ブルーフィルムを巻き戻して

※2017年7月21日にはてなブログにて公開したものを再編集しています。

新国立劇場 「怒りをこめてふり返れ」
観劇してきた。

前情報は「中村倫也が演じるジミーがただただ何かに怒ってる」ということしか知らなくて、原作を読んでから行こうとも思ったんだけど、原作も見つからず……。
ということでほぼ何も知らない状態だった。
初日と19日の2公演観て、ようやく話の内容やセリフなどもきちんと把握してきたので、つらつらと感想を書き留めておこうと思う。

というか中村さん、パーマかけましたよね。初日はかかってなかったからちょっと寂しかった。長めの髪という設定(?)があるから切らずにいたいのかな。(個人的には初日の方が好き。)


この舞台は休憩を含めて3時間10分。全4幕で構成されている。

1幕 約50分
2幕 約45分
休憩 15分
3幕 約30分
4幕 約50分
と、こんな感じ。1~4幕、それぞれ分けて書いていく。ネタバレあります。


あらすじ
英国中部の大きな町の、とある屋根裏部屋。
貧しい下層階級に生まれたジミーは、妻アリソンと、同じ下層階級出身の友人クリフとの奇妙な三人の共同生活を続けていた。
ジミーは、政治、 宗教、あらゆる旧世代の価値観や秩序に激しい怒りをぶちまけ、さらに搾取により裕福で欺瞞 に満ちた生活を送る憎むべき中産階級出身の妻アリソンにいらだち罵倒する。
善良なクリフは、ジミーに怒りの矛先を向けられ憔悴したアリソンをやさしくなぐさめるのだった。
殺伐とした生活が続いていたある日、アリソンの友人ヘレナが部屋を訪れる。
窮状を見かね たヘレナは、アリソンの父親レッドファーン大佐に連絡を取り、説得されたアリソンは実家に戻るのだが……。
-怒りをこめてふり返れ 新国立劇場公式ページより

1幕

ここではただただジミーが一人で喋っていて、クリフとアリソンに絡みまくる。中村倫也のことめっちゃ好きだけどめっちゃムカつく(笑)それくらいジミーがうざい。
でも初日よりジミーの雰囲気が柔らかくなったように感じた。役に馴染んできたのかな。

▽アリソンが火傷を負うシーン

ジミー「わるかった。わるかったよ。まさか俺がわざと」
アリソン「出てって!」

ここでは「わざとじゃないんだ」と言っている(遮られているけど)。けれどアリソンと二人きりになると、

ジミー「わるかったよ。ムキになった。わざとやった。」
ジミー「俺はさ、俺は、その……、いつだって君のことを見てるし、欲しいと思ってる」

と言う。そして、それまでとは打って変わってしおらしくなるジミー。ジミーはアリソンから愛してもらっている自信がない。本当はあんなにも愛されているのに。それについては2幕で。(ちなみに19日の公演では、この前の『クリフがねずみに似ている』とみんなではしゃぐシーンで、クリフ役の浅利陽介さんが新聞紙を踏んで滑ってた(笑)中村さん、舞台奥から「大丈夫か?ネズミ」とアドリブ。)

アリソンが妊娠したことを告げた後、ハサミを取るために背を向けたクリフ、とてもショックを受けたように見えた。私はクリフがこの後のシーンで、ジミーとアリソンの邪魔をするのは確信犯なんじゃないか? と思った。


▽好きなセリフ
ジミー
「確かに食うのは好きさ。それに生きるのも好きだ」
「まともな人間のまともな情熱」
「ハレルヤ! 俺はここにいるぞ!(生きているぞ!)」
「生きているフリをしようぜ」
「どうも俺には古臭いとこがあって、もうそんなの、誰も求めちゃいないのにな」
「あいつだけだ。みーんないなくなった」
「君はまだまだたくさんのことを学ばなければならないんだ」

クリフ
「諦めるにはまだ若い。若いし、素敵だ」

そういえば初日にあった、ジミーがアリソンの悪口を言いながら化粧品を床に投げるの無くなったんですかね。(22日にはありました。たまたまだったのかも。)

2幕

▽ヘレナとアリソンの会話

1幕の最後に名前だけ出てきたヘレナが登場。(ジミー曰く)全身Dior。かっこいい自立した女。
ヘレナはなんというか、いやな女なんだけど、嫌いにはなれなかったな。
妊娠したことさえジミーに怒られてしまうんじゃないかと思って、言えないままでいるアリソン。それに対し「異常だわ」とヘレナは言う。そして、「この家は狂ってる。ジミーから離れるべきだ」、と。

ここでの会話で気になったんだけど、クリフとアリソンは肉体関係があるのかないのか。アリソンがヘレナに、「私とクリフが抱き合っているところを見たのね」と言うけど、ただ単に抱き合っていただけ?
あと、アリソンがジミーを初めて見たときのことを語るシーン。あそこでヘレナが目をそらすんだよね。伏線だったのかなあ。ここで観客は、アリソンのジミーに対する愛を知ることができるんだけど、ジミーは知らないままなんだよねえ。可哀そう。

ヘレナのセリフで何度も出てくる「聞いて」。これは相手に言い聞かせるような、催眠をかけているような気がした。(そして結果的にはアリソンを騙している。)


▽4人で食卓を囲む(囲んでない)シーン

水瓶でガンガンと音を鳴らす、本当に心臓に悪い。ティーカップ投げるところも。あそこはジミーのこれまでの孤独や悲しみを語るシーンであり、そしてアリソンの愛を試すシーンでもある。
ヘレナというジミーにとっての”敵”、そしてアリソンにとっての”味方”(あくまでもジミーの中では)の前で、自分を選んでくれるのかを試すジミー。

▽ジミーがアリソンに詰め寄るシーン

初めてアリソンの瞳に恐怖を見た。
ヒューのおふくろさんが危篤だという電話が入って、狼狽するジミー。「かわいそう」と、アリソンはジミーを抱きしめる。けれど、縋りつくジミーを置いてアリソンは逃げてしまう。(ジミーにとってのヘレナと、アリソンにとってのヒュー(のお母さん)は対になっている。)
このシーンでアリソンの手を食むジミー、可愛かった!

2幕の終わり、部屋に一人きり、椅子に座るジミーがちっぽけで、寂しそうで、抱きしめてあげたかった。
寄り添うリスとクマのぬいぐるみが、また……。

▽好きなセリフ
アリソン
「彼が言うには、私は自分が生まれたことにすら気が付いていないんだって」
「彼はずっと光の中にいた。あの人の周りはずっと燃えているようだった。頭の先から光が飛び出しているようだった。とても繊細なのに、あんなにメラメラ燃えて」(4幕のセリフに繋がる)
「ちっちゃな脳のちっちゃな動物になれた。もう、それも死んじゃった」
「この人から苦しみを取り上げちゃダメ。苦しみがなければ、自分を見失ってしまうのよ」

ジミー
「権利ならなんだってある」
「俺は本当に幼いころに、怒りとは何かを知ってしまった。怒りと、そして無力を。それを忘れることはできない」
「ユダ! 裏切者!」
「俺はお前の涙の中にいたい。その中で、歌い、はしゃぎまわりたい」
「俺には君が必要なんだ」

▽▽▽

長くなりそうなので3〜4幕に関しては次回に持ち越します。

今日、マチネとソワレ続けて見るので、また気づく点が増えるんだろうな。

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