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4月6日:コロナ日報 海外在住者としてのつぶやき

海外に暮らすことを選んだ日本人に対する反感というものはいつもある程度はあるものだけれど、こういう有事のときには、海外在住日本人からの発信や意見も活発になるからか、最近、タイムラインに「海外在住者に言われたくない」というようなポストをちょいちょい見かける。

気持ちはわからないでもない。

しかし、3月の頭に日本より感染者の少なくなったニューヨークが気がつけばホットスポットになって、経済活動をストップせざるをえなくなった、そしてその流れが世界中で広がっている、それより前に学校閉鎖に踏み切っていた日本は、時間を稼いだ割には、そのままダラダラと積極的な封じ込め政策を持たないまま、ここへきて急激な感染者の増加を見せている。同じウィルスを扱っているのだから、同じ展開になることはわかりそうなものだが、「もともと清潔だから」、「スキンシップが少ないから」といったまことしやかな説明がまかりとおり、実際、私も、「そんなわけないだろ」と思いながら「そうであってくれたら飛び上がって喜びたい」という淡い期待を抱いていた。海外に暮らす私たちが、過剰な反応をしていた、ということになったらどんなにいいだろうかと。

「日本は他の国のように強権的にはできない」という意見も散見した。確かにニューヨークでも、当初、やんわりとした自粛のような期間があった。それがうまくいかなかったから、ルールはどんどん厳しくなった。とはいえ、ひとりの住民としての気分としては、相手がウィルスなだけに、こちらの人権とかそういったものが通用するわけはなく、社会的に「今、自分の人生を追求することは無責任」と決まったのだからしょうがない、という気分である。

トランプ政権を見ていると、まったく安心して良い気持ちにはならないが、最前線で戦う科学者たち説明を聞くと少しは安心する。日々のブリーフィングを通じて知るのは、今のところ、身震いするような恐ろしい数の死や、医療関係者の命を危険に晒す医療機器の不足や過酷な職環境など、暗い話ばかりだけれど、とりあえず、日々、詳細な情報が流れてくる。

議会は、大企業を優遇する巨額予算を含む景気刺激法案で、アメリカの納税者(シングルの場合はひとり1200ドル、収入上限あり)に小切手を送ることをあっさり決めた。アメリカ人だけではなく、納税者全員に。もちろんセックスワーカーを除外するとか、そんなことは誰も言い出さなかった。なかなか素早いスピード感だと感心もするが、ちゃっかり火事場泥棒、というような部分もあるので、手放しで褒めるわけにもいかない。

日本の政府の中枢は、情報を共有するということにまったく価値を置いていないみたいだ。国民の不安を理解しようとしているようにも見えない。援助や補償はできるだけしたくない。経済を守るというていで、守っているのは経済界である。

海外に暮らす日本人にあれこれ言われたくないという人がいるのはわかる。日本政府はよくやっている、は理解できない。

3月頭にニューヨークに戻ってきて、あっという間に世界が変わった。その間、ずっと、日本がこうなりませんようにと祈るように願ってきた。日本政府が、積極的な封じ込め対策を取ってくれますように、とも。やっぱりどちらもかなわなかった。残念ながら。

新型コロナウィルスが終息しても、その先には、もとの世界は待っていない。そのかわり、恐慌と形の変わった経済に調整するフェイズが待っているだろう。公的資金をどれだけ注入したところで、今、日本の政府が守ろうと必至になっている大企業たちは、世界の恐慌に直面することになる。だったら、今守るのは、明日の不安を感じている市民たちじゃないんだろうか。


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