(仮)会を求めて4

  弓を立て、準備運動していると玄関からよく通る挨拶が聞こえた。

 「こんにちは!湯川でーす!おー、美織ちゃん久しぶりやねえ!」

 「和香先輩、こんちは!」

 湯川和香さん。私が愛宕が丘高校弓道部に入った時彼女は女子副将を務める3年生だった。県大会まで進んだものの5月には引退してしまったし、私たちはご多分に漏れず基礎連ばかりの春だったし当時は接点がなかった。

 「あれ?長野さん?2年上の湯川!覚えてない?」

 社会人になってこの道場に所属したとき、彼女が声をかけてくれた時には驚いた。和香先輩の仕事は地元FMのパーソナリティ。朝の家事の最中に流れてくる彼女の声を聴き、

 「湯川先輩、北九州おるんかー。そういえば中学放送部やったし、インターハイじゃアナウンス担当やってたもんな。」

と懐かしがったものだ。弓道は続けていると聞いてはいたが、いまだにやっているとは思わなかった。「苗字呼びは学生時代みたいで嫌だから」という彼女の意向もあり、今は和香先輩と呼ばせてもらっている。礼儀に厳しかった愛高時代の名残でいまだ先ほどのように挨拶してしまう。

 「先輩」と呼んではいるが彼女は当時から身長150㎝。私が見下ろす形になり童顔も相まって傍目には私の方が年上に見える。しかし見た目のゆるふわな雰囲気とは違いラジオから聞こえる声は芯のある強い声だし、弓も学生時代から15キロを余裕で引いて見せ、今でも矢勢は男性会員に引けを取らない。

 「どっから帰ってきたん?」

 「今日は熊本ですね。先輩も放送遅くまでお疲れ様です。」

 「そうっちゃー。たまに早よ終われた時は道場来て引きよるんよ。」

 先輩も一通り挨拶を終えると更衣室へ消えた。

 


面白いアニメ聖地があれば教えてください。読者様がお望みでしたら、どこでも駆けつけ取材したいと思います。