出版時期からして新しい情報が少なかったため、アリペイやウィチャットペイの普及をまとめます。

アリペイやウィチャットペイ

マーケットプレイス型は鶏卵問題なので、明確に分けるのが難しいと思うが、ユーザー視点と加盟店視点で紹介する。

ユーザー視点の普及の要因

まずユーザー視点では、結論からいうと「特典・クーポン」と「サービスと決済が連携して自動支払などのシームレスなユーザー体験」が大きいと本書では考察している。

クーポンの例でいうと、5割引という大胆な割引や「独身の日」という割引キャンペーンを行った。これに影響して加盟店側も店が負担しなくても割引してくれ売上が上がるため増加した。

シームレスなユーザー体験の例でいうと、アリペイでは、アカウントの資金に高い利息がつく資産運用サービスを展開して運用益を得られたり、ディディタクシーではアリペイで自動で支払ってくれるため降車時に精算する煩わしさがない。中国ではこのようにサービス利用と決済が連携することで、シームレスなユーザー体験を提供している。

加盟店視点の普及の要因

次に加盟店視点でいうと「高価な端末をなくしたQRコード対応」「偽札問題や強盗などのリスクを抑えた手段」として普及を加速させたと紹介されている。

日本では端末代が高いというアンケート回答があったが、中国では高価な端末をなくし、店にQRコードを貼るだけで対応できるようにしている。私も体験したことがあるが、客が自らQR読み取って支払うため、店の店員側で何か操作方法を覚える必要がない

また中国ではATMの中に2割が偽札が入っていると言われるほど偽札が出回っている問題や現金を目当てにした強盗のリスクも回避できることから、キャッシュレスの普及が広まったとされている。

サマリー

<なぜ日本は遅れを取っているか>
大きくは標準化、各社が足並みを揃えなかったことが課題。個人的なバイアスとしては、日本企業は企業の垣根を超えて、市場のために最適化すること・システム開発の意識が弱い気がした。金融業界だけではなく。

<逆に海外では進んでいるか>
特典というアップサイドは日本と同様にありつつ、偽札問題や強盗などリスクを抑える方にも効果がある国固有の状況もあると学びがあった。

以下の本は、他にももう少しシステム的な話や歴史的な側面があったため、その辺もまとめてみたいと考えています。


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