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みんな気がついて!少子化対策の罠Vol3

前回では、家族関係社会支出を示しましたが、今回は教育費に関して。
少子化の大きな原因は、「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」なので、教育費の負担を下げることは重要です。

日本は資源が乏しい国だから、国として教育に力を入れている


と信じ込んでいる人も多いですが、実は日本は税金を使って教育に力を入れている国ではありません。むしろ、税金は他の先進国に比べても非常に少なくて、「公財政教育支出対GDP」は常にビリ争いをしています。
2017年の結果でも35ヵ国中34位。
すごく税金を使っていません。


文教・科学技術 財務省 2021年4月https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia20210421/02.pdf

こちらは、2021年4月に財務省が作った資料です。

公財政教育支出の規模は、子供の数を考慮する必要
○ 日本の公財政教育支出の対GDP比は、OECD諸国の中で低いとの指摘がある。
○ しかしながら、日本の子供の割合もOECD諸国の中で低い。


この資料では、確かに日本の公財政教育支出GDP比は日本は低い(上のグラフ)。
でも、人口全体に占める在学者数の割合も少ない(下のグラフ)から、適正で増やす必要はない、と言っているように読み取れます。

これは、一見正しいようですが、本当にそれでいいのでしょうか?
子どもが少ないからこそ、教育に力を入れていて、予算をしっかりとっている国は少なくありません。
赤い矢印は、私が加筆したものですが、
例えば、カナダは子どもの人口割合(下のグラフ)は、下から4番目だけど、教育費支出(上のグラフ)はフランスについで12番目と大幅にジャンプアップ。スイスも同様。
エストニアもイタリアも教育費支出の順位は上がっています。
子どもが少ないからこそ、教育を充実させています。

少子化が進む他の国では、少ないから量ではなく質をあげる作戦
日本は量も少なくて質も上げない、という戦略で、
普通に考えると、国力はひたすら弱まるのではないかと推測されます。


もう一つ、私が、「教育予算を増やしたくないんだろうな」、と推察したのはこのグラフ。

文教・科学技術 財務省 2021年4月https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia20210421/02.pdf


「一人当たり」の教育支出はOECD諸国と遜色ない水準
○ 教育は子供一人ひとりに対するものであるという観点から、一人当たりで見れば、OECD諸国と比べて、私費負担を含めた教育支出全体は高い水準にある。このうち公財政教育支出に限っても遜色ない水準。

文教・科学技術 財務省 2021年4月

「公財政教育支出に限っても遜色ない水準」と言い切ってますが、
よく見ると
日本の●2.1 って、OECD平均より下回っていて、確かに2.1の国は8カ国(35ヵ国中)ありますが、
2.2以上の国は16ヵ国あり、
逆に2.0以下の国は11ヵ国しかない。

ちなみに、日本より下の国は、
チリ、オーストラリア、オランダ、イスラエル、コロンビア、チェコ、ルクセンブルグ、トルコ、リトアニア、メキシコ、アイルランド

これで、「公財政教育支出も他の先進国に比べて遜色ない」って言い切っていいのでしょうか?
同じグラフで
「公財政教育支出も他の先進国に比べて少なめである」
とも十分読み取れるのではないでしょうか。
いや、むしろ、このグラフの読み取りが入試で出た時に、「遜色ない」って解答は、正解になるのか?
と思ってしまいます。

また、日本では、小中学校の公教育や幼児教育無償化は進んでいるが、高校卒業後の高等教育に関しては、いまだに私費負担が多く、優秀な子どもでも高等教育にアクセスできない環境を生み出しています。

「政府が学生のためのローンを保障するのは大変お金のかかることにみえるかもしれないが、実際は政府にとって、とても良い投資になる。高いスキルを持った人間が大学から生まれてくれば、税金を払う人になるし、社会に対して貢献をする人になる。教育への投資は良い投資だと考えている」と言葉を結んだ。

教育新聞 2022年10月4日 高等教育の私費負担67% OECD局長、奨学金制度の見直し促すhttps://www.kyobun.co.jp/news/20221004_06/

24年度から給付型奨学金の対象を中間所得層にも広げ、多子世帯や理工系・農学系の学部で学ぶ学生の負担軽減を図るなど、政府の取組も進んできました。
大いに期待したいところです。