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神様がいるとしたら

たまに、考えることがある。
「もし、神様がいるとしたら」
今の私だったら何を願うだろう。

大金持ちになりたい。
会社に縛られない自由な暮らしがしたい。
過去に戻りたい。

願っても変えられない状態や、過去を
見えない「神様」にお願いしてしまうだろう。

友人とざわつく居酒屋でその話になった時、
彼女は「もし、神様がいるとしたら今すぐ死ねるように願う」と言った。

3年も付き合って、同棲までしていた彼氏に振られたそうだ。
私たちは30半ばの独身。
周りに幸せな結婚をしている人もいない。私は、彼女はその人と結婚するのだろうと思っていた。

「彼にも悪いところはあったけど、私にも悪いところは確実にあった。だけど、愛していたから我慢できた。それなのに、新しい女を作って出ていくなんて。人格を全部否定された気分。」

お酒も入って、今まで溜まってた思いが溢れ出してしまったのだろう。
泣くのを必死に我慢しているのが分かる。

彼女は自分の思いを曝け出すタイプではないし、私も深入りしようとするタイプではない。
死を願っている彼女にどんな言葉をかけていいのかも分からない。

彼女の溜まりに溜まった不満を、
食事と一緒に飲み込んであげるくらいしか、
今の私にはできない。

「今まで一人暮らししたことなかったの、彼。したいんだって。
飲みに行くのは、私にストレス溜まってたからだって。飲みに行く回数減らしてよっていうのもストレスだったんだって。だから、悪循環だったんだって。
私は、飲みに行くお金を貯めて将来のこと考えて欲しかったのに。少しは家賃入れてくれるとかあってもよかったのに。
しかも、バツイチだったんだって。家賃入れなかったのは慰謝料と養育費払っててお金なかったからだって。飲みに行くお金はあるのに。おかしいよね。
それで、新しい女ができて出て行ったんだよ。なんだったんだろうね、あの時間。」

以前、紹介された時には愛想が良くて人懐っこそうな彼のイメージとは真逆の事柄が並べ立てられた。
情報過多で、どの言葉にどう反応していいのか分からない。

彼女の説明も、まるで小学生の感想文みたいに拙い。

「そうだったんだ」
ギリギリで出た私の言葉は、陳腐で使い古された言葉だった。

耐えきれず流れた彼女の涙が、ハイボールのグラスに入り、シュワシュワと溶けていった。

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