_コミュニティ_と_組織_の違い

"コミュニティ"とは何か:"組織"との比較から手がかりを掴む

"コミュニティ"と"組織"、これらはしばしば別の土俵で語られたり、あるいは曖昧な使われ方(区別のされ方)をすることがあります。

私自身、この区別について考え続けてきており、コミュニティ論や組織論のレビューを進めていたところ、両者の区別は非常に曖昧で、要は認識論として捉えるのが建設的なのではないか、という考えに至りました。

このような考え方に至った経緯について、もう少し丁寧に書いていきたいと思います。

"コミュニティ"という言葉の成り立ち

コミュニティの元来の意味は「共同体(あるいは地域共同体)」です。
この言葉が最初に提唱されたのは、ロバート・M. マッキーヴァーによって書かれた『コミュニティ』(1917)と言われています。

マッキーヴァーは社会集団を「コミュニティ」と「アソシエーション」に分類し、以下のように区別しました。

コミュニティ
一定の地域において営まれている自主的な共同生活

アソシエーション
コミュニティを土台として特定の目的を実現するために形成された集団
共通の関心事や目的意識を持った人たちが集まり、自主的に作った組織

また、マッキーヴァーはコミュニティの基礎的条件として「地域性」と「共同体(コミュニティ)感情」を掲げていました。

しかし、このコミュニティという概念は曖昧で、1955年にコミュニティについて書かれている94本もの書籍や論文を整理し、それらのなかで共通する概念をまとめようとしたヒラリーは、結局のところすべてに共通する要素はないと結論づけています。

さらに現在、わたしたちが日常的に意味する「コミュニティ」を考えてみると、上記に書いたような古典的なコミュニティのイメージとは解離があると思います。

例えば、以下のようなコミュニティなど。

・オンラインのコミュニティなど、地域性を有していないコミュニティ
・企業(秩序だったシステム)の中に生まれるコミュニティ
・災害時に複数の地域で同時多発的に発生するボランティアコミュニティ ...など

では、現代においてコミュニティとは何を指し示すのでしょうか?

"コミュニティ"の捉え方

"コミュニティ"の捉え方を考えるにあたり、山内(2017)で語られている組織の捉え方が非常に参考になります。

本書では、「何をデザインすれば組織をデザインすることになるのか」という問いに対し、「何か単一の存在をもって、組織の実態を規定するのは難しい」「行為の過程に宿るものではないか」と述べられています。

これをもう少し噛み砕くと、「組織」というものは、それだけで実態を捉えることはできず、その集団のなかである集団の構成員の「ふるまい」を捉えてこそ、「組織」の輪郭が定まるという考え方です。つまり、ある集団を組織として捉えるというよりも、認識の問題として捉える見方です。

コミュニティも、これと同様に認識の問題として捉えることができると思います。ある集団をコミュニティと規定するのではなく、その集団で起こる「行為の過程」をコミュニティ的に捉えることに意味がある、とする見方です。

しかし、組織と同じように動的なもので、コミュニティも組織も「行為の過程に宿るもの」としたとき、コミュニティと組織の違いは一体どこに生まれるのか、という問いが発生します。

"コミュニティ"と"組織"の違い

結局のところ、コミュニティと組織の違いは、パースペクティブ(ものの見方)による違いだと考えています。

とある集団をみた時に、「組織」的な見方でみることもできれば、「コミュニティ」的な見方をすることもできます。

コミュニティ論的な捉え方、組織論的な捉え方とは、例えば以下のような捉え方です。

コミュニティ論的な捉え方
・社会学に基づく捉え方
・集団を脱中心化して捉え、固定的な構造や明示的なルールに縛られない
・所属メンバーそれぞれが異なる目的を持つという前提に立つ
組織論的な捉え方
・経営学に基づく捉え方
・集団に中心を起点として、構造やルールを持った視点で捉える
・所属するメンバーが共通の大きな目標を有しているという前提に立つ

逆にいうと、この集団が「コミュニティであるか、組織であるか」という視点はあまり本質的ではないと考えています。

実務的な側面で考えても、組織論とコミュニティ論が融解してきていることから、「コミュニティであるか、組織であるか」を考えることは難しくなってきています。たとえば、以下の書籍では、実践共同体(コミュニティ・オブ・プラクティス)という概念を企業組織のなかに持ち込む有用性について示されています。

あるいは、経営学者として有名なバーナードも、『経営者の役割』という本の中で、組織を「公式組織」と「非公式組織」とに分けて考え、公式組織は非公式組織から発生し、非公式組織にとって必要なものである/公式組織が作用し始めると、公式組織は非公式組織を創造し、必要とする、と位置付けています(「公式組織」=ここでいう"組織"。共通目的、意思疎通、貢献意欲という3要素を有する/「非公式組織」≒"コミュニティ"。意思疎通と貢献意欲を要素に持つ)

このように、コミュニティ論と組織論はあくまで認識論であって、ある集団の構成員の「ふるまい」をコミュニティ論的に捉えるのか、組織論的に捉えるのかによって、見えてくるもの、解釈の仕方、デザイン提案が変わってきます。

どちらの捉え方が正しい、正しくない、というものではなく、パースペクティブの違いとして捉えることが建設的なのではないか、という結論に行き着きました。

引き続き、個人としても、会社(ミミクリデザイン)としても、コミュニティ論や組織論に関するレビューを続けているので、この考え方もアップデートされたら更新していきたいと思います。

また、コミュニティや組織に関するナレッジについて、WORKSHOP DESIGN ACADEMIAの動画コンテンツなどでシェアしていますので、興味のある方はぜひWDAのコンテンツを覗いてみてください〜!

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109_学習する組織(後編)

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株式会社ミミクリデザイン(Director/Researcher)|東京大学大学院 情報学環 特任研究員| CULTIBASE副編集長|最近の興味関心はコミュニティと組織。組織開発の研究にも取り組んでいます✏️

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