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ともす横丁Vol.13 母の初夢

母が初夢を見たと言う。「ひとりぼっちでね、すごく悲しい夢だったの。」と少し涙ぐんでいる。初夢がそれ??何も言えず、黙ってしまった。

そして「すごく悲しかったけど、これは神様から自立しなさいって言われてると思ったの。」と言う。前向きに捉えていることに驚いた。

母は、去年の今頃から父が先に逝くことを心配して不安になり、気落ちして、挙句の果てに家の中で転んで骨折入院。運よく車いすの生活は免れ、若者が働くリハビリ病院で元気を取り戻し、9月には自宅に戻ったものの筋力の低下から歩くのが覚束ない。

余命半年と言われた父は今も元気なこと、なんとか歩けること、記憶は確かで認知はしっかりしてること、前よりスムーズにしゃべれるようになっていること・・でも今あることより先のことが不安で、自分のドラマに入ってしまうことが多かった。

父はそんな母にどうつきあっていいのかわからない様子だったが、「いつも料理を作ってくれてありがとう」と母に伝えたり、母が難しい洗濯物干しとか掃除とかやっているらしい。長らく父は家にいながら自分のことに精一杯だったが、ふたりの生活は微笑ましいほどに感じられるようになってきた。昭和の男の、愛の表現のなんと拙いことか(笑)。

母は自分を時代の犠牲者にしていたところが感じられたが、自分から抜けようとしているようだ。決めるとたくましい。

私は反発して受け取ろうとしなかった母からのギフトを受け取り始めている。一緒にスーパーで買い物をしながら、食材の見分け方や調理法や生活にまつわる様々なこと、一緒に昼ご飯を食べながらよもやま話などなど。聞いてなかったなあと思う。受け取れるって幸せだ。

今日は57回目の結婚記念日らしい。57回もよく持ったねと言い合っていたのが笑えた。どの夫婦も何年たっても一緒なんだね(笑)

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