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Day14【書く習慣】これまでに夢中になったモノやコト

いしかわゆきさんの『書く習慣』 #1ヶ月書くチャレンジ。
14日目のお題は「これまでに夢中になったモノやコト」


寝食を忘れて没頭した経験は小学生のとき。
最初のきっかけは、国語の授業の『ごんぎつね』だった。

日本人なら誰もが通る、「ごん、おまえだったのか」

その日の授業のテーマは「ごんぎつねの続編を書こう」だった。

みんな思い思いに原稿用紙に向かう。
わたしは何を書こうか。
冒険小説好きの血が騒いだ。

真実を知った兵十は、ごんを生き返らせる薬を手に入れるために旅に出た。
数々の苦難を乗り越え薬を手に入れた兵十は喜び勇んで村へ帰ってきたが、薬の効力は死んでから7日以内。結局ごんを生き返らせることはできず、兵十は痛みを抱えて生きていく。

あちこちに矛盾があっただろうし、話の進め方も強引だったと思う。よくありそうな話だし。
それでもわたしのごんぎつね第2章はみんなの前で朗読させられ、ホチキスで留められた分厚い原稿用紙の束は教室の後ろに並べられた。

その後、創作の授業が気に入ったらしい担任は、別の課題を出してきた。
完全オリジナルの小説を書く、というものだ。

小学生の授業かこれ。

ごんぎつねで創作の楽しさを知ってしまったわたしは、またしても冒険小説を書き始めた。期限は2週間。
毎日何枚も追加の原稿用紙を貰いに行くわたしに、最終的に先生は20枚ぐらいの束を渡してきた。

書き上げるのは本当にしんどかった。締切に追われる作家というのは、ああいう状態なのだろうか。
当時のわたしは週のうち4日は算盤とピアノに通っていたし、他にも宿題はあった。時間が足りない。
おまけに物語の締めが思い浮かばず、提出前の3日ほどは睡眠時間を削っていた。
不思議なことに、それすらも楽しかった。

書き上げた小説は、先生がひとり分ずつ簡単に製本してくれて、教室の後ろに並べられた。それぞれにカードが付けられていて、読んで面白かった作品のカードにシールを貼っていくシステム。

初めての自分の本。それにどんどんシールが貼られていくのは、この上ない喜びだった。

今読んだら恥ずかしくて地に潜りたい気持ちになると思う。それでも、ごんぎつねを気に入ってくれた友達は、わたしの小説を「楽しみに待ってる」と言ってくれ、製本されると真っ先に読んで感想をくれた。わたしの初めてのファンだ。

大人になり、いろんな経験をして、いろんな小説を読んで、世の中にはものすごい才能が溢れていると知った。わたしなんて周りに田んぼしかない井の中の蛙。
でも、今こうしてあの時のことを思い出して、あれほどの熱量で物事に取り組んだことがないことに気づいた。

小説、また書いてみようかな。



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