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ISTQB CTFL 4.0をちょっと紹介

上記のnoteで、ソフトウェアテストの資格認定試験であるJSTQBの現在のFL(ファンデーションレベル)シラバスを紹介したのが2018年でした。

この試験は、2023年の4月頃のデータでは、135カ国で120万人以上がFoundation Levelの試験を受験し、世界中で84万人以上のテスト技術者が認定を受けています。日本でも2万人以上の資格取得者がいます。

このFLシラバスが今年の4月(2023年4月)にメジャーバージョンアップしました。見出し画像はメジャーバージョンアップが承認されたときのGA会議の写真です。

英語版は以下のサイトからダウンロードができます。

私はJSTQBにて技術委員をしていますが、今回、バージョン4.0シラバスの翻訳リーダーをしていて、絶賛翻訳中です。

日本語版を1日でも早くリリースするつもりで頑張っていますが、まずはちょっと一言で言うと何が変わっているか書いちゃいます。

CTFL4.0 in a Nutshell

今回のシラバスの基本的なコンセプトは現在のシラバスと変わったことが多くあります。このシラバスは、現在のCTFL(V3.1)とアジャイルテスト担当者シラバス2014年度版に基づくメジャーアップデート版であり、2つのシラバスの内容をひとつにしているためです。

結果的にどんなことが変わったかを以下に書いていきます。

変更点はISTQBのシラバスの付録になっているリリースノートに書いてあることなので、以降の変更点の見出しもシラバスに書かれているそのままの英語を使います。

Size reduction of the overall syllabus.

全体的に具体例を交えた解説がなくなっています。理由はこう書かれています。

Syllabus is not a textbook, but a document that serves to outline the basic elements of an introductory course on software testing, including what topics should be covered and on what level.

ISTQB FL4.0より

シラバス全体を通しての大きな変化がこれです。教科書じゃなくってベーシックな要素を書くのがシラバスだから、具体例はトレーニングやガイドブックを活用してね、って感じだそうです。なので、清々しいと思えるほど、具体的な説明がシラバスからはなくなりました。

その他、本文の中の変更で、特に注目すべき変更だけピックアップして書いていきます。

Section on the whole team approach (K1) added

「テストの心理学」という節のタイトルが「Essential Skills and Good Practices in Testing」と変わりました。その中で、チーム全体アプローチに関する説明とテスト担当者はその中でどういう役割をするかという説明が追加になりました。5章のテスト組織という節もここに集約されました。

これは、シラバスにおいて、テスト担当者の役割をアップデートさせる象徴的な内容だと思います。

More focus on practices like: test-first approach (K1), shift-left (K2), retrospectives (K2)

テストファースト、シフトレフト、ふりかえりといった活動について大きく扱われるようになりました。

New section on testing in the context of DevOps (K2)

DevOpsについても新しい節ができて説明がされています。

Section on review techniques, together with the K3 LO (apply a review technique) removed

レビュー技法はCTFLでは扱われなくなりました。(といってもレビュー技法そのものは有用な技術なことには変わりないですよ-湯本の意見)その代わり、実例マッピングが紹介されてます。

 Use case testing removed (but still present in the Advanced Test Analyst syllabus)

ユースケーステストは、ALTAにあるのでCTFLでは扱われなくなりました。

 More focus on collaboration-based approach to testing: new K3 LO about using ATDD to derive test cases and two new K2 LOs about user stories and acceptance criteria

コラボレーションベースのテストアプローチで、ATDD、ユーザーストーリーと受入基準といったことをテスト設計で活用しようという説明が追加になりました。

Decision testing and coverage replaced with branch testing and coverage

コードカバレッジの技法で、デシジョンカバレッジがブランチカバレッジに置き換わりました。理由はシラバスに書いてあります。


Section on test strategies/approaches removed

テスト戦略と、テストアプローチに関して、CTFLで扱われなくなりました。

New K3 LO on estimation techniques for estimating the test effort

見積もりがK3レベルのトピック(単に知ってるだけではなく、実際に適用できるレベル)になりました。なので、今後はK3レベルの問題として試験にでるようになります。

More focus on the well-known Agile-related concepts and tools in test management: iteration and release planning (K1), test pyramid (K1), and testing quadrants (K2)

イテレーションの最初からテスト担当者が関わる場合はどうするか?テストピラミッドやテストの4章限って何か?ってことがそれぞれ節のレベルで記載されるようになりました。湯本の個人的見解では、これらが要はテストアプローチなので、これまでのようなテストアプローチの抽象的な説明はいらないってなったのではないかなって思ってます。

Content on some test automation issues reduced as being too advanced for the foundation level – section on tools selection, performing pilot projects and introducing tools into organization removed

テストツールの章もあっさりした内容になりました。他のシラバスで学ぶことだよってことかと思います。

NewTerm

用語の追加という意味では、アジャイル開発で使う用語が増えました。
用語の変化で結構大きいことは、「統合テスト」が「コンポーネント統合テスト」「システム統合テスト」に分かれたことです。あとはデシジョンテストの変わりにブランチテストが使われるようになったことかと思います。ただし、両方とも言葉の置き換えというより、意味合いが違います。

私の感想

今回のシラバスは、これまでの20年以上続くシラバスの本質的なテスト担当者に求められる内容をキープしつつも、かなり大きなアップデートになりました。ISTQBではより実践的な内容で世の中に受け入れられる内容を提供しようということで、市場調査を行い、アジャイル開発をしている開発現場全体の80%弱を占めることや、テスト担当者に求められるスキルが協調的なチームプレイヤーであることをシラバスに反映させました。

アジャイル開発に適した内容を増やしつつも、今まで通りの開発についても言及していて、両者のバランスを取ろうとしていますが、最も変わったと私が思うところは、今までのシラバスで「5.1テスト組織」にあった内容が新しいシラバスでは「1.5 Essential Skills and Good Practices in Testing」に集約されて、チーム全体アプローチになったところです。

テストをする人たちは、開発の中の別の組織ではなく、開発チームの一部だと考えるようにしようというメッセージに読み取れます。

現代のソフトウェア開発にて実践できる内容を提供しようというISTQBの意志の表れだと思いました。

CTFL4.0についての解説はyoutube動画にもなってますので同時に見てもらうと良いかと思います!

そして、9月25日にあるISTQBカンファレンスではCTFL4.0についてのセッションもあります!ご参加お待ちしています!




 
 





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