見出し画像

地獄狐の設定とプチ小説

※2023/02/26にFANBOXで公開した記事の移行版です。
創作種族「地獄狐」の設定とそれにまつわるプチ小説の記事です。


地獄狐

プロフィール

【種族名】地獄狐
【好き】人間、地獄、お祭り
【嫌い】特にない
【知能】低い
【趣味】人を地獄に招くこと、お祭り、遊ぶこと

【性格】
人間に友好的で楽しいことが好きだが、全体的に知能は低い。

【特徴】
大半は黒髪か白髪をしている。目はハイライトが無い赤色かオレンジ色。頬などに血を付けていることが多い。
狐耳が付いた女性の姿で、和服を着ている。

プロンプト例
((red eyes)), ((long hair)), (((yandere))), dark persona, (((crazy smile))), (rape face), (((crazy eyes))), (((blood))), ((rape eyes)), ((fox girl)), ((fox tail)), ((fox ears)), ((loli)), ((black clothes)), ((Fox eyes)), kimono, ((fantasy girl)), (((((asia))))), (((((geisya))))), (detailed petals), over view, breaking down, night, ink splashing, (((japanese))), detailed river, torii, (((cluster amaryllis))), japanese cemetery, (((hell))), red moon light, flower garden, blood stained, blood cheek, red moon, ((corpse)),
※地獄の情景付きです。これにblack hairかwhite hairを足してください


住んでいる場所・世界

地獄
人間が生きていける環境ではなく、100日もすれば死に至る。

地獄の景色1
地獄の景色2
地獄の景色3


設定

地獄にのみ生息している狐。
動物というよりは妖怪の類であり、女性(メス)の容姿をした個体しか存在しない。
人間の女性に狐の耳と尻尾が生えた容姿をしており、見た目とは裏腹に人間のことが大好きで一緒に遊びたくて仕方がない。
しかし、人間のことも自分たちが暮らす地獄のことも好きなあまり、人間も地獄に住めばいいのにと考えており、むしろ人間が地獄に住まない理由がわからないため、ありがた迷惑で人間を地獄に連れてきたりする。いわゆる神隠しを行う。
地獄狐は力の強い存在ではないため、無理やり連れて行くことはできず、
出来ることは呼びかけのみで、その呼びかけに無意識的に応じてしまうと地獄に連れていかれてしまう。
死期が近い人間ほど魂があの世に寄っているため、彼女たちの声が聞こえやすい。
また、深夜2時が最もあの世とこの世の境界が曖昧になる時間なので、そこでも声が聞こえやすくなる。

彼女たちは知能がかなり低いため、人間にとって地獄が命を脅かされる危険な場所であるということを理解しておらず、連れて来た人間がその後死に至ったとしても、それは「急に動かなくなった」だけであり、死という概念を理解していない。
地獄は本来すでに死んだ者たちが集う場所であり、地獄に命ある者が存在していること自体がイレギュラーケースなため、自分たちを含め、死ぬことがある存在が身近にいないため仕方がないとも言える。
知能が高い個体も存在しているが、知能が高くなると同時に人間に無関心になる傾向があり、まともな会話をしてくれることはあっても地獄から助け出してくれたりはしない。地獄に落とされた人間が助かる術はないのだ。

結果的に、地獄狐は人間にとっては人々を地獄に引きずり込む恐るべき妖怪であり、向けられる好意とは裏腹にとてもではないが仲良くできる存在ではない。


物語 『何をもって地獄とする?』

薄暗い箱の中、車両内の蛍光灯が照らす窓に自分の姿が映った。
ガタンゴトンと小刻みに揺れつつ、電車は地下を走っていた。
「はぁ...また終電だ...」
頭の中で湧いてきた感情が思わず口から零れ出た。
田舎には夢がない。何をやっても平凡な人生で終わってしまう。
そんなのは嫌だ。
と、特に深く考えもせずに都会に出ていけるような就活をした。
そうして夢にまで見た都会での生活は————舞い上がる羽根が生えそろう間もなく地に堕ちた。

残業は当たり前で毎日のように終電に乗って帰る日々・・。
終電を逃すときさえある。何のために生きているのかもわからないままに半年が経過していた。
「疲れたな...」
身体はとっくに限界を迎えていた。
それでも無情にも明日は来る。
・・・もう日付は回っていたが。

コツコツと自分の靴がアスファルトの床を踏みしめる。
当然のように自分の足跡がそこに残ることは無い。
私はここで自分が居たという痕跡を一体どれだけ残せているだろうか。
そんなことをぼんやり考えながら駅を出て数分歩いていた私は、今の自宅にたどり着いた。

実家から一人で出てきているので当たり前だが、寂れたアパートでの一人暮らしだ。
安い給料で都会近くに住もうと思えば場所はさほど選べなかった。
最初こそ気になったものだが、ここがほとんど "ただ寝るだけの場所" だということに気づいてからはどうでもよくなった。
睡眠時間は常に足りていないが、それでもどこか自分がちゃんと生を謳歌していると、文化的な暮らしをしているんだと言い訳するかのように毎日お風呂と晩御飯、そしてソシャゲのデイリークエストだけはこなしていた。
最も、このソシャゲもアップデートで追加された要素に手を付ける間も無くなって久しいが・・。

それらの "日課" を終わらせるとようやく諦めたように布団に潜り込む。
どこかカビ臭かった。布団を最後に干したのはいつだったか・・。
今週末は干してみるか・・そんなことを先々週も考えていた気がする。

布団に入る前に見た時計が指していた時間は1時53分だった。
今日も4時間も眠れそうにないなとため息をついた。だが、ボロボロな身体は早く寝るという点においては何者よりも優秀だった。

————しかし、今夜はなぜか目が冴えていた。
一度自分が簡単には眠れないのだとわかるとイラつきを感じた。
ただでさえ睡眠が足りていないのに早く眠れと自分の身体を叱責する。
(先ほどまでゲームをしていた自分のことは考えない)
だが、どちらかといえば常に眠りそうな身体を無理やり動かしているに近い状態なのだから、まぶたを閉じていれば自然と眠りにつくだろうと冷静になる。
次に目を開くのは目覚ましの音を聞いた時だ・・と。

「...お.....よ...」

(ん・・?なんだか聞こえたような・・)

「...こっち....おい..よ....」

聞こえた。
何かが聞こえた。それも、耳を通してではない。
脳内に直接入って来たかのような・・。
何がどうなっているのかと目を開けようとしたとき、脳内に情景が浮かび上がった。

なんだこれは・・?
日本のどこかだろうか・・?
だが、どこか非現実的で・・何よりも、身体が、心の底が何か警鐘のようなものを鳴らすように震え、鼓動の音がうるさかった。

そしてたまらず目を開けたとき



「こっちにおいでよ」



深夜2:00。丑の刻参りを指す時計のデジタル表示を網膜に焼き付けたのを最後に、意識が暗転するのを感じた。




「いらっしゃい...」

目が覚めたとき、目の前には今まで見たこともないような美しい女性がいた。
非現実的で、まるで造り物めいた幻想的な女性を前に、私の胸はこれでもかというほどに高鳴って・・・。

—————違う。

気づいた時、急激に頭の中が冷えて行った。
目の前の女性の笑顔に暖かさは微塵も無い、どこまでも冷たくておぞましかった。
この鼓動は身体の発している危険信号だ。
脳はまだ状況を把握しきれていないが、その笑顔を見て身体はすぐに理解したのだ。

ここは生きている者が居ていい場所ではないと・・。

そして、彼女の頬に付いている赤いものが化粧の類ではなく血痕であるということを理解した瞬間、半ば反射的に身体が動いていた。

「うわああああああああぁぁぁぁっ!!」

自分でも驚くほどの声量で叫び声をあげると、無様に後ろを振り向いて走り出した。
叫ぶのなんていつぶりだろうか、全力で走るのなんていつぶりだろうか。
いや、少し前に寝坊で通勤電車を逃しそうになった時には走ったか、などとこういう時に限って無駄なことを考えていた。
しかし、少しでも今は日常的なことを考えていなければ狂ってしまいそうだった。
ここが自分の寝室ではないことは考えるまでもなく理解できた。
そもそも、今自分が踏みしめている大地・・そう、大地だ。
都会に出て来てこのかた、足が踏みしめていたのはいつも堅いコンクリートかアスファルトであり、舗装されていない地面など生活圏の中にはほぼ無かった。
その時点でここが自分の居た周辺環境ではないことは明らかだったが、
時代劇のセットを思わせるような古風な灯りや古ぼけた建物、人類の手が及んでいない未開拓を思わせる森、どれもが今となっては現実ではありえないもの・・。

「ははっ、馬鹿げてる・・!」

脳裏によぎった "異世界転生" という単語に思わず失笑する。そんなことが現実で起こりえるはずがない。だが、自分が今非常事態に巻き込まれているという前提で動くべきだろうと結論付けた。
「はぁ・・はぁ・・・」
息が上がる。久しぶりに全力疾走するとは言えど、一般的な身体能力はあった自分がここまでなまっているものだろうか。恐怖ででたらめに走っていたからか、それともこの自然なままの地面が体力を奪っているのか・・とても息苦しかった。
先ほどの "何か" は追ってきているだろうか・・。

後ろを振り返ると———————何もいなかった。

逃げ切れたのだろうか。
走っていた足の歩調を緩め、深呼吸を繰り返す。
確かめるように地面を踏みしめて歩く。
一歩歩くたびに靴がシャクシャクと土を踏みならしていく。

少なくとも都会のように空気が汚れる環境には思えないが、空気が美味しいとまでは思わなかった。
むしろ、どこか鼻につくような・・。

「あら、人間さん。そんなに急いでどないしたの?」

思わず飛び上がった。
声のほうに顔を向けると、着物姿の女性がいた。
(どうするべき?また逃げる?でも日本語だった。会話が出来る・・。)
脳内に様々な感情と行動案が浮かんでは消えていく。
だが、自分は今何も知らない。とりあえず不意打ちで襲ってこないのなら、向こうに敵意はないのだろうと判断して、コミュニケーションを取ることにした。

「気づいたらここにいて・・ここがどこだかわからないんです。教えてもらえますか・・?」
「あぁ、ここは地獄やねぇ。」

言われた意味がわからなかった。
地獄・・? 地獄というのはあの、天国と地獄の地獄だろうか・・?
だが、どこかすっと胸の内に落ちた気もした。
確かにここが地獄と言われればなるほど、確かにイメージ通りな光景だ。
相手が会話の出来る存在だとわかったことで冷静になって相手の姿をよく見ると、明らかに人ではない。
狐のような耳と尻尾が付いている。自分もゲームの中でよく目にした狐娘という存在に近いだろう。だがやはり、普通に会話出来ていることが違和感だと思うぐらいに冷たく、おぞましい目をしている。
それに、ここが地獄だとすればいわゆる餓鬼や鬼のような人間を害する存在たちがいるのではないだろうか。
それが彼女だとすれば・・・。
そう頭の中で考えている間に、彼女は思い出したかのように口を開いた。

「まぁ急ぐ理由もわかるよ? 人間さんはここじゃ100日もすれば動かなくなってまうからなぁ...」
「えっ・・」

動かなくなる・・?意味が分からない。それはつまり————

「死ぬ・・ってことですか?」
「あぁ...そう言うんやったっけ? そうやね。死ぬってことや。」
それを聞いて絶句した。100日・・?三ヵ月とは長いようで短い。
少なくともまだ数十年は生きれたであろう自分からすれば唐突に余命三ヵ月を言い渡されるのはとても容認できるものではない。
「ど、どうすれば助かるんですか・・!?」
「さぁ...ウチは知らんねぇ。
 街のほうに行けばなんか知っとる子もおるかもしれんけど」
「街・・それはどこに・・!?」
「あっち」

彼女が指を指したほうを見ると、確かに遠くに街の灯りのようなものがおぼろげに見える。今この場で無為な時間を過ごしている場合ではない。
「あ、ありがとうございます!」
私はお礼の言葉を述べると急かされるようにまた走り出した。



「...ごゆっくり......」
振り返った時に見た彼女の笑みは、やはりどこか恐ろしかった。


ある程度走ったところで体力が尽き、普通に歩きだした。
先ほどは居ても立っても居られなくなり走り出したが、冷静に考えると直前までがむしゃらに走り続けていたのだった。
どれほど歩いただろうか、少しずつ灯りの数も増えて来て、どことなく街はずれのような印象を抱くようになってきたあたりで、三人目(三匹目?)の狐娘と出会った。


「あ、人間さんだ! 珍しいね!」
「は、初めまして・・」

左頬に派手に血痕を付けている少女だ。
この血痕と冷たい目さえ無視して見ればとても快活で人懐っこい女の子だ。
1、2人目が美しいと感じる大人の女性だったのに対し、この子は可愛いが先に来る感じで、声をかけられてすぐに隣にまで走り寄ってきた。
まぁ、全員に共通して真っ先に来る感情は恐怖なんだが・・。

「君はこの・・街?に住んでいるの?」
「うんっ!そうだよ? 人間さんは何か用事があってここに来たの?」
「うん・・。 元の世界に帰る方法を知っている人がいないかなって探してるんだ」
「元の世界に帰る・・・?」

少女はとても不思議そうな顔をした。
この子は恐らくこの世界で生まれてこの子にとってはこの世界が全てのはずだ。
元の世界などと言われても理解できないのも無理はない。
どう言ったものか・・。そうだ。
「君はこの街で物知りな人に心当たりはないかな?」
「あっ! 知ってるよ!案内してあげるね!」

そうして、血頬の少女と街を歩いては様々な狐娘と話を聞いて回った。
紹介された狐娘は確かに皆普通に会話が出来た。
しかし、誰一人としてこの地獄から帰る手段を知っている者はいなかった。

「はぁ・・・」
思わずため息が零れる。
「に、人間さん! そんなに凹まないで? 私もあなたで人間さんに会うのは13人目ぐらいだけど、ここから帰れたって人間さんは見たことないよ?」
「・・はぁ・・・」
この子は励まそうとしているのか追い打ちをかけてきているのかどっちなんだ・・。

「あ、えぇーっと・・でも!」


「帰れないなら、せっかくだしここを楽しんじゃおうよ!」
「はは、こっちは命がかかっているんだけどな・・」

・・相変わらず笑顔が怖い。
でも、なんだかそれも悪くないか・・という気がしてきた。
思えば地獄に来てから、ため息をついたのはさっきが初めてだ。
私は元の世界では毎日、数時間置きにため息が愚痴のどちらかは付いていた。
日々に絶望し、世界が変わることを願い、それでいて何も行動できていなかった。
だが、ここに来てからは違う。
森を走っていた時も、街をまわっていた時もそうだ。


この世界は美しい——————


吊り橋効果のようなものもあるんだろうと思う。
それでも、この世界は幻想的で、綺麗で、それでいておぞましい。
その世界に魅入られた。
なるほど・・地獄に堕ちるわけだ・・・。

私はとっくの昔に元の世界のことを諦めていて、
あの時布団の中で見せられた情景に、焦がれてしまったんだ・・。

「そうだね・・そうするよ! ありがとうね」
そう言って少女の頭をなでると、彼女はえへへと嬉しそうに目を細めた。
この子たちだってそうだ。
一見恐ろしく見える存在だが、瞳や表情の怖さにさえ慣れればその実振舞いや言葉からは友好的なものを感じるし、どことなく可愛い。
最期にこんな子たちと過ごすのも悪くない・・。

べちゃぁ

・・撫でていたら血痕が手についた。


それからというもの、私は地獄の各地を回って彼女たちと交流を深めた。
彼女たちは各々に名前というものを持っていないらしい。
名付けてあげるととても喜んでいた。
また、彼女たちは見た目とは裏腹に楽しいことが大好きで、街では毎日のようにお祭り騒ぎで遊んでいた。飲み食いするものは一体どこから来ているのか・・不思議で仕方がない。

また、彼女たちにとって血痕は化粧の一種らしい。
なので、好き好んで付けている子がいるのと、
所々に血の池があるので、そこで血を飲んでいる間に全身が血まみれになるということもあるようだ。
お祭りでは酒を飲んでいることが多い彼女たちだが、もっぱら飲み水としては血の池の血を好んで飲むらしい。一度誘われて試しに飲んでみたが、明らかに人の生き血だったためすぐに吐いた。


そうやって地獄の至る所を歩いて...

歩いて...

歩いて...

歩いて...!

気づけば二ヵ月半ほどの時間を過ごしていた。
だが、満ち足りていた。
この二ヵ月半はまさしく誰にだって自慢できる旅であり、冒険だった。
まだ幼かった自分が抱いていた憧れ・・
都会では掴めなかった物をここで掴み取ることが出来た。
あぁ、確かにここの地域名は地獄なのだろう。
だが、私からしてみればあの半年を過ごした破滅への繰り返しこそ————

「あら、人間さん。こんなところに来るなんて珍しい...」
「あぁ、他の子からこの先は人間は厳しい場所だと聞いた。でも "最期" にこの先にあるものを見てみたい。」
「なるほど...ではこれを持っておいたほうが良いですよ。多少ですがマシになるはずなので」
「ありがとう。」

私が今から向かおうとしている場所は地獄の深部だ。
この先がそうであることに間違いない。
今しがた会話をした彼女・・ここしばらくの経験則上わかるが、かなりまともな会話が出来ていた。彼女たちの中でもどちらかといえば上位に位置する個体だ。
もらったものを確認する。
狐のお面のように見えるが・・サイズが小さいので、お守りの一種なのだろう。
私は地獄で人が100日もすれば死ぬのは空気の問題だと感じている。
この世界の空気はどこか息苦しさを感じる・・言わば、瘴気のようなものなのだろうと思う。この場所は、それをより一層強く感じる。
とすれば、このお守りは瘴気を吸って多少なり空気を清浄なものにしてくれる効果があるのだろうか・・。

何はともあれ、正直なことを言うと私はもう満足してしまっていた。
今はある意味死に場所を求めているような・・どうせなら最期にしか行けない場所がどうなっているのか見てみようぐらいの気軽さで訪れている。
この先に何もなくても、道半ばで倒れようとも構わない。
私は散歩するかのような気楽さで死地へと踏み入って行った。


そして、見つけた。
壊れ、朽ち、その原型をほぼ留めていないながらも、どこか厳かな雰囲気を漂わせている社と、その前に佇む少女————


「人間がこんな地獄の深部にまで来るのはいつぶりじゃろうな・・?」

一見するとただの少女だ。
でも私にはわかる。今まで出会った彼女たちの中で、最も上位の存在であることが。
この場の空気ももはや息苦しいというものではない。
火災現場にいるかのようだった。呼吸をするたびに肺が痛い。
この場所が地獄の空気を生み出している源流とさえ感じられた。
あるいは目の前の少女からか・・。

「初めまして、私は——」
「よいよい。そなたのことはずっと見ておった。ここの誰よりも知っておるわ。ここに来た理由はなんだ?死のふちで元の世界にやはり帰りたくなったのか?」
「な・・帰れるんですか!?」
驚愕した。もうこの世界から帰る手段は無いものと思って行動していたからだ。
もしも帰れるのだとしたら、私は——

「うむ。私がその気になれば人の子1人ぐらいを元の世に帰すなど容易い。そなたは面白い人間だったからの。ここで必死に頼み込めば」
「必要ありません。」

断言した。当たり前だ。
そんな生半可な気持ちでこの場に立っていない。
私は最後まで帰る可能性を探してこの世界を歩き回っていたわけではない。
ただただ、この世界の全てを知りたかった。
最期の最後で帰れるという可能性を見つけたのはただの偶然で、そんなものに興味はない。
様々な作品で、満ち足りた人生を送ったキャラクターが、死のふちで言い放つ最後の言葉が 満足だ。思い残すことは無い だった時、そんなことがあるものかと鼻で笑っていた。
人の欲望に際限など無い。得られるものならばどこまでも得ようとするし、
今得ているもので満足することなどありえないと思っていた。

だが————あったんだ。

「私はこの世界で "生" を得ました。あの場所に・・ "地獄" に戻るつもりはありません。それとも、あなたは私を苦しめるために私を "地獄" に堕としますか?」
「......カカッ」
「アッハッハッハッハッ!!」
「そなたは面白い人間だったと言ったが訂正しよう。そちは人間失格だ。
 ......だが...はぁ、惜しいな...時間だ」

「ごふっゴホッ」

口から血が零れ落ちた。気づけばいつの間にか鼻や目からも血が出ていたらしい。
どうやら時間が来たようだ。

「最期に言い残す言葉はあるか?わらわが特別に聞き届けよう」
「私をこの世界に連れて来てくれた子に・・ありがとうと伝えてください」
「...よかろう。」
「それと・・良ければあなたに名前を付けたい」
「・・はぁ? 名前?何のために・・」
「私が付けたいと思ったんです。今まで、仲良く話せた子たちには皆名前をあげてたんです。」
「確かにしていたの・・わかった。好きにしろ」
「では・・あなたの名前はククリです。」
「ククリ・・か。よかろう。わらわは今日からククリだ。」

名だけ告げると、私は激しく吐血し、地面に倒れた。
もう目も機能していないらしい。何も見えなかった。

「地獄で死のうが現世で死のうがその先は変わらぬ。そちは事故死あるいは老衰したに近しい。何か罪を重ねているわけでもない故、普通にしておれば輪廻転生に戻れよう」
「ではな..."同胞"よ...」


その言葉を最期に、私の人生は幕を下ろした—————




地面を踏みしめる。
一歩歩くたびに草履がシャクシャクと土を踏みならしていく。
このあたりはどうにも肌寒い。
自分の尻尾を毛布替わりに抱きしめる。
寒さはあるけど、代わりにここはとても空気が美味しい。
それなのに他の子はあまり近づこうとはしないけど、私はこの先に用があるのだから仕方がないよね。
えいさ、ほいさとちょこちょこ歩いていく。
途中で黒髪が綺麗なお姉さんに出会ったけど、軽く会釈だけして通り過ぎる。
変わらずあの狐のお面を持ってた。ちゃんと取って行ってくれたんだ。
鳥居をくぐり、奥へ奥へと進んでいく。

そして先にあったのは変わらない廃墟のような立派な社、そして————


「久しぶりですっ!! ククリ!!」
驚愕する彼女の顔が面白くて、私は思わず頭の上の耳がピコピコと動くのを感じた。


-End-




あとがき

ということで、私の創作種族、「地獄狐」ちゃんの設定およびそれを題材にしたプチ小説でした!
いやー、ほんと何やってんのお前って感じですよね。
ここまできっちり読んでくださった皆さんありがとうございます。
あるいは読んでいられるかと読み飛ばした方々、全然大丈夫です。
長いですもん(
なんというか筆が進んじゃったんですよねw
お前自分のうちの子たちでさえ全員設定まだ語ってないだろ!って感じがやばいんですが、一度地獄狐ちゃんシリーズを明確に〆たかったという想いがありました。

一時期、深夜2時に丑三つ時AIArtのタグをお借りして地獄狐ちゃんシリーズを不定期投稿していたのですが、深夜に投稿しているということもあり、ぶっちゃけ見ていない方多いだろうなと思っていました。
しかし、イラスト投稿段階で今回の小説のようなプロットというか、物語の構想はあって、それをTwitterで表現していたんですが、そもそもツイートの文字数制限がきついのと、全部きっちり見てくれてる人が一体何人いるんだ!と思って、いつか物語をまとめたいなーっとは思っていたんですw
それに取り掛かったらせっかくだしもうちょっとお話を膨らませたいなと考えだした結果がこれです。

かなり時間をかけて書いたので、最期まで読んでくださった優しい方はリプライでもここのコメント欄でもご感想を頂けるとすごい嬉しいです!

ではまた次の記事でお会いしましょうー!

記事がいいなと思ってくださった方はよろしければサポートを頂けると大変励みになります!ご支援頂いたお金は活動資金にあてさせて頂きます!