父がタバコをやめた時。

父がタバコを吸わなくなった。

吸えなくなったのか、
正しくは、吸うことを忘れたのか。
それは長年ヘビースモーカーを貫き通した父の、
異変を示した。

急に訪れた不安は、ある木曜日の昼。

薬が無くなるから医者に行きたい。
と言ったので、着いていった。
ゆっくり歩いて、いつもの内科さん。

私も大好きな主治医の先生。
信頼する優しいベテラン先生。

"なんで来たの?まだ薬あるでしょ?"

...ん?薬がないから来たんじゃ?

父は言った。
「いやー、腰が痛くて」

えええ、聞いてない。

"じゃあ湿布貼ろうかー。"

私は、すみません確認してなくて。。。
そう謝罪して部屋を出た。
歩くのが辛そうな父を見て、看護婦さんは車椅子を貸してくれた。

車椅子で父を家に届け、
車椅子を病院に返して、処方箋を取りに行く。

まぁ大丈夫だろうと、
どこかで安心していた私は、
もう隠しきれない老いが来てることを、
受け止めなければいけないと、
どこかで思いながら、
大丈夫大丈夫と、自分を励ました。


その日から、
ご飯を食べに2階に上がることも出来ず、
ご飯を食べるのも嫌がって、
いつも私に頼んでいた、
お菓子とタバコ、コーヒーのおつかいを頼んでくることも無くなった。

あーめんどくさい。って
いつも思ってたんだけど。

もう頼んでくんないのかな。

テレビも付けなくなった。

数日現実逃避してたけど、
急に悲しさが押し寄せてきた。

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