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轢〜かもしれない運転〜

先週末、私がお昼ごはんを作っているあいだ、夫と息子が洗車をしていた。


娘がジャーマンポテトを作りたいというので、色々教えながらカブのシチューも作っていたら予想より時間がかかってしまい、普段よりも遅くお昼ご飯だと呼びに行く。


すると夫が、浮かない顔で

「嫁ー、聞きたいことあるんやけど…

出てきて車見てくれへんか?」

と私を呼んだ。



「なんやのー?ごはんが冷めるやんか、今やないとあかんか?」


私は娘が作ったジャーマンポテトが冷めることが気になった。

ジャガイモ料理は出来たてホクホクが一番美味しいのだ。

シチューは簡単に温め直せるし、出来上がりなんか舌がやけどしそうに熱いのだから、多少冷めたぐらいが食べ頃である。


「すぐやし」

どうしても今らしい。


しぶしぶ行くと

「あんなー…、

人か動物か轢いたか?」



「ええっ?!」

小春日和の日曜日の午後の気分が、吹き飛んだ。


「掃除してて見つけたんやけどな…、タイヤ周りに血飛沫みたいな跡があるんや。

擦っても取れへんし…ほらそこ」




聞きようによっちゃ怒っていい。

事故を起こしたのではないか、それを隠蔽しているのではないかと疑われているのだ。

私がそんな人間だとでも?!

 


しかし第一声で、轢くわけないやろ!と言い返せなかった。


数日前に急ブレーキを踏んだことを思い出したからである。


それは娘を塾に送っていった帰りで、晩秋の空はすでに暮れていた。

田舎の夜道は街灯が少なく暗い。


路地から出てきて左折しようとしたとき、歩道に6〜7台の自転車に乗った女学生らが見えた。


横断歩道を渡るかもしれないな、と予測したのでしっかり減速をし、後続車を確認しつつ、ゆっくり進んだ。

女の子たちはひとかたまりになって先頭が赤の歩行者信号で止まっている。


そのまま進行していたところ、突然最後尾にいた自転車が間髪入れず曲がる先の横断歩道へサッと出てきたのである。


同じくらい年格好のだったのでグループだと見なしていた私は、ノーモーションで出てきた彼女に慌てブレーキを思いっきり踏み込んだ。


交差点周りの人の視線がパッとこっちに来たように感じた。


…彼女はそのまま自転車で勢いよく、信号を渡っていった。

それを見送ってから、左折を再開した。そういう事があった。



もしかしたらあのとき彼女を…?


いや…人間相手に血飛沫上がるほど突っ込んだら普通に人身事故やろ…

とっくに通報されて呼び出し喰らって警察のお世話になってるやろさすがに…

田舎といえど他の車も何台かいてた、たくさん自転車の子らもおったし…


ほんなら…動物か…?もう一つ記憶が蘇ってきた。


これはさらに一週間ほど遡る。息子を学童へ迎えに行った帰りの川沿いの道で、黒いひらひらしたのが車の前方を横切ったことがあったのだ。


息子のお迎えは娘の塾より時間が早い。障害物は進行方向だったのでバッチリヘッドライトに照らされ、目視できた。

しかし黒いひらひらがある?と見えたがぶつかったような衝撃はなかったし、帰宅後に車の周りで異臭だったり鳥の羽だったり蝿のたぐいの虫を見かけたりもしていない。


だが現に車のタイヤまわりの車体に何らかの液体が点々とこびりついていることはたしかだった。

論より証拠である。


とにかく何なのか確定に至らず不気味だったが、人が相手ではないだろうし、カラスだったのか?と、その日はそのまま過ぎた。



昨日息子の学童のお迎えのためにまた同じ道を通った。

 なにか動物の死骸などがないか、いつもよりスピードを2割ほど緩めて坂を上った時、テニスボールぐらいの丸い玉がぽつり、ぽつりと落ちているのが見えた。

 

それは、川沿いの柿の木から、実が熟れて落ちて道路に転がっているのだった。



謎は全て解けた!

タイヤ周りの車体についていた血しぶきのようなものは柿の実の潰れた汁だったのさ!


しかし果汁というのは落ちにくいものだ。


子供だった頃、落ちている花梨の実で落書きをして叱られ夏休み返上でホーミングとたわしを持って塀の落書きを消しに通ったが、どう擦っても洗剤を替えても落書きが落ちなかったものだ。最後は砂利で擦り削り落とした。



結局それから夫は、車のその箇所を研磨剤でもって汚れを落としたらしい。



これからもどんどん日没時刻は早くなる。


柿の実を避けるスーパーテクニックは無くとも、人身事故を起こさぬように気を引き締めて、よくよく注意をして運転しなくてはと思った。



YouTubeで左折を検索したら、卒業した自動車学校が世の中のためになって面白いことをしていた件