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まどろみ荘 小雑記

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ヘンな下宿に住む、無数のヘンな住人達のお話。
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2015年8月の記事一覧

まどろみ荘 小雑記 そのニ

手作りしたシャツを着た子牛が、煮物を持って 知り合いを訪ねた。家族が皆たくさん食べるもので、一人暮らしでは つい作るものが余ってしまう。

ぎぃー がちゃ と顔を出したのは 白いとかげの頭をした人

うれしそうに煮物を味見し 人参色に体が染まるのをみて、子牛は夕暮れの牧場の、おかあさんの低く響く声を思い出した。

それでは またの日に、へんてこな住人のお話を。

まどろみ荘 小雑記 はじまり

泡が舞う空と足元の無限の水面との間にぽつんと、蔦の絡まった建物がある。

昔ながらの下宿といった2階建てで、なぜかべこぼことへこんだ看板には、「まどろみ荘」の文字。

異空間の集合体のような一部屋ずつのなかで ぼんやり紅茶を茶碗で飲む吸血鬼、風呂で疲れをほぐす有翼人、するめを噛む泉の精に、大犬を散歩させる呪術師、八百屋帰りの牛…

何人いるのか、なぜなのか?へんなものらの、徒然のお話です。

まどろみ荘 小雑記 その一

猫の 長い声の反響する もやもやとした闇

まどろみ荘の一室 古書に囲まれ、黒い衣の人が大犬を まぁるくなでている。わふわふぶんぶん尾をふる風が、浮遊する本の題字を撒き散らし 更新し

「道じゅうに記号」「たぶん壷だろう」「悲しみの浮き船」

眠れぬ夜 眠れぬ人が 青い火球をつまみに 不死の暇をあそんでいる   

それではまたの日に、へんてこな住人のお話を。