内田百閒「山東京伝」を読む
山東京伝を知っていますか?私は日本史選択だったから、世間を皮肉ったオモシロ本を書いたら寛政の改革で処罰された人、くらいには覚えていました。有名な作品は『江戸生艶気樺焼(えどうまれうわきのかばやき)』!江戸生まれウナギの蒲焼きをもじってるよね。絵が上手くて文章もうまくて、うまいこと言えたらいつの時代ももてはやされるのですね。堅苦しい政治の中で、ユーモアがあってリーズナブルな価格の本に人々は魅了されていたよう。
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さて、そんな山東京伝に憧れて書生になった「私」が主人公のお話。冒頭から「私」は丸薬をまるめています。なんで丸薬?と思ったんですけど、京伝先生でも小説だけでは食べていけないんですね、だから薬を売って生活費にしていたらしい。しばらくしてご飯の時間になっても京伝は全然声をかけてもくれない。「私」も京伝に畏敬の念を覚えて全然声をかけることができていなくて、その思いが徐々に強くなる描写もウケました。
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そうこうして、玄関に小さい人がいらしたと「私」が京伝に伝えると、彼は走っていってこれは山蟻だと行った。正直、ハア?という感じです。山蟻とヒトは見間違えないでしょう。百閒ワールドです。山蟻は丸薬を盗みにきたんだそう。「私」はしごく怒られて出て行けと言われてしまいました。
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山東京伝という人のことをあまり掴めないまま話が終わってしまったのですけれど、薬の販売にかなり依存していたんですかねえ。憧れていた人の実際をみた「私」はどう思ったんだろう笑 オシャレでセンスがあって、現代でいうサブカルの第一線で活躍する人の生活を知って、性格を理解したときのがっかりはあったんじゃないかな〜。知らぬが花ということもあるよネ。