(仮)会を求めて7
「よーし!!」
更衣室で出くわした女子生徒たちが声援を飛ばす。マスク越しではあるが声出し応援も解禁となり学生弓道の活気も戻ってきている。
生徒たちの練習風景を横目に、私たちは浅生先生を囲んでいた。
「的枠に射さるとは不運でしたね、湯川さん。矢尻は無事でしたか?」
「はい!はずれずに済みました。美織ちゃんと二人がかりで抜きましたけど…」
礼射で的枠に突き立ってしまった和香先輩の矢は、先輩1人では抜けず、私が的枠を持ち、先輩が矢を引っ張る形でゆっくりと抜いて何とか回収した。これも力任せにすると矢尻だけはずれて的枠に残り、大摘出手術になることもしばしばだ。
「2人とも高校生の手本としては100点満点でした。どうもありがとう。長野さん、2本目は貴方らしい鋭い離れが出ていましたねぇ。良かったですよ。」
「ありがとうございます!」
先生は本当に穏やかな方だ。そしてすぐに褒めてくださる。これは愛高で外部コーチをされていた頃と全く変わらない。
指導する時、叱る時は淡々と、普段は気さくに良いところを手放しで褒める。
先生の指導スタイルにすっかり引き込まれ、大学卒業後帰郷してからは先生を頼って愛宕ヶ丘弓道会に入会した。
「そういえば昨日はね、水町君が練習に来ていましたよ。」
「あらら、美織ちゃん。水町、来とったって〜。すれ違っちゃたね!」
「ちょ、先輩やめてくださいよっ!」
水町裕紀先輩は私の一つ上、和香先輩の一つ下の愛宕が丘高校弓道部OBだ。高校時代、指導係だったこともあり面倒見が良く、接点も多かった。
「長野の射は人を魅了するものがある。」
幹部の引き継ぎで急にそんなことを言い出すので、ついときめいてしまった。大学は福岡に行かれたので別々だったが、弓道会で再会し絶賛私の片思い中なのである。
「あらあら何か素敵なことが起こりそうですねぇ、長野さん?」
「先生まで…」
赤くなる私に先生が微笑みかけた。
面白いアニメ聖地があれば教えてください。読者様がお望みでしたら、どこでも駆けつけ取材したいと思います。