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さて。

PCの前で少し気合を入れる。
今日のために準備はたくさんした。
あとはやるだけ。ただそれだけ。
ひとつ深呼吸。

家の中であるというのに、私の鼻は微細な花粉に反応したのか少しムズムズしだした。そんな春先。

ぴこんぴこんと通知が来る。
これでみんな集まった。

それでは、

私は、マイクに向かって声を出す。

「クトゥルフ神話TRPG、はじめます」


TRPGとは、テーブルロールプレイングゲームの略だ。キーパー(KP)と呼ばれるゲームマスターが進行役となり、プレイヤー、ひいては物語の行く末を見守る。

その中でもクトゥルフ神話TRPGは、その名の通りクトゥルフ神話をモチーフとしたシナリオを用いる。大抵は神話生物や呪文といったファンタジー要素があったりする。

このTRPGの世界において、プレイヤーができないことは何もない。もちろん、なんの脈略もなく「世界を破壊したい」だの言われても困ってはしまうが、その望みがシナリオ上、もしくはそのキャラクター上、必要なことであれば叶えてあげたい。少なくとも、私がKPをする場合はそうありたいと思っている。

(この、何かと制限される世の中だが、ゲームの中でくらい自由に過ごせる。そのことが少しでも心の安らぎに繋がればなぁなんて。)

このTRPGの良いところは、対面で合わなくともできる、という点がまず1つ挙げられるだろう。

参加者それぞれが自宅PCの前に座って、通話を繋いでしまえばもうそこは1つの“卓”の出来上がりである。Web上でTRPGをする事に特化したツールもあり、なんのストレスもなくシナリオの世界に入り込むことが可能だ。

むしろ、対面でお互いの顔を見ながらやるよりも、オンライン上の方がより没入感があるとさえ思う。
このご時世にもってこいの遊びだ。

私も、周りの友達も、ここ1年ほどでオンラインの環境を整えていた事が功を奏し、あれよあれよという間に開催まで漕ぎ着けた第1回TRPG会。KP含めみんな初心者だったが、なんとかエンディングを迎えることが出来た。
まずは一安心。

しかし、人間とは欲深いもので、すぐに新たな欲求が生まれた。

次は自分の書いたシナリオで遊んでもらいたい!!

なんと突飛で傲慢な願いだろうとは思うが善は急げだ。書こう。すぐ書こう。
短いお話ならまだしも、きちんと道筋の通った“シナリオ”というものなど書いたことがない。書いたことは無いが、書きたいので書く。その発想に至った時、私らしいな、と我ながら思った。
そういう人間なんだ私は。

まあそんなこんなで季節が変わる前までにはシナリオを書き終え、なんとかそのKPまでしたいものである。

今満開の桜の花が全て落ち、葉桜に変わるくらいの頃には、それが完遂することを願うばかりだ。

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