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2023年面白かった漫画の続き 更に6選

小野中彰大 / 『魔法少女にあこがれて』 

引用元: https://storia.takeshobo.co.jp/manga/mahoako/

前回記事↓の続きです




サチ録~サチの黙示録~

ジャンプ+で無料。
日常系ギャグ漫画。一定期間で70億の内たった一人の少女「サチ」の生活を観察し、善行ポイント(加点)と悪行ポイント(減点)を積ませて悪行ポイントが上回っていたなら神が人類を滅ぼす審判を下すことになる。
間違いなく人類の存亡が掛かっているのにサチ本人はその自覚がなく、とてつもなく自由に過ごしているため、そこから中立性や公平さが出ているのがおもしろい。普通ならめちゃくちゃシリアスに焦って善行を積もうと必死になるだろ… となるがサチ的にはそうではなく、審判は適度な緊張や波乱を産むアクセントとしての役割になっている。
また、監督官として一人ずつ派遣された天使ランと悪魔ボロスはそれぞれ天使サイド/悪魔サイドの思惑も絡み様々な事件が起きることとなる。サチには家族がおらず、人間/天使/悪魔の3人による疑似家族ものという面も強い。このアットホームなエピソードを楽しみに今の連載を読んでいる。

自堕落でサチと一緒に現世をエンジョイしようとする天使だが、実は天使界に思うところがあり、サチにはこう生きて欲しいという思いがあり…ということや、
家事をすることで他に善行を積ませる余地を無くし、甘やかして人間を堕落させようとするがやっぱりサチがものを散らかしたりぐうたらしたりしているのも許せないオカン気質の悪魔 といったそれぞれの背景もあり、憎めないところがどのキャラにもあるため、ずっと読んでいたいと思わせる。

鵺の陰陽師

週刊少年ジャンプで連載中。

学園ファンタジーバトル漫画。
この手の漫画ってもはやジャンプや他誌を含めて手垢が付きまくっているわけだけど、それに挑戦してかつちゃんと面白い。
応援したくなる主人公像というものが徹底的に考えられていて、それが素直に描かれているのがこの漫画の特長だと思う。
例えば「強大な敵に仲間が捕らわれていて、助けに行こうとすると絶対に死ぬ」みたいな場面ではこう動く、みたいな決断と行動をはっきりと漫画の要所に置いているため、一見冴えない風の主人公でもしっかり芯というものがあり分かりやすく、ストーリーが進むにつれ補強されていく。力をつけ成長していく主人公だが「力があれば何をするか、今足りなければどうするか」を常に考え続けるのが一つのテーマになっているようだ。
その人格補強の一つに「一話で何の力もないのに半裸になりながら教室を襲った怪異(幻妖)に一人で立ち向かった」エピソードを持つ膳野くんを始めとするクラスメイトとの絡みがあり、毎回ギャグチックな話で癒しになるとともに、主人公の日常の中での立ち位置も確認できるし決断の裏には実はこんな言葉が響いていて…みたいにちゃんと日常と戦闘との繋がりが生まれている。
ToLOVEる的なハーレムラブコメ要素もあって、ヒロイン達それぞれにも背景や主人公に近づく目的があるのが丁寧。一見ぽっと出(例えばいきなり主人公の妹が出てくる)に見えて、後から実は主人公とこんな繋がりがあって…今までこういう理由で語られていなかったけど実は過去にこんなことがあって… みたいな設定が一々説得力があって困る。それぞれ応援したくなる。
主人公に力を与えた大妖怪の鵺さんとのバディ物としても注目。まだ全貌が明らかになっていない鵺さんだが、今のところは世界観説明ができる存在で、主人公の目的・動機付けそのものとして一役買っている。とんでもない力を持っているのは明らかで、今後謎が明らかにされるのに期待
総じて攻守のバランスが取れたジャンプらしい漫画に感じた。
カラー絵が(おそらく)とても早くて上手いから編集部内でも人気そう


ニクバミホネギシミ

令和最新版ホラー漫画。
洒落怖+クトゥルフ+その他神話のまぜこぜな怪異を相手に、危険なほど好奇心旺盛な雑誌記者とダウナーな霊能カメラマンのバディで事件を調べていく。
「たかが人間の霊程度の念や力で現世の人間をどうこうできようもない」と同時に「人の世の理を超越する存在に人間如きが敵うはずもない」というのが一貫した前提。上位の存在が現世にちょっかいをかけに来ており、現世の人間は太刀打ちできようもなくあらゆる方法で狂わされていく。
ありがちではあるが名前や言葉がこうした背景で作られていてそれを紐解くとやばい存在に繋がっていて… といった謎解きミステリーの要素もある。ただし、作中では最後の解答まではされず好きに想像してねといった語られ方。ネット上で元ネタ解説的なのも見たけどあまり見ないほうが面白いかも。
ホラー的な話は基本的に語りすぎるとあまり怖くなくなる性質があり、理不尽な恐怖を突きつけてくる事が多いと思う。が、この漫画ではむしろもっと自分をわかってほしい(もちろんその先の目的もある)的な怪異が多いように感じられ、これ以上続きを読むと全貌がわかっちゃうけどええんか? 理解りすぎると狂っちゃうけどええんか? みたいな問を突きつけられながら読まされるのでまさにコズミックホラー! を味わえる。
同一の怪異だが、クトゥルフ神話ではこう呼ばれている/ゴエティアではこう呼ばれている… といった繋がり方が考えられているのは好き。
一話から主人公の雑誌記者は… となっており、その謎を解き明かすために怖い話を次々回想しないといけないという読ませる動機付けがある。ニクバミホネギシミとは明らかにやばい響きの名前だが……どんな怪異なのか!?


魔法少女にあこがれて

アニメ2話時点で続きが気になり全巻購入&最新話まで読了済み。

魔法少女が街を襲う悪と戦うニチアサ的な世界。その魔法少女ファンの少女「うてな」は突然変身アイテムを持たされ、使ってみたらエッチな格好の悪の女幹部になっちゃった!? 流れるままに魔法少女と戦う中で、自身の「悪(というかサド)」の素質が覚醒していき… なお話。
全編を通して魔法少女サイドと悪の組織サイドとの戦いが描かれる。その中で、悪の組織のやり方に解釈違いを起こしてしまったうてなちゃんは何をするのか!? や、やめろーっ
これこれ! これを見たいんだよ! をうてなちゃんの欲望のままに余す所なく存分に見せてくれるのが良い。その思い切りに乾杯。
うてなちゃんの個性や矜持が分かるエピソードとしては、やはりマジアベーゼ(変身したうてな)と魔法少女マジアアズールとの決闘シーンだろう。絶え間ない責めについに屈して「悪堕ち」しようとしてしまうマジアアズールを見て、魔法少女にあこがれるうてなちゃんは決定的な解釈違いを起こしてしまい…
古来からSはMとの信頼関係から成り立っていると言われている通り、信じているからこそできることってあるよね。だからこんなことしても望む通りの反応をしてくれるよね。そして、悪の幹部とは高潔な精神を持つ魔法少女に倒されなければならない、というのがどこまでも貫かれているのがそれはそれでかっこいい。中学生女子なんだけどこれは女版アーカード
「強くなれる理由」をそれぞれのキャラが持っていて、ページを使ってその成長が描かれているのが良い。特に好きなのはサルファで、ツッコミ役で口は悪いけれども熱血少年漫画的な精神も持ち合わせており、街を守るヒーローとしてかっこ悪くても確かに勝とうとする意志を感じる。戦いの中で、ただの友達や仲間だった関係性も少しずつ変わっていき… なところも見どころ。
悪の視点から描かれてはいるが、総じて真っ当な魔法少女ものとして笑いあり涙ありな作りになっている。ヒーロー物や百合物が好きな人におすすめ。


紅魔館の女たち

令和最新版めーさく。カドコミで無料。
東方Projectの公認二次創作を高クオリティでお出しされて私は…

「紅魔館組」とは東方Projectシリーズの記念すべきPC初作品である東方紅魔郷に登場する昔からの人気グループというかキャラの括り。初出では敵として登場したが、シリーズでは異変解決を担う主人公(自機キャラ)になることもあり、原作や音ゲーコラボなどで現在まで露出が多く、制作側からもファンからも愛されているのが伺える。東方シリーズが今日まで続く人気作となった立役者であるのは間違いなく、二次創作同人でも未だに最大勢力という噂も

そんな中で作者自身の、私が考える東方(主にキャラ付けや関係性)はこうなんだ! というのを見せつけられるのが心地よい。昔ながらの同人文化を感じられてどこか懐かしい。ただし不思議と古臭さは感じない。
人間と妖怪が暮らす幻想郷。人間の咲夜と妖怪の美鈴はどちらも紅魔館の主レミリアに仕える従者であり、上司と部下という立場ではあるんだけど美鈴はどちらかというとサバサバしていて仕事に(あまり熱は入っていないものの)私情を持ち込まないタイプ。対して咲夜は美鈴の気を引こうとあれやこれやしてしまい…
それぞれの「女たち」が抱える他の女へのじっとりさっぱりした思いがコミカルに描かれる。咲夜×美鈴以外にも推せる関係性が次々お出しされるためこれからも注目したい。
東方を知らない人でも百合物として十分読めるかと思う。初見の感想を知りたい。現代で東方を語れるっていいよね

カードゲームうさぎ

↑ pixivまとめ(最新話はXで連載)

↑pixiv百科事典に各種リンクまとめがあるため貼り

作者のXで連載中。バックナンバーはPixivまとめ等から頑張って読むこと。
「趣味」に対して大人なった僕らはどうやって向き合っていけるのだろうか? 「たかが趣味」に本気になれたなら…そして同じ「本気」を共有する仲間に出会えたならどんなに楽しく素晴らしいことだろう?
共通のカードゲーム(架空のゲームだけど、クラファンで実物のカード化企画が進行中!)に対してキャラごとの様々な向き合い方を描く本作。趣味のコミュニティに混じったことのある人なら「あるある!」と頷きながらするすると読めてしまうはず。話は平日にほぼ毎日更新する気合の入りようなので、そのちょっと狂気の混じったカードゲームの世界にぜひ触れてみてほしい。
実物TCG化クラファン企画参加してきました



もはやこれまで。
皆様も良い漫画ライフをお過ごしください
以上です!

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