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京都【泰山タイルめぐり】喫茶築地編②

「泰山タイル=乱張り」と言うイメージがあるほど、その印象は強いと思います。

そもそも乱張りとなんなのか。泰山製陶所で勤めた職人の記録にこんな逸話があります。「とある邸宅で目にした造園家の石組みがあまりにも見事だった。聞けば御影石の方形乱張りと言うらしい。」

つまり、泰山製陶所の乱張り技術は造園技術から発想を得たもの。方形乱張りを調べると、石組み技術としては一般的なものであることも判ります。

泰山タイルの乱張りが語られる際、必ず言われることがある。「余った端材タイルや釉薬テストで試験的に作られたタイルが使われている。」

これは大きな間違いなのです。いわゆる「っと言われている」と言う通説。(石組みの方形乱張りに関しては、背板と言われる余った端材を使って作られることが多いんだとか。)

実は、泰山タイルの乱張りに使われたタイルは、その乱張り用に作られたオーダーメイドの特注品。必要な大きさ、必要な色のタイルを、その都度、必要な分だけ制作したものなのです。

そもそも勘違いされがちですが、泰山製陶所は美術タイルのみを作っていたわけではなく、主力商品は一般的な衛生タイルでした。

その為、乱張りに使うような特殊な美術タイルは、そこまで多くの受注や生産もなく、かつ、多様な種類のストックも基本はありませんでした。

もちろん端材が全く使われなかったか、と言われればゼロではないと思います。ただ「端材で作られたのが、乱張りである」との説明は、泰山タイルを使った乱張りに関しては言えば、「間違いである」と言うことが、記録からも、当時の職人さんからの聞き取りでも判明しています。

ちなみに泰山タイルの乱張りは、事前に工場での組み合わせ作業を行い、張る順番通りに木箱に入れ、その上で現場に運ばれ施工されていました。つまり現場で試行錯誤した上で張った訳ではないことも興味深い事実です。(2024.05.28追記)

③につづく

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