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雪だって見えなくなる。

 だいそれたことを大きな声であんまり言えなくなって、ひとり音楽のビート(THE 1975)に身体を揺らす。現実的なものばかりにかまけてると風景は色褪せるし、雪だって見えなくなる。
 消えていく白さなんて気にもならず、雪に染まる大地につばを吐きかけ、柔らかな新雪を踏みしだく音なんてAirpodsでふさいで、自分が本当にしたいことさえ聞こえない。
 自分の内側から「この世を生きる意味」なんてビートが聞こえてきたら、それは100%幻想だろう。だけど大概この夜は幻想めいているんだからそういう自分だけの幻想を信じるのは美しく思える。
 加工したVoice加工されたimage貼り付けられたテクスチャをポップに取り繕って楽しそうに身体を揺らす。流行は守れているか、僕たちのコードは僕だけのものでは意味がない。
 僕と君。ふたりいれば世界は完結するはずだった。
 けれど物語は終わらないし読む本は多い。愛は不時着するし、トークトーク(遠く遠く)、音楽は気持ちを簡単に揺らす。今日も本は刊行されるし、誰かがTweetしてく情報量がオーバーフローして、YouTubeを4倍速で聴きながら、何もかもをしなければならない。
 そういう強迫観念が付箋で部屋の壁に貼り付けられ、規矩が無限に増えていく。信念を守るための具体的で細かな細部ーーたとえばナイフは左でフォークは右のようなもの。がんじがらめにされるとすべて破壊したくなる。
新しい情報で上書きされるスピードが早すぎるからもう置いていって欲しい。しっかりしっかり考えて努力して、コツコツと思考して、英語とか、ITとかそういうスキルと小手先の小技と基礎力を身に着けて、誰にも負けないようにするんだよ。立派になるんだよ。というのを全部いままでなるだけ軽やかに避けてきたつもりだから今になってのしかかってくる。仕方ないんだけどさ、全部ほっぽりだしてみんなで歌ったり踊ったりすればきっと楽しい。
 リズムがすべてだ。タイミングが最も大切だいうことを君は覚えていないといけない。

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