(仮)会を求めて8

 「水町も練習に来てんなら私らも強度を上げていかんとねぇ」

 和香先輩が携帯の的中記録アプリに射込んだ20射の結果を入力しながら言った。覗き見すると何度も丸が3つ並んだり4つ並んだりしている。さすがは先輩。私も今日は射を見てもらいながら矢数をかけたので、久しぶりに的中率6割に届いた。

 「今回のメンバー決まってましたっけ?」
 「んっ」
 先輩が指さす。次の東部大会の要綱にメンバー表が重ね張りしてある。

 愛宕が丘A
 大前:水町裕紀 参段
  中:井堀義人 五段
 大落:浅生涼子 教士七段

 愛宕ヶ丘B
 大前:湯川和香 四段
  中:北方夏希 弐段
 大落:長野美織 参段 

 「愛高OB会じゃないですか?!いいんですかあれで?」
 「大丈夫よ。佐賀の試合とか審査とか結構予定が重なっててこっちに行く人少なかったっち。」

 浅生先生は男子校だった愛高が共学になった初代女子主将だったそうだし、その前を引く井堀さんも浅生先生の2個下の後輩である。その二人を引っ張るのが水町先輩なのだから先生の信頼の厚さも相当なものだ。

 「夏希のデビュー戦とはいえ、私が大落なんですね・・・」
 「さすがになっちゃんいきなり大落は無理よ~。背中押しちゃってよ。」

 北方夏希は私の一つ下の後輩だ。弓道は高校まででやめていたが、大学を卒業して市役所で働き始める時に浅生先生に挨拶に来ていた。その後しばらくして稽古に行くと道着姿の夏希を見かけたので驚いた。
 「浅生先生から『またやってみませんか?』って誘われたんです。水町先輩も美織先輩もおるし頑張れそうと思って!」
 屈託のない笑顔を向けた彼女は高校時代の戦績こそ県大会出場止まりだが、誰よりも矢数をかけていたことを知っている。そんな後輩がまた頼りにしてくれるというのだから先輩としてこれ程嬉しいことはない。
 稽古を再開して3か月経過し、今度の東部弓道大会が夏希にとっての一般弓道大会デビュー戦となる。

 「しっかり支えるんで頑張りまひょう!」
 「美織ちゃん、声裏返っとる(笑)」
 
 気合が空回りした私の返事に和香先輩が笑った。

 

面白いアニメ聖地があれば教えてください。読者様がお望みでしたら、どこでも駆けつけ取材したいと思います。