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【短編小説】 打ち上げ花火と溶けるアイス

アニメを観ていた。
涙を堪えられなかった。
それくらい夢中になって観ていた。
体の水分が減れば、喉が乾く。
卓上に置いていた水筒を手に取った。
空っぽだった。
おかしい。さっき入れたはずなのに。
その間にアニメは四話進んでいた。
さっき、は一時間前の話だった。
何かに意識をとられていたら、他のことには目も向かない。記憶にすら残らない。
打ち上げ花火に気を取られていたら、溶けるアイスに気がつかない。
花火が綺麗だった記憶はあるが、手がベタベタになったことは忘れていく。
彼らは部活に夢中だったんだろう。
両親は子育てに必死だったんだろう。
だからその最中に放った言葉は無意識だったんだろう。記憶にすら残っていないんだろう。
僕は過去に夢中で、今に目が向かない。
空っぽだ。

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