【小説】傘と共に去りぬ 第6話 無彩色の影【毎月20日更新】
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ゴミ捨て場を寝床にしていた男を見下ろす。普段ならこんな奴、視界にも入れたくないから素通りしていくはずなのに、俺の目に入ったそれは見過ごせない物だった。
「おい、起きろ。おいってば」
俺の声に反応したのかうっすらと目を開けた。男は瞬きを数回すると、自分の状況に気がついたのか勢いよく飛び上がった。辺りを見渡した後、手元に握られているビニール傘を見つめている。
「なんだってんだ、一体」
俺だってそう思っていた事を男は呟きながらズボンに付いている