(仮)会を求めて9

 「ありがとうございました!」

 拝礼を終え、全員で挨拶をする。今日は会員数名に高校生が15人の大所帯で学生時代の部活終わりのようだ。

 「さて、終バスまでに時間がありません。分担してささっと片づけて帰りましょう」

 浅生先生の号令に合わせ高校生たちはそそくさと安土へと向かい、私たち会員も射場をモップ掛けしていく。一日何十本、何百本と矢が刺さり練習終わり、安土は穴だらけになる。埋めるだけだと的を付けた時に位置が変わったり、あとあと土砂崩れを起こしたりと結構デリケートである。その部分だけ表面を掘り再び盛り直す重労働のため、高校生たちも男女関係なくみんなで作業している。

「夏休みになったらみんなで安土崩しするってよ」
「そりゃ泥んこですね・・・。次の日筋肉痛で布団から出られんので勘弁してほしいです・・・」
道場によるそうだが、愛宕が丘弓道場では年に1回、夏休みの時期に若手会員と利用している高校生総出で安土全体を崩し人力で盛り直す「安土崩し」をやっている。体力仕事故に想像するだけで疲れる。

「え?あれ楽しいやん?」
「・・・。」
去年は和香先輩が陣頭指揮を執り体力オバケっぷりを発揮していた。安土崩し翌朝、布団で悶える中ラジオから和香先輩の声がした時には驚愕を通り越し呆れてしまった。今年のリーダーはまだ指名されていないが、私はホースで水をかける係に徹していたいものだ。

 一通りの片付けが終わり、帰りの足がバスのみの高校生と会員数名から優先で着替えを始めた。感染症の落ち着きを鑑み人数制限はなくなったが、やはり混み合うので私たちはしばし更衣室前で待ちぼうけとなった。

「なんか女の子多いよね?」
「あれでしょう。冬アニメで弓道アニメの新シリーズやってて。それ見て入部する子が多いらしいですよ、全国的に。」
「あ~、イケメン男子がたくさん出てくるやつ?あれなかなか良かったよねぇ。うちの番組で紹介したわ。」
弓道は学生武道の中で最も競技人口が多いのはよく知られているが、女性の割合も比較的高い。浅生先生のように長年携わり、高段位に就く方も少なくない一方、大学弓道まではやらず高校の3年間で辞めてしまう生徒が多いのも実情だ。

「今のうちに勧誘しとかな。めんどくさいこといっぱいあるけど楽しいぜっちね。」
和香先輩に微笑みを返し、私は更衣室の取っ手に手をかけた。

 


面白いアニメ聖地があれば教えてください。読者様がお望みでしたら、どこでも駆けつけ取材したいと思います。